GDP1─3月期は4四半期ぶりマイナス、年率0.7%減:識者はこうみる

 5月16日、内閣府が発表した2025年1─3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)が前期から0.2%減り、4四半期ぶりのマイナスとなった。長引く物価高による節約志向が強く、個人消費が振るわなかった。東京都内で2023年9月撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

[東京 16日 ロイター] - 内閣府が16日発表した2025年1─3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質(季節調整値)が前期から0.2%減り、4四半期ぶりのマイナスとなった。長引く物価高による節約志向が強く、個人消費が振るわなかった。年率換算では0.7%減だった。

市場関係者に見方を聞いた。

◎2四半期連続減も、利上げ支援材料乏しい

<SBI新生銀行 シニアエコノミスト 森翔太郎氏>

個人消費がゼロ成長となり、その弱さが気がかりだ。消費者マインドも悪く、個人消費が本格的に回復していく姿は見通しにくい。日銀の5月1日の展望リポートでは米国の関税による外需の落ち込みが懸念されていたが、内需もそれほど強くない。賃上げの強さが消費に結びついていない状況が長く続いている。

早いペースでの利上げが想定しにくいことが改めて示された。4―6月期は関税の影響が出てくるだろう。財輸出の落ち込みで2四半期連続のマイナス成長もありうる。実体経済の面から利上げをサポートする材料はなかなか出てきにくい。

◎輸出減が主因、テクニカルリセッション入りも

<伊藤忠総研 チーフエコノミスト 武田淳氏>

数字があらわすほど実体経済は悪いわけではないが、1─3月期のマイナス成長はサービス輸出の落ち込みが主要因。個人消費は横ばいだし、設備投資も思いのほかよかった。なのでGDPマイナス成長は想定の範囲内。

問題は今四半期以降、景気回復がどうなるか。2四半期連続マイナス成長という定義のテクニカルリセッションは排除できないかもしれないが、日本の場合それが即景気後退という判断にはならならない。

4─6月期は、個人消費は賃上げに下支えされる他、原油下落、円安の一服等、家計にポジティブな要因も増えている。輸出は、サービスに加え、自動車等の財輸出に下押し圧力がかかるだろう。設備投資もこの先トランプ関税次第になるだろう。

既に与党では追加の経済対策を検討しており、今回のGDPの結果は参院選に向けて、景気対策を推し進める石破政権の背中を押す効果がある。金融政策については、トランプ関税の影響で、緩和的な環境が維持される時間帯は若干長くなるかもしれない。それでも、日銀は遅くとも年内にはさらなる利上げを模索すると思われる。

◎けん引役の不在続く、利上げはトランプ関税次第

<農林中金総合研究所 理事研究員 南武志氏>

今回の結果は想定の範囲内だ。輸入が前期に減ったことの反動で増加し、外需のマイナス寄与度を高める一方、個人消費は物価高の影響でフラット。設備投資はトランプ関税前の駆け込みもあり、プラスを維持した。全体として景気は、4─6月期はマイナス成長は脱するかもしれないが、けん引役不在が続くだろう。

トランプ関税による日本経済の不確実性は大きく、設備投資、輸出、個人消費にも下押し圧力が継続するだろう。参院選を控え、政府・与党も無策では済まされず、さらなる財政出動の要請が出るだろう。

金融政策については、追加利上げの是非はトランプ関税のさらなる影響次第。もっとも、日銀は物価を重視しており、トランプ関税の影響が軽微と判断すれば、9月か10月にも利上げに踏み切る可能性は排除できない。米関税政策が日本の設備投資や輸出に甚大な影響を及ぼすと判断すれば、利上げも棚上げということにならざるを得ない。

◎2期連続マイナス成長のリスク、次回利上げは最速1月

<クレディ・アグリコル証券 チーフ・エコノミスト 会田卓司氏>

昨年3月のマイナス金利政策解除、3月の利上げ、そして今年1月の追加利上げにつながった日銀の金融政策は失敗であった。利上げが足かせとなって株式市場は停滞を続け、先行きの住宅ローン金利上昇の懸念も大きくなり、消費活動が鈍り、2024年の実質消費は減少してしまった。先行きの金利上昇を懸念しているのは中小企業も同じだ。中小企業の賃上げ率や設備投資の伸び率には減速感が出てきている。

結果として、2024年の実質成長率はプラス0.2%とほぼゼロ成長となり、2025年1-3月期も前期比マイナス成長となってしまった。利上げが内需の回復を抑制してしまったことで、1-3月期の実質民間内需はコロナ前の2019年平均とまだほぼ同水準で弱いままだ。内需の拡大によって、トランプ関税による外需の停滞の下押しを軽減する余地がなくなってしまった。4-6月期の実質GDPが2四半期連続のマイナス成長となり、テクニカル・リセッションとみなされるリスクもある。

日銀が次の利上げを模索するのは最速来年の1月だろう。

国民の過半が支持する消費税減税を与党は否定しており7月の参院選は大敗する可能性がある。参院選後に補正予算を編成する流れだろう。

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