同盟国を「侮辱」したトランプ発言、「アフガンで前線にいなかった」…NATO各国から批判殺到(ニューズウィーク日本版)
[ロンドン発]貿易と武力を背景に言いたい放題やりたい放題のドナルド・トランプ米大統領が北大西洋条約機構(NATO)の同盟国について「彼らを必要としたことなど一度もない。アフガニスタンでも彼らは少し後方、少し前線から離れた場所に留まっていた」と侮辱した。 【画像】日本は意外にも...「世界で嫌われている国」ランキング、2位はアメリカ 2001年の米中枢同時テロで米国と同盟国は対テロ戦争としてアフガンで「不朽の自由作戦」を展開。米国2461人、英国457人、カナダ159人、フランス90人、ドイツ62人、イタリア53人、ポーランド44人、デンマーク43人、オーストラリア41人など3621人の犠牲を出した。 最激戦地ヘルマンド州での10週間を含めアフガンに2度従軍したヘンリー公爵=英王位継承順位5位=はNATO軍の犠牲について「真実かつ敬意を持って語られるべきだ。私はそこで従軍し、生涯の友をつくった。そして、そこで友を失いました」と訴えた。 ■2001年、NATOは歴史上初めて5条を発動した ヘンリー公爵は「2001年、NATOは歴史上初めて、そして唯一、5条(集団防衛)を発動した。すべての同盟国が共通の安全保障のためアフガンにおいて米国と共に立ち上がる義務を負うことを意味した。同盟国はその呼びかけに応えた」と同盟国と従軍兵士たちの胸中を代弁した。 「何千人もの人生が永遠に変わってしまった。母親や父親は息子や娘を弔った。子どもたちは親を失ったまま残された。家族はその代償を背負わされている。これらの犠牲は真実と敬意をもって語られるべきだ。皆、外交と平和を守るために団結し、忠誠を尽くし続けているからだ」 ヘルマンド州はテロ首謀者の国際テロ組織アルカイダを匿っていたイスラム原理主義武装勢力タリバンの強力な支持基盤だった。アフガンのアヘン生産の半分以上を占め、タリバンの資金源となっていた。このため英軍とタリバンの間で戦闘が激化した。 ■英首相「私が言ったとしたら間違いなく謝罪する」 ヘンリー公爵は07〜08年、前線航空管制官として地上部隊の最前線で攻撃機を誘導する危険な任務に就いた。12〜13年にも攻撃ヘリコプターの副操縦士兼射撃手として従軍。地上で包囲された味方を援護するためにタリバンと直接交戦する任務をこなした。 英軍の戦死者457人のうち90~92%がヘルマンド州で亡くなった。ヘンリー公爵が「そこで友を失った」と語るのは過酷な歩兵戦に身を置いていた事実に基づく。中でもヘルマンド州サンギンは英軍にとって「地獄」と呼ばれた。100人以上の英兵がサンギン周辺で命を落とした。 英兵や家族の怒りは収まらない。キア・スターマー英首相は「トランプ氏の発言は侮辱的で言語道断。アフガンで命を落とした英兵457人の勇気、勇敢さ、彼らが国のために払った犠牲を私は決して忘れない。もし私があのような言葉を口にしたなら間違いなく謝罪する」と述べた。 ■元米国防長官「同盟国を持たぬ国は衰退する」 親しみを込めてトランプ氏を「ダディ(父親)」と呼び、物議を醸したマルク・ルッテNATO事務総長は「アフガンで死という犠牲を払った米国人2人に対し、他の同盟国も家族のもとへ帰れなかった兵士が1人いる。米国が攻撃を受けたら同盟国は米国と共にいる」と強調した。 かつてジャーナリストとしてアフガンで取材したポーランドのラドスワフ・シコルスキ外相は「わが国の兵士の軍務を嘲笑う権利など誰にもない。同盟国とともに海外任務で払ったポーランド兵の犠牲は忘れられることはなく、過小評価されることも許されない」と静かに憤った。 第1次トランプ政権で国防長官を務めたジェームズ・マティス氏は「同盟国を持つ国は繁栄し、持たぬ国は衰退する。だが同盟とは単に署名された文書ではない。それは共に分かち合った犠牲(血)によって鍛え上げられた絆なのだ」と述懐している。 米国の時代は終わりを告げようとしている。それを私たちは目撃しているのかもしれない。