パキスタンがインド機5機を撃墜-報復の応酬へ
インド政府はパキスタン領内の「テロリストの拠点」に対して軍事攻撃を実施したと発表した。これに対し、パキスタン側は報復としてインド機5機を撃墜したことを明らかにした。カシミール地方のインド実効支配地域で先月発生した観光客への無差別銃撃事件を発端に、報復の応酬が展開されている。
7日未明に発表されたインドの声明によると、今回の攻撃は「エスカレーションを避ける性質のもの」で、「正確かつ抑制された対応」だという。両国の政府当局者によると、攻撃は7カ所に及び、1971年の戦争以来、最も深くパキスタン領内に踏み込んだものとなった。
インド側は「既知のテロリストの拠点」のみに標的を絞り、パキスタンの民間・経済・軍事施設には一切被害を与えていないと主張。一方、パキスタン軍の報道官は記者会見で、パキスタン人8人が死亡し、数人が負傷したと発表した。パキスタン外務省は今回の攻撃を「戦争行為」と非難した。
パキスタンのハワジャ国防相は7日、ブルームバーグテレビジョンとのインタビューで、インドの戦闘機5機を撃墜したと述べた。
インド外務省に対し情報提供を求めたが、現時点で返答はない。これに先立ち、インド軍はパキスタン軍がカシミール地方のインド支配地域に向けて砲撃を行ったと発表した。
ハワジャ国防相はブルームバーグテレビジョンで、「敵対的行為ではなく、われわれの領土を防衛しているだけだ」と強調。「われわれは過去2週間にわたり、一貫して『インドに対して敵対的行為を起こすことはない』と主張してきた。しかしインドが攻撃すれば、われわれも対応する。インドが引けば、われわれも間違いなく手を引く」と話した。
今後の焦点は対立がさらに激化するかどうかだ。両国が前回、全面戦争に迫ったのは2019年、自爆攻撃によってインドの治安部隊員40人が死亡した事件の後だった。インドは当時、パキスタンが関与したと非難し、2週間後には1971年以来初となるパキスタン領内への空爆を実施。パキスタンはその報復としてインドの戦闘機1機を撃墜し、パイロットを拘束した。パイロットはその後釈放され、緊張は徐々に沈静化した。
オーストラリア戦略政策研究所の常任上級研究員、ラジェスワリ・ピライ・ラジャゴパラン氏は、今回の動きは過去の事例をなぞるものであり、両国とも対立の激化を望んでいないことを示していると指摘。「状況が制御不能になる可能性もあるが、両国の政治指導部もその点を十分認識している。1998年に共に核保有国となって以降、過去30年間にわたり繰り返された対立を見る限り、両国とも自制を示してきた」と述べた。
インドの主要株価指数であるNSEニフティ50は7日の取引開始直後に0.7%下落したが、その後値を戻して横ばい圏で推移。インド・ルピーは下落した一方、国債相場は序盤の下げから切り返した。
野村ホールディングスのエコノミスト、ソナル・バルマ氏は、軍事行動直後の金融市場は神経質な動きを見せるだろうが、「過去の事例を見ると、同様の地政学的イベントによる市場や経済への影響は短期的なものになる傾向がある」と話した。
パキスタンのシャリフ首相は7日、インドの攻撃について「卑劣な攻撃」と非難。パキスタン外務省は別の声明で、今回の攻撃により女性や子供が犠牲になったと発表した。
シャリフ首相は声明で「パキスタンには、われわれに課された今回の対立に相応する形で対応する全面的な権利がある」とし、「敵に目的を達成させるわけにはいかない」と強調した。
インドの発表によると、ドバル国家安全保障顧問が攻撃後にルビオ米国務長官に説明を行ったという。ルビオ氏はX(旧ツイッター)への投稿で、インドとパキスタン双方の指導者との協議を続け、平和的な解決を促すと述べた。
インドによる軍事攻撃について、トランプ米大統領はホワイトハウスでのイベントで記者からの質問に対し「遺憾だ」とし、早期の終結を望むと語った。
ともに核保有国であるインドとパキスタンの関係は、襲撃事件を契機に急速に悪化している。インドのモディ政権は事件を「テロ行為」と位置づけ、パキスタンが関与したと主張。関係者に報復措置を取る姿勢を示していた。一方、パキスタンは一連の攻撃への関与を否定し、インドが軍事行動を取った場合は報復する構えを示していた。
原題:India, Pakistan Trade Military Strikes After Kashmir Attack (3)、Rubio Says He’s Closely Monitoring India-Pakistan Situation(抜粋)