ロシア政府、燃える製油所より自軍の戦果を報道するようメディアに要請

ロシア人コミュニティはウクライナ軍の自爆型無人機が急増すると「燃える製油所の報道を禁止して問題ないと装うな」と、ロシア人ミルブロガーも「政府の虚偽報告はガソリンがないという現実の前では通用しない」と指摘したが、ロシア大統領府は真逆の方針を主要メディアに通達した。

参考:Кремль потребовал от СМИ не публиковать последствия атак ВСУ и «больше показывать успехи» российских ударов по Украине

ウクライナでは軍事機密に触れない範囲で戦争報道の自由が保障されているため、政権や軍にとって耳が痛い事実の暴露や批判が比較的盛んだが、ロシアメディアは法律によってメディアの監視・規制・検閲を担当するロスコムナゾールへの登録が義務付けられており、政権や特別軍事作戦に批判的なメディアは「望ましくないメディア=事実上の非合法化に指定して排除する仕組み」を採用しているため政府の強い統制下にある。

ウクライナ軍の自爆型無人機による攻撃は2025年7月頃から明確に急増し、RIAノーボスチのアレクサンドル・ハルチェンコ特派員は2025年8月「ウクライナ軍の無人機が我々の製油所を攻撃している」「私はこの状況を説明するのに適切な言葉を見つけられずにいる」「一番の驚きは類似した攻撃が何十回も発生しているのに職務怠慢で逮捕・投獄された者がいないことだ」「我々はウクライナ軍の無人機に対抗する手段を全て持っているのに具体的な行動を取っていない」と指摘。

これに対してロシア人ミルブロガーが運営するRYBARは「無人機攻撃への対抗策をあれこれ持ち出して官僚主義を非難するのは愚かだが対抗策が講じられていないのも事実だ」「国内には老朽化を理由に運用されていないMi-24とMi-8が多数存在する」「これに赤外線装置を搭載すれば無人機の迎撃能力が向上するかもしれない」「レーダーなしに遠く離れたドローンを捕捉するのは困難でも製油所に対するポイントディフェンスには役に立つ」「これは手間のかかる面倒なアプローチかもしれない」「それでも燃料価格の高騰や燃料不足による経済へのダメージを考えれば製油所を操業停止させるより安上がりだ」と回答。

さらにあるロシア人(Старше Эдды)がRYBARの回答を引用して「長距離兵器分野において我々より何十倍も劣る敵に破壊される石油、ガス、その他インフラの映像を海外メディアが流すという屈辱を避けたいなら行動を起こせ」と訴えて注目を集めた。

“1918年末の最高傑作と比べて僅かに劣る程度のウクライナ製無人機と戦う方法は2つしかない。1つ目は現状維持、つまり燃える製油所の報道を禁止し「全て上手く行っている」と装うことだ。そうすれば法を遵守する市民は安心して眠り、製油所から立ち上る火柱を祝日の花火と思い込むだろう。なぜなら緊急事態を知らせるロシアのメッセンジャーには都合の悪い情報が一切表示されないからだ。善良な市民が問題に気づくのは実家へパンケーキを食べに行く際、ガソリンスタンドで車に給油できなくなった時だけだ”

“2つ目は前者よりも遥かに困難で費用がかかり、頭脳と意思の力、そして創造的なアプローチを必要としている。無人機の発見、追跡、破壊に従事できる者に防衛権限の一部を移譲し、必要な装備を購入するための資金を与えることだ。何度も指摘されているように問題は迎撃手段ではなく状況に対する怠慢、問題に対処しようとする積極性の欠如、もし責任の範囲で何かが起こったらという恐怖や能力不足にある”

出典:Минобороны России

“我々には持っている手段を工夫することで無人機攻撃の被害を食い止めることが可能だが、そのためには何千人もの人々を動員したり、多額の資金を投資し、多くの苦労を乗り越える必要があるだろう。さらに誰かが権限の一部を手放す必要もある。それでも見返りは苦労した分の100倍になる。製油所の価値は組織全体よりも遥かに大きく、長距離兵器分野において我々より何十倍も劣る敵に破壊される石油、ガス、その他インフラの映像を海外メディアが流すという屈辱を避けられるのだから”

結果論から言えば、ロシアはウクライナの長距離攻撃に効果的な対策を講じられず、製油所への攻撃によって国内のガソリン不足はますます状況が悪くなっており、ロシア人ミルブロガーのTwo Majorsは7月5日「現在の状況をもたらした原因には『講じられた対策の不十分さ』『軍部隊や部隊編成からモスクワへの体裁の良い報告書』『2022年と同じ敵の過小評価』が挙げられる。どれだけ『被害はなく全ては順調だという政府の虚偽報告』や『現実から目を背けさせるような愛国ニュース』をいくら流してみても、ガソリンスタンドに燃料がないという厳しい現実の前では何も通用しない」という辛辣な批判をテレグラムに投稿した。

独立系のロシアメディア=Вёрсткаは6日「親政府系メディアの情報筋は『大統領府がロシア領土に対するウクライナ軍の攻撃や被害状況を捉えた画像や動画を公開しないよう影響下の主要メディアに要求した』と明かした。そして大統領府はメディア側にロシア軍の攻撃や戦果をより多く報じるよう強く推奨し、この報道方針の変更に関する指示は6月後半に通達された。つまり、大統領府はロシア国内への攻撃や被害を映した動画や写真の公開をやめるよう、そしてロシア軍が攻撃成果をもっと多く報道するよう要求してきたのだ」と報告。

“我々の調査によれば大統領府や国防省と協力関係にある大規模なテレグラムチャンネル(Mash、Baza、Shotなど)は、直近に発生したウクライナ軍の大規模な攻撃について一切言及しないか、ごく短い投稿を行うに留めている。具体的にはスラビャンスク・ナ・クバニの製油所、ペンザの防衛関連工場、そして7月2日未明に発生したニジニ・ノヴゴロド州クストヴォのルクオイル製油所への攻撃などがこれに該当する。その一方で、ウクライナへの攻撃に関する投稿には被害状況を伝える動画や写真が添付されている”

“さらに複数の大規模なテレグラムチャンネルがモスクワへの攻撃や被害状況の動画や画像を削除した。例えば登録者数380万人のMoskvach、登録者数400万人以上のTopor Live、登録者数140万人のRhymes and Punchesなどのチャンネル、そしてより小規模な複数のチャンネルから、こうしたコンテンツを含む投稿が一斉に姿を消している”

ウクライナでもロシア軍のミサイルや自爆型無人機が「どこに着弾したのか」「どのような被害が生じたのか」「攻撃が着弾した現場の映像や写真」を公開することを禁止しているものの、そこに触れない範囲でロシア軍の攻撃を報道するのはメディアの裁量に任されており、ロシアのように「国内への攻撃や被害を映した動画や写真の公開をやめて自軍の攻撃成果をもっと多く報道しろ」とは要求してない。

出典:Президента России

ロシアが「政権や軍への批判につながる情報を隠して戦場での成功で情報空間を埋め尽くしたい」と考えるのは十分理解できるものの、この体質がウクライナの長距離攻撃に効果的な対策を講じられずにいる温床になっているのも事実で、ロシア人にとってどちらが幸せなのかは謎だが、ウクライナにとっては「被害はなく全ては順調だ」と装い続けて長距離攻撃への対策が遅れてくれる方がありがたいだろう。

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※アイキャッチ画像の出典:Міністерство оборони України

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