5速MTあり! 三菱「"3列・7人乗り"ミニバン」がスゴい! 230馬力の快速ターボ×"高性能4WD"の「ファミリーカー」!? デカいサンルーフも異色すぎた「シャリオ リゾートランナーGT」とは
三菱がかつて販売していた3列シートミニバン「シャリオ リゾートランナーGT」。一見すると普通のファミリーカーですが、そのボンネットの下には、世界ラリー選手権王者の心臓が隠されていました。はたして、どのようなクルマだったのでしょうか。
名機「4G63」ターボ搭載の爆速ミニバン!?
三菱のミニバンにはかつて、ファミリーカーとしては異色のハイパワーエンジンを搭載した異色のスポーツ仕様がラインナップされていました。
いったいどのようなクルマなのでしょうか。
1990年代初頭の日本は、空前の「RVブーム」の真っ只中にありました。
そうした中、1991年に登場した2代目「シャリオ」は、広大な室内空間と高い実用性でファミリー層に支持される、ごく一般的なミニバンとして販売されていました。
注目すべきは、2代目シャリオの登場に先立つ3か月前、そのシャシをショートホイールベース化し、2列シートのハイトワゴンに仕立てた姉妹車「RVR」が登場していた点です。
RVRはスタイリッシュな成り立ちが好評を博し、ときに本家シャリオの存在感を凌ぐほどの人気を集めました。
当時の三菱は、世界ラリー選手権(WRC)で「ランサーエボリューション」を擁し、走りへの情熱を強く打ち出していました。その情熱は意外な形で、ファミリーミニバンであるシャリオに注がれることになります。
1995年5月、三菱は「シャリオ リゾートランナーGT」を発表。ミニバンの常識を覆す、「やり過ぎ」ともいえる一台でした。
心臓部には、ランサーエボリューション譲りの2リッター「4G63型」DOHC16バルブインタークーラーターボエンジンを搭載。トランスミッションは5速MTと4速ATから選択可能で、5速MT仕様は最高出力230PS、4速AT仕様は220PSを発揮しました。
エクステリアは、専用の前後バンパーやルーフレール、15インチアルミホイールが与えられ、独特の存在感を放っています。
インテリアには、サイドサポートが張り出した専用スポーツシートを装備。メーターパネルはホワイトメーター仕様で、中央には9000rpmまで刻まれた大型タコメーターが配置され、スポーツカーの血統を強調していました。
それでいて、シートはフルフラット化が可能であり、ミニバンとしての実用性も損なわれていませんでした。3枚のガラスパネルを組み合わせた大型サンルーフ「クリスタルライトルーフ」も用意され、圧倒的な開放感を演出しています。
シャリオ リゾートランナーGTは、まさに「ミニバンの皮を被ったランエボ」でした。
見た目は普通のミニバンながら、アクセルを踏めばスポーツカーを置き去りにする強烈な魅力を放っていたのです。
この過激なモデルが誕生した背景には、1994年末に登場したホンダ「オデッセイ」の存在があります。
強力なライバルに対し、三菱はWRCで培ったパワートレイン技術を投入し「走り」という新たな価値軸で勝負を挑みました。
1996年にはGTの5人乗り仕様「GT-V」も追加され、幅広いユーザー層への訴求が図られましたが、販売は伸び悩み、翌1997年に生産を終了。販売期間はわずか約2年と短命に終わりました。
新車価格は1996年時点で、GTの5速MT仕様が258万8000円、4速AT仕様が269万8000円、5人乗りのGT-V(5速MT)は238万1000円に設定されていました。
その過激さゆえに販売は限定的となり、後継の「シャリオグランディス」にはこのパフォーマンス路線は継承されませんでした。
現在、中古車市場での流通台数はごくわずか。見つけるのが困難なレベルで、まさに「幻のモデル」と化しています。
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シャリオ リゾートランナーGTは、1990年代の三菱自動車の「三菱らしさ」を色濃く体現した一台と言えます。市場論理やマーケティングではなく、技術者の情熱とこだわりが製品開発を牽引していた時代の象徴でした。
効率や合理性が重視される現代の自動車開発では考えられない大胆さと遊び心、純粋なエンジニアリングへの情熱が詰まったこのクルマは、今なお多くのクルマ好きの心を魅了し続けています。
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