【ソニー系AI】回復期リハビリのFIM全項目と入院期間を予後予測、一般向け提供開始|PT-OT-ST.NET

ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社は7月31日、リハビリテーション病棟向けに患者の予後予測を行うAIソリューション「Prediction One for Rehabilitation」の一般提供を開始した。今回、システム強化も実施され、予測可能なFIM(Functional Independence Measure)は全18項目まで拡張され、ワンクリックで予測実行が可能となった。これまで主に歩行・トイレ・運動項目に特化していたが、アップデートにより患者の全体像の把握と包括的な予測が可能となった。さらに、一般スタッフでも使いやすい専用UIや、専任のデータサイエンティストによる支援体制も整備されており、リハビリテーション現場での実装性と応用性が高まった。

FIM全18項目のスコアを個別に予測可能に

今回のアップデートでは、FIMの全18項目に加え、「運動FIM合計」および「入院期間予測」を含む合計20項目の予測モデルが提供される。従来は退院時に「歩行FIMが6以上になるか」など限定的なアウトカム予測にとどまっていたが、最新版では食事、整容、更衣、排泄、移乗、階段昇降などの運動項目から、理解、表出、交流、記憶といった認知項目まで、すべて1~7点の値で個別に予測できる。これにより、患者一人ひとりの特性に応じた支援計画の立案が可能となり、回復目標の可視化とチーム内共有にも活用できる仕様となっている。この予測モデルの精度は、十勝リハビリテーションセンターとの共同研究によってエビデンスが構築されている。2023年以降、同センターではPrediction Oneを活用し、実データ3,800件以上を用いて歩行・トイレ・運動FIMのAI予測モデルを開発。歩行・トイレFIMの予測においてAUC92%超という高精度を実現した。この成果をベースに、今回の全20項目対応モデルへとスケールアップが実施された。

現場の使い易さに配慮したWebベースUI

予後予測AIの活用を広げる上で課題となるのが「操作の難しさ」だが、今回新たに提供される専用Web UI(Prediction One for Rehabilitation)では、以下のような特長が挙げられている。● 複数患者のデータをCSVで一括投入可能● ブラウザ上で予測結果を即時表示● 専門知識なしでも1クリックでAI予測を実行● インターネット接続不要、PC内完結でセキュアリハビリスタッフが日常的な業務の延長で自然に使えるよう設計が配慮されている。

【サンプル動画】

データサイエンティストの伴走支援

予測モデルの導入にあたり、ソニーネットワークコミュニケーションズのデータサイエンティストが直接支援に入ることも、今回の提供形態の大きな特徴となっている。Prediction Oneの操作支援に加え、院内データを活用したオリジナルモデルの構築や、精度改善に向けた評価・改善について、同社の専任チームから伴走支援が受けられる。これにより、AI開発の経験がない医療機関でも安心して活用を始められるほか、自施設に最適化された予測モデルの内製化も実現可能となる。

病院独自のAIモデル構築へ

今回アップデートされた予測モデルの拡充にとどまらず、今後は上肢麻痺回復(FMA予測)や自動車運転可否、退院後の転帰予測など、リハビリテーション領域におけるさらなるAI活用がテーマが見込まれている。本ソリューションは単なるツールを超えて、「予後予測を日常業務に自然に組み込む」ことを可能にするインフラとしての役割を果たす可能性がある。同社の開発担当者は「AIを使うことで現場のセラピストの皆さんの能力が上がっていく。そのような世界観を目指しています」と述べている。リハビリテーションの質と効率の両立を目指す現場にとって、患者のアウトカム向上と業務負担軽減の両方を実現する大きな支援ツールとして、今後の開発動向も注目される。

引用・参考■ リハビリ業界向けAIソリューションを提供開始  データに基づき最適な計画と効率運用、リハビリ業界に新たなスタンダードを提案(ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社)■ ソニー系AIとリハ部門システムが連携、データ加工不要でAI導入を効率化(PT-OT-ST.NET)■ 回復期リハビリ病棟でAI予後予測、ソニーと十勝リハセンターが共同開発(PT-OT-ST.NET)

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