太陽生命、金利上昇続けば円債投資の年限短期化-超長期など2700億円

太陽生命保険は2025年度、超長期債を中心に円債を2700億円積み増す計画に沿って平準的に買い入れていく一方で、需給悪化や財政懸念で金利の上昇が続けば、買い入れる年限を短期化する方針だ。佐藤義剛運用企画部長が22日のインタビューで明らかにした。

  太陽生命は24年度に円債を1100億円積み増し、25年度も外国債券や内外株式を売却した資金を円債に振り向ける。佐藤氏は「4-6月は前倒し気味に買ったので若干減速するかもしれないが、計画は変えていない」と話す。ただ、足元の金利上昇は行き過ぎで、今後も「金利が上昇して買いづらくなれば、長いものから短いものにシフトしたい」と語る。

  規制対応の買いが一巡して積極的な国債購入を控える大手生保とは対照的に、中堅生保である太陽生命は同じT&Dホールディングス傘下の大同生命保険や、富国生命保険などと同様、着実に国債投資を進めている。ただ、負債と資産のキャッシュフローの総合管理(ALM)を求める新規制の下、生保にとって本来歓迎すべき金利上昇が逆に買い意欲を削ぐリスクも意識されている。

  佐藤氏は足元の国債市場について、政治リスクから来る財政悪化懸念に加え、「生保勢がやや買い控え、海外投資家しかいない状況で、需給が予想以上に悪化している」と述べた。金利は「買いやすい水準だが、これら2つの要因がすぐ解消するか分からないので慎重に投資していく」と言う。

  財政拡張リスクが意識される中、19日に行われた20年利付国債入札が弱めの結果となったことをきっかけに超長期金利の上昇が加速している。新発20年債利回りは22日、1999年以来、26年ぶりの高水準を更新し、新発30年債利回りは過去最高を更新した。

減損リスク

  金利上昇により太陽生命が保有する円債の含み損は6月末に3598億円と3月末(3152億円)から増加した。保有債券の時価が取得価格の50%を下回って回復の見込みがない場合、評価差額を有価証券評価損として計上する減損処理が会計基準で定められている。

  佐藤氏は、年限の長い国債は償還まで持ち切ることが前提の「責任準備金対応債券」に区分して「減損非適用」扱いにしており、投資する上で「基本的に制約にはなっていない」と語る。減損のリスクよりも、25年度から適用される新規制の存在が需給悪化要因として大きいという見方を示す。

新規制リスク

  生保各社は経済価値ベースのソルベンシー比率(ESR)を用いた新規制をにらみ、負債と資産のデュレーション(平均残存期間)を一致させるため積極的に超長期債を購入。足元では大手中心に両者がおおむね一致している生保が多い。一方、金利上昇による大量解約リスクが多めに設定されていることもあり、負債側のデュレーションが資産側より大きく縮小したり、ESRを低下させたりする要因になっている。

  佐藤氏は「昨年あたりから(金利が上昇すると買いにくいという)負の回転になっており、それがまた需給を悪化させ金利を上げてしまう状況だ」と語る。生保勢は「本心から言うと皆、市場金利は予定利率を上回っており、他のリスクを取ってまで違うものを買う必要はないはずで、規制を考慮して手控えざるを得ないのではないか」と話した。

  太陽生命の負債側のデュレーションは6月末時点で13年と、資産側の10.8年を上回っている。

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