「ガザ紛争」と「12日戦争」で実質勝利したイスラエルとアメリカが背負う「大きすぎる代償」の正体(ダイヤモンド・オンライン)

 イスラエルはハマスとの「ガザ紛争」と、その後の対イラン「12日戦争」で、大きな勝利を収めたように見える。米国もまた、イスラムの影響力を低下させるという果実を手にするに至った。しかし、軍事的勝利と国際政治における勝利は、必ずしも一致しない。イスラエルと米国が今後支払うだろう戦争のツケとは?※本稿は、元外務省中東アフリカ局参事官の宮家邦彦『中東 大地殻変動の結末 イスラエルとイランをめぐる、米欧中露の本音と思惑』(中央公論新社)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● イスラエルの攻撃の矛先は ハマスを裏で操るイランへ  パレスチナのイスラム組織ハマスが、前例のない規模の奇襲攻撃をイスラエルに対して開始したのが2023年10月。その後、イスラエルとパレスチナの間で戦闘になったのはご存知の通りだが、イスラエルはついに、ハマスを代理勢力として使うイランを直接攻撃する。  ◎2025年6月13日 イスラエルは「イランの脅威を封じるため」として、イランの核関連施設、軍事中枢、革命防衛隊の司令官などを標的とした大規模な先制攻撃を開始。イランでは、標的となった核施設、軍事施設、革命防衛隊司令部などで深刻な損害が発生、軍関係者だけでなく、民間人にも多くの死傷者が出た。ウラン濃縮関連施設ではナタンツの「パイロット燃料濃縮プラント」が破壊されたものの、他の主要地下施設は被害を免れた。同日、イランは、イスラエルに対しミサイルやドローンによる報復攻撃を開始し、イスラエル国内で死傷者が出るとともに、一部の住宅や製油所などにも被害が出た。  ◎6月21日 米国は「イランの核開発を阻止するため」として、イラン国内のフォルドウ、ナタンツ、イスファハンの3つの核関連施設に対し大型地下貫通爆弾による空爆と巡航ミサイルによる攻撃を実施。

 ◎6月22日 イランはイスラエルに向け20発以上の弾道ミサイルを発射、テルアビブや北部地域で負傷者が出た。同時にイランは、カタールにある中東最大の米空軍基地を含む、中東各地の米軍基地に対しミサイル攻撃を実施。しかし、イラン側からの事前警告もあり、攻撃による被害や死傷者は出なかった。  ◎6月25日 イランとイスラエルがそれぞれ勝利宣言の上で、米国が仲裁した停戦に合意した。 ● 大規模先制攻撃で制空権を握った イスラエルの大勝利に思えるが…  さて、この短期間ながら、2025年の大地殻変動を象徴するような「12日戦争」の勝者と敗者は一体誰だったのだろう。  直接かつ最大の敗者がイランであることは間違いない。「12日戦争」が始まった6月13日、イスラエル軍は大規模先制攻撃を仕掛け、精巧かつ周到な航空作戦によりイランのロシア製防空システムを無力化した。その結果、イスラエルは事実上イラン上空の制空権を確立したといわれる。  戦争初期段階で防空網を無力化されたイランはその後のイスラエルによる様々な攻撃を阻止できなかった。軍事的にはイランの完敗と言って良いだろう。  2023年10月7日のハマスによる対イスラエル奇襲作戦で始まった「ガザ紛争」についても同様だ。  2年間の戦闘によるイラン側の損害は甚大である。パレスチナにおける「イランの代理勢力」ハマスとレバノンにおける「代理勢力」ヒズボラの軍事部門の戦闘能力は、イスラエルによる徹底攻撃によってそれぞれ相当程度無力化された。更に、2024年12月には、イランの海外における拠点だったシリアのアサド政権まで崩壊してしまったからだ。  イランは米国の攻撃を「国際法違反の野蛮な行為」と強く非難し、中東の全ての米国人・米軍関係者が「正当な標的」となると警告した。また、報道によれば、イラン国会はホルムズ海峡の封鎖を承認したものの、最終的な決定はイランの最高安全保障委員会に委ねられた。  但し、イランが自国の原油輸出を含む貿易を自ら止めかねない「ホルムズ海峡封鎖」に踏み切る可能性は、自暴自棄にでもならない限り、極めて低いだろう。

ダイヤモンド・オンライン
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