ウォール街、S&P500企業利益に対する見方悪化-トランプ関税打撃
米企業収益に対するウォール街の自信が揺らぎつつある。すでに大きな打撃を受けている米株式市場にさらなる波乱をもたらす恐れがある。
企業利益を巡る広範な見通しはなお堅調だが、アナリストは向こう1年の予想を着実に引き下げている。ブルームバーグ・インテリジェンスによると、S&P500種株価指数銘柄の利益見通しでは、過去23週のうち22週で上方修正よりも下方修正の方が多くなっている。
トランプ米大統領の関税政策による景気への影響を巡る懸念で、S&P500種は先月の最高値から約8%下落。業績見通し引き下げは株式投資家にとって歓迎できない事態だ。なお高いバリュエーションを正当化するには、堅調な利益拡大が必要となる。今後数カ月の間に企業が利益予想を達成するのに苦労する恐れがあるとの兆候は、さらに地合いを悪化させる可能性がある。
スチュワード・パートナーズのウェルスマネジメント担当エグゼクティブマネジングディレクター、エリック・ベイリー氏は「利益見通しにひびが入り始めている」と指摘。「今回の株式ドローダウン(直近の最高値からの下落率)はセルサイドのアナリストに、年間利益見通しをここからさらに引き下げる必要があることを示唆している」と話す。
Analysts lower profit forecasts for index in 22 of past 23 weeks
Source: Bloomberg Intelligence
米銀JPモルガン・チェースなどは4月11日に1-3月(第1四半期)業績を発表し、決算シーズンが始まる。しかし、一部の米企業からは懸念されるシグナルがすでに発せられている。
アメリカン航空グループは11日、1-3月の赤字が従来予想のほぼ2倍になるとの見通しを発表。デルタ航空もその前日に利益見通しを半分に引き下げていた。いずれも航空需要の軟化を理由に挙げた。コールズやアバクロンビー・アンド・フィッチ、ウォルマートなどの小売企業も慎重な見方を示している。
ブルームバーグ・インテリジェンスのデータによると、アナリストらはなおS&P500種の利益が2025年に10%増えるとみている。1月前半時点では13%増だった。だが、下方修正余地はまだ残っているかもしれない。BMOウェルス・マネジメントのユンユ・マー最高投資責任者(CIO)は、関税による企業の利益率への制約を踏まえ、アナリストは恐らく25年のS&P500種の年間利益見通しを1桁台後半まで引き下げる必要があるだろうと語る。
Source: Bloomberg Intelligence
利益見通しが悪くなり過ぎると、株価の重しになりかねない。安全資産として人気の高い金が最高値を更新していることは、投資家がすでに一段の株安に備えている証拠とも考えられる。先行きに神経をとがらせる投資家に人気の別の投資先である米国債相場は2月半ば以降上昇基調にある。
GLOBALTインベストメンツのパートナーで、シニアポートフォリオマネジャーのキース・ブキャナン氏は、一部の大型成長株を売却し、現金配分を増やしている。
「用心するに越したことはない」とブキャナン氏は言う。
もちろん、ここ数年の企業業績はインフレ高進や高金利などに直面しても回復力を示してきた。投資家は利益が圧迫される前にトランプ大統領が関税に対する姿勢を和らげる、または撤回することを期待している。
アイオン・マクロ・マネジメントの創業パートナー、マイケル・ショール最高経営責任者(CEO)は企業収益と株式の長期的パフォーマンスについて、楽観的な見方を崩していない。だが、「市場にネガティブな業績サプライズが市場にもたらされれば、事態はここからさらに混乱するだろう」と述べた。
原題:Wall Street’s View on S&P 500 Profits Is Souring as Tariffs Loom(抜粋)