NY市場サマリー(20日)ナスダック・S&P続落、ドル下落、利回り低下

<為替> ニューヨーク外為市場では、ドルが下落。トランプ米大統領がクック連邦準備理事会(FRB)理事に辞任を要求したことが重しとなった。ただ、午後に入り発表された7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨で「ほぼ全て」の当局者が利下げを支持していなかったことが明らかとなり、ドルは下げ幅を縮小した。

トランプ大統領は20日、クックFRB理事の住宅ローン契約を巡る不正疑惑が指摘されたことを理由に、「今すぐ辞任すべきだ!!!」と、自身の交流サイト(SNS)「トゥルース・ソーシャル」に投稿。トランプ氏がFRBに対する圧力を強化しつつある兆候が示唆された。

バノックバーン・グローバル・フォレックスのチーフ市場ストラテジスト、マーク・チャンドラー氏はドルの動きについて、「市場は大統領によるFRBへの介入は好ましくないという意思表示をした」と述べた。

FRBが公表した7月29─30日のFOMC議事要旨からは、「ほぼ全員」の参加者が金利据え置きを「適切」と判断し、利下げを支持していたのは、据え置きに反対票を投じたウォラー理事とボウマン副議長(金融監督担当)の2人のみだったことが分かった。

終盤の取引で、主要通貨に対するドル指数は0.13%安の98.20。

NY外為市場:

<債券> 米金融・債券市場では、低調な取引の中、国債利回りが小幅低下した。投資家らは、金融政策の手掛かりとして連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が今週行う講演の発言内容に注視している。

年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」は、21─23日に米ワイオミング州ジャクソンホールで開催される。パウエル議長は22日に登壇の予定。

また、この日は7月29─30日の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨が公表され、「ほぼ全て」の参加者が金利据え置きを「適切」と判断していたことが分かった。議事要旨の公表を受け、利回りは低下幅を縮小した。

ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ・ソリューションズのグローバル市場戦略責任者、マブルック・シェトゥアン氏は、トランプ政権の関税措置がインフレに与える不確実な影響を考慮すると、パウエル議長は慎重な姿勢を維持すべきだが、トランプ大統領からの利下げ圧力に屈する可能性があると指摘。「われわれは数カ月前から、景気の鈍化に対抗するため、FRBは年末までに計75bpの利下げを行う必要があるとみてきた」と述べた。

CMEのフェドウオッチによると、フェデラルファンド(FF)金利先物市場が織り込む9月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げ確率は83%。1週間前は94%だった。

米金融・債券市場:

<株式> 米国株式市場はナスダック総合(.IXIC), opens new tabとS&P総合500種(.SPX), opens new tabが続落して取引を終えた。米ワイオミング州で今週開かれる年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」での当局者発言が待たれる中、ハイテク株を売って比較的割安なセクターに資金をシフトする動きが見られた。
ハイテク株は4月の株価急落からの回復をけん引してきた。この日はS&P500情報技術指数(.SPLRCT), opens new tabが0.8%安。一方、S&P500の主要11業種のうちエネルギーやヘルスケア、主要消費財など7業種は上昇した。

オールスプリングのシニアポートフォリオマネジャー、ブライアント・バン・クロンカイト氏は「より広い視点で見れば、これは真の売りというよりむしろローテーションだ」と指摘。ハイテク株が割高に見える一方、これまであまり目を向けられず、バリュエーションの観点から非常に魅力的な銘柄が多数あると述べた。

アナリストらはハイテク株への売りの要因として、オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が先週、人工知能(AI)関連株は「バブル状態にある」と述べたことや、多くのハイテク企業がAIを実際の利益につなげるのに苦戦していることを示すマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究にも言及した。

政府による民間部門への介入を懸念する声も一部で聞かれた。トランプ政権はインテル(INTC.O), opens new tabなど半導体企業の株式取得を検討している。
インテル、エヌビディア(NVDA.O), opens new tab、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)(AMD.O), opens new tab、マイクロン(MU.O), opens new tabがいずれも下落。AI需要に関する手掛かりを得る上で、エヌビディアが27日に発表する決算に注目が集まる。
アップルやメタ(META.O), opens new tabなど他の大型グロース(成長)株も下落した。

米国株式市場:

<金先物> ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金塊先物相場は、安値拾いの買いや米長期金利の低下を背景に、5営業日ぶりに反発した。

金相場は前日まで4営業日続落。この日はその反動から安値拾いの買いが優勢となった。米長期金利の指標である10年債利回りが低下したことも、利回りを生まない資産である金の相場の支援要因となったほか、外国為替市場でドルがユーロに対し軟化したこともドル建てで取引される商品の割安感につながった。

一方、市場参加者らは、今後の米金融政策の手掛かりとして、米カンザスシティー連邦 準備銀行が21─23日に主催する年次経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」待ちとなっている。22日に予定されているパウエル連邦準備理事会(FRB)議長の講演内容にも注目が集まっており、様子見姿勢も強かった。

NY貴金属:

<米原油先物> ニューヨーク商業取引所(NYMEX)の原油先物相場は、ウクライナ和平交渉の行方に注目が集まる中、米原油在庫の大幅な取り崩しを受け、 反発した。

米エネルギー情報局(EIA)が午前発表した週報によると、15日までの週に原油在庫は前週比600万バレル減、ガソリン在庫は270万バレル減とそれぞれ市場予想を大きく上回る取り崩しとなった。市場では輸出の回復や製油所需要の強さが要因と指摘する意見もある。これを受けて、原油が買われ、相場は一時63.50ドル近辺まで上昇する場面もあった。

トランプ米大統領は18日、ウクライナのゼレンスキー大統領や欧州首脳とホワイトハウスで会談し、ロシアによるウクライナ侵攻に関し議論した。トランプ氏は将来ウクライナ再侵攻を防ぐ「安全の保証」に米国も関与する方針を確認。ウクライナの「安全の保証」を巡っては、戦闘終結後に欧州の有志国がウクライナに部隊を派遣する案などが浮上。ト ランプ氏は米軍地上部隊の派遣を否定する一方、防空支援の可能性に言及している。ホワイトハウスでの会談では、停戦を飛び越え包括的和平を目指すべきと唱えるトランプ氏と、 停戦を重視する欧州との違いも露呈し、対ロ交渉の行方を巡る不透明感は依然根強い。

NYMEXエネルギー:

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