【米国市況】株引け際に買い手現る、FOMC議事要旨でドル下げ渋り

20日の米株式相場は下げ渋る展開。このところハイテク株への売りが続いていたが、22日のパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長講演を控え、ウォール街の熱狂があらためて示された。

株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 6395.78 -15.59 -0.24% ダウ工業株30種平均 44938.31 16.04 0.04% ナスダック総合指数 21172.86 -142.09 -0.67%

  ハイテク株の売り継続で時価総額にして数十億ドルが消失した後、ウォール街のトレーディングでは引け間際に買い手が姿を現した。大型ハイテク株が再び売られたほか、インフレ懸念を重視するFRBの姿勢があらためて示され、相場を圧迫した。

  S&P500種株価指数ではエネルギーやディフェンシブ銘柄など、主要グループの大半が上昇。大型ハイテク株はすべて下落したが、下げ幅を縮小した。ハイテク株の比重が高いナスダック100指数は0.6%下落。一時は2%近く下げていた。

  JPモルガン・チェースのアンドルー・タイラー氏はリポートで「21日の製造業購買担当者指数(PMI)データと22日のパウエル議長講演を控え、押し目で買いたい投資家が試される日だ。市場の方向性やテーマが変わる要因になりかねない」と述べた。

  FRBは7月の連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨を公表した。

  トレードステーションのデービッド・ラッセル氏は議事要旨について、前回会合後にパウエル議長が発したタカ派的なコメントと整合すると指摘。「強気派はジャクソンホールで冷や水を浴びせられるかもしれない」と述べた。

  ネーションワイドのマーク・ハケット氏は「今月は上昇を率いてきたグループが目に見えて下げ、大型グロース株が小型株やバリュー株より著しく出遅れている」と指摘。「それでもボラティリティーとクレジットスプレッドは引き続き落ち着いており、投資家の不安感がそれほどでもないことを示唆している」と述べた。

  個別企業のニュースでは、マイクロソフトが自社技術におけるサイバーセキュリティー上の脆弱(ぜいじゃく)性に関する情報を専門家に事前に提供する早期警告プログラムについて、中国企業のアクセスを制限した。

  ディスカウントチェーンのターゲットは現在最高執行責任者(COO)を務めるベテラン幹部のマイケル・フィデルケ氏を、次期最高経営責任者(CEO)に指名した。

  ホームセンター運営のロウズはファウンデーション・ビルディング・マテリアルズを現金88億ドル(約1兆3000億円)で買収することで合意したと発表した。プロ顧客向けのサービス拡大を加速させる狙いだ。

動画:ブルームバーグテレビジョンで話すBNYウェルスのアリシア・レビーン氏

米国債

  米国債相場は2日続伸。ただFOMC議事要旨を受けて、2年債利回りはこの日の低水準からの戻しが続いた。議事要旨によれば、FOMCでは米経済におけるインフレ圧力に対する懸念が広く認識されていた。

国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.90% -1.2 -0.25% 米10年債利回り 4.29% -1.5 -0.36% 米2年債利回り 3.75% 0.0 -0.01%     米東部時間 16時56分

  7月29-30日開催のFOMC議事要旨によると、雇用を巡る懸念よりもインフレリスクの方が大きいと大半の当局者が指摘した。また幾人かはインフレ期待が制御できなくなる可能性に懸念を示した。同会合では金利の据え置きを決定。理事2人が利下げを主張し反対票を投じた。

  同会合の数日後に発表された7月の雇用統計では、過去3カ月の雇用者数の伸びが2020年以来の鈍いペースだったことが示された。

  この日は20年債入札が堅調な結果となり、長期債の需要が裏付けられた。

  新発20年債の入札では、最高落札利回りが4.876%と、応札締め切り直前の水準を小幅に下回った。落札に占める直接応札の比率は26.5%と、20年債入札が2020年に再開されて以降の最高を記録した。

  TDセキュリティーズの米金利戦略責任者、ジェナディ・ゴールドバーグ氏は「全体的に強い結果となり、利回りに魅力があれば投資家は購入をちゅうちょしないことが示唆された」と述べた。

  朝方にトランプ大統領がクックFRB理事の辞任を呼び掛けた後、ドルは小幅に下げたが米国債相場は堅調を維持した。

外為

  ブルームバーグ・ドル指数はFOMC議事要旨を受けて下げ渋る展開となった。議事要旨ではインフレ高進リスクへの懸念が強調された。

為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1206.74 -0.26 -0.02% ドル/円 ¥147.32 -¥0.35 -0.24% ユーロ/ドル $1.1652 $0.0005 0.04%     米東部時間 16時56分

  FOMC議事要旨によれば、7月会合では雇用よりインフレのリスクの方が大きいと過半数が認識していた。

  ドルはニューヨーク時間午前に、トランプ米大統領がFRBへの圧力を強めたことを受けて下落。円は対ドルで2日続伸し、一時は0.5%高の146円87銭を付けた。

  トランプ米大統領は住宅ローンに関連した不正疑惑を理由に、クックFRB理事に辞任を要求した。

  主要10通貨の中ではニュージーランド・ドルが4月以来の安値。ニュージーランド準備銀行(中央銀行)は政策金利を引き下げ、追加利下げの可能性を示唆した。

原油

  ニューヨーク原油先物相場は上昇。米エネルギー情報局(EIA)の週間統計で、原油在庫が600万バレル減少したことが追い風となった。

  市場はウクライナ停戦の行方も引き続き注視している。

  CIBCプライベート・ウェルスのシニア・エネルギー・トレーダーのレベッカ・バビン氏は米在庫の減少について「総じてやや強気な材料だが、筋金入りの弱気派の見方を変えるほどではない」と述べた。

  全体の原油在庫は減少したものの、ウェスト・テキサス・インターミディエート(WTI)原油先物の受け渡し拠点であるオクラホマ州クッシングの在庫は7週連続で増加し、2350万バレルに達した。減少を見込んでいた米国石油協会(API)の予想に反する結果となった。

  ニューヨーク商業取引所(NYMEX)で、この日期限を迎えるWTI先物9月限は、前日比86セント(1.4%)高の1バレル=63.21ドル。中心限月の10月限は1.5%高の62.71ドルで終えた。ロンドンICEの北海ブレント10月限は1.6%上げて66.84ドルで終了。  

  金相場は反発。パウエルFRB議長の講演を22日に控え、9月利下げの可能性が意識された。利息のつかない金投資にとって、金利低下は追い風となる。

  またトランプ大統領が住宅ローンを巡る不正疑惑を理由に、クックFRB理事に辞任を求めたことも材料視された。トランプ氏の発言を受けて、ドルが売られる一方、金価格は上昇した。

  スポット価格はニューヨーク時間午後2時33分現在、前日比29.40ドル高の1オンス=3345.19ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物12月限は、29.80ドル(0.9%)高の3388.50ドルで終えた。

原題:Stock Buyers Step In to Fuel Bounce From Lows: Markets Wrap(抜粋)

原題:Treasury 2-Year Yields Pare Drop After FOMC Minutes Hawkish Tone(抜粋)

原題:Treasuries Extend Gains After 20-Year Bond Auction Draws Demand(抜粋)

原題:Dollar Pares Day’s Losses After Fed Minutes: Inside G-10(抜粋)

原題:Oil Rises Amid Large Inventory Drawdown, Russia-Ukraine Talks(抜粋)

原題:Gold Edges Up as Traders Await Powell Speech for Fed Rate Clues(抜粋)

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