老化は巻き戻せる?科学が挑む「不老時代」の現実味 [韓国記者コラム]
【05月04日 KOREA WAVE】老化は誰にでも訪れる「避けられない時間の流れ」とされてきた。しかし、科学はその流れを巻き戻す可能性を問う段階に突入した。世界各地の研究所では、細胞そのものを若返らせる実験が進められており、「老化逆転」という新たな概念が現実味を帯び始めている。 かつて健康食品や美容治療のマーケティング用語に過ぎなかった「老化防止」は、いまや科学的成果として具現化しつつある。 ◇ノーベル賞が火付け役、世界各地で進む老化逆転研究 米ハーバード大学医学部の研究チームは2023年、化学物質のみで生物学的年齢を巻き戻すことに成功した。遺伝子を操作せずに細胞を若返らせたという成果は、世界中の研究者たちに衝撃を与えた。この研究成果は国際学術誌「Aging」に掲載され、老化細胞が機能を回復する様子が実証された。 米テキサス州のMDアンダーソンがんセンターでも、テロメラーゼ酵素を制御し、老化による細胞損傷や炎症反応を抑制する成果が報告された。テロメラーゼは染色体末端のテロメアを維持する酵素で、細胞寿命の延長に関与する。この研究は、高齢者に多い疾患への応用が期待されている。 また、米コールド・スプリング・ハーバー研究所は、免疫機能を担うT細胞の若返りに焦点を当てた。後成的情報を調整することで老化T細胞を再プログラムし、免疫系の逆転につながる可能性を示した。 こうした流れの火付け役とされるのが、京都大学の山中伸弥教授だ。2012年、体細胞に4つの遺伝子(山中因子=Oct4, Sox2, Klf4, c-Myc)を導入し、初期化できることを発見し、ノーベル生理学・医学賞を受賞した。現在ではこれが老化逆転技術の基盤となっている。 アマゾン創業者ジェフ・ベゾスが投資する米アルトス・ラボ(Altos Labs)や、グーグルが設立したカリコ(Calico)なども、山中因子を活用した「老化逆転」技術の商業化を進めている。 ◇韓国国内でも活発な研究…肝臓・造血幹細胞・脳機能まで 韓国でも老化逆転の研究が本格化している。韓国科学技術院(KAIST)のキム・チャンヒョク教授は、ゲノム編集のCRISPRを活用し、肝臓細胞の老化を逆転させることに成功した。脂肪肝の改善と細胞老化の緩和を確認した。 また、成均館大学のキム・ドンイク教授は、造血幹細胞を回復させ、全身の老化を遅らせる国家戦略プロジェクト(200億ウォン規模)を主導し、2028年の臨床試験を目指している。 さらに蔚山科学技術院(UNIST)では、視覚や平衡感覚の機能を鍛えることで脳機能の老化を逆転させる研究が進められている。アルゴリズムを活用した訓練ツールにより、視覚認知や神経機能の改善を目指している。 韓国内のバイオ企業も幹細胞技術を活用し、組織再生や老化抑制のソリューション開発に取り組んでいる。 ◇老化は病気か?社会と科学の認識変化 このような進展を背景に、老化を「避けられない生理現象」ではなく、「治療可能な生物学的プロセス」や「病気」と捉える動きも広がっている。米FDAや欧州医薬品庁(EMA)では、老化を臨床試験対象に含めるかの議論が始まった。 しかし「老化は本当に逆転できるのか?」「その技術は誰に、どのように適用されるべきか?」といった倫理や公平性、安全性への疑問も拡大している。 もはや老化逆転はSFの世界ではない。科学者、政府、投資家たちはこの問いに取り組み続けている。未来の「不老時代」への挑戦が、今まさに進行している。【news1 チャン・ドミン記者】 (c)KOREA WAVE/AFPBB News
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