進む米国から欧州への資金移動、予測不能な政策で-ブラックロック
- 政府債務増大抑制できなければ、米債の「特別な地位」揺らぐと指摘
世界最大の資産運用会社ブラックロックは、海外投資家は米国から一歩引きつつあり、米国が金融市場において有してきた「特別な地位」が、政府債務の増大が抑制されなければ揺らぐ可能性があるとみている。同社は、米国からの資金移動が進めば、欧州の債券市場に恩恵が及ぶと見ており、予測困難な米国の政策や膨らみ続ける政府債務に対する警戒感を示した。
ブラックロックの債券市場見通しリポートによると、米国の大規模な債券投資家はリスク回避的で、アジアや新興国市場よりも、欧州の安定性に魅力を感じている。同社の欧州債券運用部門共同責任者、ジェームズ・ターナー氏は「米国は政策運営の予測可能性が乏しい一方、欧州は今後の進路が読みやすい。これが欧州と米国の資産配分の見直しにつながっている」と指摘した。
リポートによると、米国政府は週当たり5000億ドル超の国債を発行している。海外投資家が資金を他地域に移している現状では、さらなる借入コストの上昇リスクが現実のものとなっている。一方で、ドイツ政府の国防・インフラ支出計画などにより、欧州諸国の債券発行は増加しており、域内債券市場の流動性も高まる見込みだという。
米国からの資金シフトは、データ上はまだ顕在化していない。海外投資家による米国社債の購入額は4月、過去6カ月で最多となった。高格付けの社債の発行残高は、ユーロ建て債の2倍以上に達しているとして、シティグループのストラテジストは、米国市場の規模の大きさと多様性を指摘している。
それでも、4月以降はドイツ債のパフォーマンスが米国債を上回っている。米国の関税導入をめぐる混乱により、米国債の「安全資産」としての魅力がやや損なわれたためだ。
ブラックロックは、流動性の高いポートフォリオを維持し、市場の変動時に、利回りが魅力的な水準まで拡大した債券に投資することを目指している。ターナー氏は「そのためには機動力を保ち、ポートフォリオを迅速に動かせる体制を整えておくことが重要だ」と述べた。
原題:BlackRock Says Unpredictable US Policy a Boon for Europe Credit(抜粋)