発電ゼロの「原電」支援やめて!東電株主の提案どうなる?(毎日新聞)

 今年の株主総会は「もの言う株主」の発言が注目されている。東京電力ホールディングスの株主総会では例年、大株主の東京都はじめ個人株主が脱原発や再生可能エネルギーの導入拡大を求める提案を行っている。2025年6月26日に開く株主総会で株主は、どんな提案をするのか。【毎日新聞経済プレミア・川口雅浩】  今年の注目ポイントの一つは、「発電ゼロ」でも黒字が続く日本原子力発電への支援を東電が中止するよう求める個人株主196人の提案だ。  東電の株主総会招集通知によると、東電が取締役13人の選任を求める第1号議案だけが会社提案で、続く第2号議案から第8号議案までが個人株主、第9号と第10号議案が東京都の株主提案だ。  このうち株主提案のトップバッターとなる第2号議案が、東電に原電支援の中止を求める個人株主の提案だ。提案は全国の株主196人の連名となっている。  個人株主は「そもそも公的管理の我が社(東電)が他社(原電)を支援する余裕はない。一刻も早く原電への支援を停止し、支援済みと前払い電気代の回収に乗り出すべきだ」と主張している。公的管理とは東電の大株主が政府であることを指す。  東電は原発事故の後、政府が大手電力などと設立した原子力損害賠償・廃炉等支援機構から1兆円の出資を受け、原賠機構が議決権の過半を握る。さらに東電は被災者への賠償などで原賠機構から多額の交付金を受けている。交付金の財源は国債で、東電と大手電力が毎年、国に返済することになっている。個人株主は東電が原電支援より、国への返済を優先すべきだと主張している。  ◇原発2基の再稼働めど立たず  大手電力に電気を販売する原発専業の原電は、保有する原発4基のうち、2基が廃炉作業中だ。再稼働を目指す敦賀原発2号機(福井県)と東海第2原発(茨城県)は11年5月以降、停止したまま、再稼働のめどは立っていない。このうち東電は東海第2原発を支援している。  敦賀原発2号機は原子炉直下に活断層があることが否定できないとして、原子力規制委員会が24年11月、新規制基準に適合しないと判断。東海第2原発は再稼働に必要な安全対策工事を24年9月に終える予定だったが、防潮堤の工事の不備で工事の完了時期を26年12月に延期した。工事の延期は今回で3度目だ。  さらに東海第2原発は水戸地裁が21年3月、周辺自治体の避難計画の不備を理由に運転の差し止めを命じ、東京高裁で審理が続いている。  それでも原電は25年3月期(24年度)決算まで8年連続で最終黒字を計上している。発電がゼロでも、東京、関西、中部、東北、北陸の大手電力5社が基本料金として、原電の人件費や原発の維持管理費用などを払っているからだ。  さらに東電は原電に毎年支払う基本料金とは別に、東海第2原発の安全対策の工事費用として、21~23年度の3年間で約1400億円を「将来の電力料金」として原電に「前払い」している。24年度も約660億円前払いしたと毎日新聞の取材で認めている。これまで毎日新聞経済プレミアでリポートしてきた通りだ。  ◇「資金を回収し福島への賠償に投入を」  株主提案で個人株主は「原電は卸電気事業者でありながら、発電できない設備だけ持つまれな会社だ。保有するのは原子力規制委から再稼働不可と判断された敦賀原発2号機と、避難計画不備で運転差し止めとなった東海第2原発など座礁資産のみだ」と指摘する。  個人株主は「我が社は電気を受け取っていないのに毎年(基本料金として原電に)550億円支払っている。さらに金融支援も行っている。我が社は資金回収に動き、福島への賠償に投入すべきだ」と提案している。金融支援とは21~24年度で約2060億円となる「電力料金の前払い」などを指している。  東電は原発事故の賠償や廃炉に向け、年間約5000億円の資金確保を政府との約束や目標に掲げている。ところが18年度以降、目標を達成したのは23年度(5577億円)だけで、24年度は3896億円と再び目標を下回っている。このため東電は原電への支援よりも原発事故の賠償や廃炉に資金を回すべきだと株主は提案している。  ◇東電の取締役会は「反対」  この株主提案に対して、東電の取締役会は「反対」を表明。「お客様に低廉で二酸化炭素の少ない電気を安定的にお届けするという電気事業者の責務を果たすため、原電の東海第2原発は有望と考えている」と明言。「東海第2原発に対する資金的協力については、引き続き総合的に勘案し、適切に判断していく」と、今後も支援を継続する構えだ。  この東電取締役会の意見について、株主提案の趣旨説明に立つ個人株主は毎日新聞の取材に「東海第2原発は難航する防潮堤などの安全対策費用がインフレで上昇している。仮に発電できたとしても、低廉どころか大幅に割高な電気となるのは明らかだ」と反論している。  今年は東電だけでなく、関西、中部、東北、北陸の大手電力4社の個人株主も同様に原電への支援をやめるよう株主提案をしている。どういう内容か。

毎日新聞
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