「学歴詐称なんてどうでもいい」「これまでの金に汚い政治家よりマシ」前代未聞の市政ストップ、それでも“田久保派の市民”が市長を応援する理由(集英社オンライン)
「前代未聞と言えば前代未聞。早くなんとかしないと…」 9月1日の市議会開会を目前にした8月25日、議案をメディアに説明した伊東市の木村光男総務部長は、市政が「混迷を極めている」と頭を抱えた。 「市当局は今回補正予算を上程できないんです。定額減税の補足給付金3000万円などの支出を決めなければならないのに、12月議会まで待たないと補正予算案を可決できない可能性があります」 地元紙記者がこう話す異常事態の原因は田久保市長の去就を巡る混乱だ。 市長は7月7日の会見で、学歴詐称疑惑の重要証拠である“卒業証書”を静岡地検に提出すると表明し、市長を辞職して出直し市長選に再出馬すると約束した。 「このため市当局は次の市長の方針を反映させるため補正予算の編成を止めました。ところが田久保市長は卒業証書とされるものを地検に提出をせず、月末までに辞職すると言っていたのに、7月31日になって“辞めるのをやめた”と言い出したんです」(地元紙記者) これに反発した市職員側は、すべての部長が田久保市長に辞職を要求。市議会の調査特別委員会(百条委)と田久保市長の間では卒業証書とされるものの提出を巡るせめぎ合いが続き、伊東市では8月に入っても予算編成ができる状況になかった。 「5月の市長選で敗れた前市長が任命した副市長と教育長は市長選直後に辞職し、9月議会でも後任者が決められません。教育長がいないため教科書選定ができないなどしわ寄せは子どもたちにも及びかねません」と市民の男性は憂慮する。 辞職撤回の理由に田久保市長は、市内のメガソーラー建設計画の阻止と、前市長が進めた新図書館建設計画撤回という選挙公約を実現する「使命」があるからだと強調。8月16日に自身のXで、 〈今回の騒動の全容がやっと見えてきました。事実関係に基づいてその目的を明らかにしてきます。〉 とポストすると、その後はメガソーラー建設計画が再開される可能性があると主張する内容の投稿を続けている。 「計画は伊豆高原の一角である市南部の八幡野地区の山林43ヘクタールを伐採し、12万枚の太陽光パネルを設置するもので2013年に持ち上がり、土砂災害のリスクが高まり観光や漁業に影響するとして反対運動が起こりました。 計画自体は市議会が建設反対を決議して規制条例も制定し、前市長時代の2019年には市が事業者の河川占有を不許可にしたことで建設予定地に続く橋を重機が通れなくなったことから事業は止まっています。 この反対運動で田久保さんは中心メンバーとして存在感を強め、市議に2回当選した後、今回市長になったんです」(市内建設業者) この経緯から田久保氏は伊豆高原を地盤にしてきた。 「伊豆高原は富裕層のリタイア組が多く暮らし、そうした人たちが自然破壊を嫌ってメガソーラーに反対したんです。もともと別荘地のため住民票を置く人が少なかったので、2期務めた前市長は票田にならないとみて力を入れなかった地域ですが、別荘を引退後の定住の場にする“住民”が増え、この人たちが市政が停滞していると感じ、田久保さんを押し上げ、さらに変革を求めた市街地の世論も加わって市長の交代劇が起きたんです」(地元住民)