さまよえる「幽霊船」、沈没から139年後に発見 米ミシガン湖
米ミシガン湖の底に沈んだF.J.キング号の舵輪/Tamara Thomsen/Wisconsin Historical Society
(CNN) 約140年前に米国のミシガン湖で沈没し、過去50年間にわたり度重なる捜索を逃れていた「幽霊船」がこのほど発見された。ウィスコンシン水中考古学協会の研究者らが明らかにした。
この木造スクーナー船は1886年9月、真夜中に嵐に巻き込まれ沈没した。数週間後、灯台守から船のマストが湖面に突き出ているという報告があり、漁師たちの網にも船の残骸がかかった。しかし、難破船のハンターたちが船の位置を特定することはできず、これまでその所在は謎に包まれていた。
今年初め、ウィスコンシン水中考古学協会とウィスコンシン歴史協会の研究チームが、ウィスコンシン州沿岸の町ベイリーズハーバー沖でこの難破船を発見した。水中考古学協会が14日に発表した。F.J.キング号と名付けられたこの船は、行方知れずのままだったことからウィスコンシン州の沈没船ハンターの間では伝説となっていた。今回の捜索の主任調査員兼プロジェクトリーダーを務める海洋史家、ブレンドン・ベイロッド氏はそう語り、発見への驚きをCNNに明かした。
ベイロッド氏によると、この沈没船は近年五大湖で発見された数多くの沈没船の一つに過ぎず、ミシガン湖だけでもまだ数百隻が未回収のまま残っているという。
1867年に建造されたF.J.キング号は五大湖を航行し、湖をまたぐ交易に従事していた。ウィスコンシン州が米国の穀倉地帯の役割を果たしていた時代には、穀物を輸送。加えて全長44メートルの同船は、鉄鉱石や木材などの貨物も運んでいた。
発表によると、この船は19年間にわたり高収益の航海を続けたものの上記の9月の夜、強風により船体を破損した。ウィリアム・グリフィン船長は乗組員に対し、船に搭載された小型ボートで避難するよう指示。乗組員たちはそのボートからF.J.キング号が船首から沈没していくのを見届けた。
長年にわたり、多くの沈没船ハンターが船長の報告に基づいて船の位置を突き止めようと試みたが、不成功に終わった。五大湖周辺の地域では幽霊船の噂(うわさ)が広まり、地元の伝説となった。今回の発表によると約20年前には、グリーンベイのダイビングクラブがこの船の発見に対して1000ドル(現在のレートで約14万7000円)の報奨金を出していたという。
同じ頃、ベイロッド氏もこの謎を知り、船の沈没に関する当時の記録を調べ始めた。すると、船の行方を追うために必要な、これまで見つかっていなかった証拠を発見した。それは船の沈没から1週間後の地元紙の記事に掲載された、地元の灯台守ウィリアム・サンダーソンの証言だった。記事の中でサンダーソンは、船の位置について報告していた。付近を航行する他の船の船員が、突き出たマストを避けて航行できるようにするのが目的だった。
ウィスコンシン水中考古学協会の現会長でもあるベイロッド氏は、地図上に位置を記し、その地点の周囲に5.2平方キロメートルの碁盤の目を描いた。民間の科学者20人を含む同氏のチームは6月28日、ソナー技術を駆使してサンダーソンが示した位置から0.8メートル以内の地点で沈没船を発見した。
チームはこの伝説の沈没船をすぐに発見できるとは思っていなかった。しかしその水域を2度目に通過したところ、「驚くほど無傷」の状態の船体画像が画面に映し出された。チームはすぐに当該の船の残骸だと認識し、歓声を上げた。その後、2台の遠隔操作探査機を水深約36.5~50メートルの地点に送り込み、それがF.J.キング号であることを確認した。
五大湖の難破船に関する書籍の執筆やドキュメンタリー制作を行っている難破船研究者のリック・ミクスター氏は、これほど良好な状態の難破船の発見は「感動的だ」と述べた。同氏はこの発見には関わっていない。
ミクスター氏によると、沈没前の船に乗っていた船長よりも、灯台守の方が船の位置をよく知っていたのは驚くべきことではない。激しい嵐に直面した船員は、全員を船から脱出させて生き延びることに集中する場合が多いからだという。