“インアウト”交代直後に取った山見の行動…指揮官、選手の気持ちを慮る東京Vキャプテン森田「選手も理解している」
“インアウト”交代したFW山見大登
[4.20 J1第11節 川崎F 0-0 東京V U等々力]
悔しさを噛みしめながら、ピッチを後にした。東京ヴェルディFW山見大登は後半開始から投入された後、後半37分に途中交代。城福浩監督は試合後の会見で「途中から出た選手には、ああいう展開だからこそショートカウンターをするための守備をしてほしかった」と語気を強めていた。
東京Vは前半から主導権こそ握っていたものの、フィニッシュまで持ち込めず。前半シュート1本でスコアレスのまま後半に折り返した。均衡を破るべく、城福監督は交代カードを2枚使い、そのうち1人が山見だった。 「攻撃でポジティブな部分があることは承知している。だからこそ信じて最初のカードで投入した」。そう語る城福監督だが、後半12分過ぎには山見に喝。中継映像にも拾われるほどの剣幕を見せた。会見でも「技術のミス、判断のミスはある。ただ、姿勢に関して僕は絶対に譲らない」と説明。ボールを失った直後の守備意識を指摘していた。選手にとっては屈辱の“インアウト”交代だ。それでもキャプテンのMF森田晃樹は城福監督、山見それぞれの心境に理解を示す。
「山見もやっていないわけではないと思うけど、監督の中には基準がある。それを誰とか関係なく全員がやるべきことだと監督は思っている。そこに達しなかったらああいう交代があるということはずっとそうなので。そこは山見だけじゃなくて、他の選手もしっかりやるべきこと」 屈指の攻撃力でチームを何度も救った山見にも、指揮官は特別扱いはしない。森田は選手たちがそれを理解し、高い意識で戦っていることを強調した。 「監督は常に選手に基準を求めている。言葉だけじゃなくて、本当に交代させるという態度を見せてきている。そこはもう選手も理解しているし、それがあるからこそ全員がやらなきゃいけないと思っている」 山見は昨シーズンも“インアウト”交代させられていた。それでも指揮官はこれまでたびたび会見で山見の能力を評価。期待しているからこそ、山見に求めるものは大きい。森田は「山見選手もまた不貞腐れずにやってくれると思う。全然大丈夫」と力を込めた。 交代指示が出た後、山見はバックスタンド側からピッチを出た。東京Vのゴール裏を周ってベンチへ。チームメイトやスタッフのねぎらいを受けて悔しさをにじませながらも、そのまま座ることなく、城福監督のもとに向かった。ただ、指揮官はテクニカルエリアぎりぎりで試合に夢中で気づかず。山見は10秒ほど待ちぼうけを食らいながら、ようやく気づいた指揮官とタッチをかわした。 「選手側がどれだけ悔しい交代だったとしても、監督は常に交代したらタッチをしに来てほしいと言っている。ある程度コミュニケーションというか、悪い関係にならないように、そういう工夫というか、気に掛けているんです。そういうのはすばらしいと思う」(森田) あくまで監督側が求めていることであり、試合を途中離脱させられた選手側は自らの信条や感情でそのルールを破ることだってある。それでも山見は悔しさを噛みしめながら、一歩踏み出して指揮官に歩み寄った。指揮官の考えを理解していることを垣間見せていた。森田は山見の胸中を慮りながら「個人でどう思うかだと思うけど、彼もわかっていると思う。次の試合からやってくれると思うので、そこは全然気にしていないです」と見守っていた。 (取材・文 石川祐介)★日程や順位表、得点ランキングをチェック!!●2025シーズンJリーグ特集