君も新種生物の発見者になれるかも。自然観察アプリ「iNaturalist」
初夏になると、庭や公園が一気ににぎやかになりますよね。
冬の間は見かけなかった生き物たちが姿を現すし、植物は毎日のように成長する。我が社のビオトープでは、メダカがたくさん孵化しました。
そんな季節におすすめなのが、スマホを使った自然観察。
iPhoneやAndroidに「iNaturalist」という無料のアプリを入れるだけで、あなただけの庭の図鑑が作れるんです。
アプリ1つで自然の知識が得られるよ
このアプリは2008年にローンチされたサービス。植物、動物、虫、キノコなど、あらゆる“生き物”を記録して識別したり、世界中のナチュラリストから情報をもらえたりします。
私はローンチ当時に熱心に使っていましたが、そのころはまだユーザー数が少なかったからなのか、それとも私が住んでいた東南アジアにおけるデータが少なかったからなのかわかりませんが、あまり活発なやり取りができなかったんですね。
しかし、現在では全世界で2億3000万件以上の観察記録が投稿され、メキシコ、南アフリカ、オーストラリアなどでは主要な自然情報インフラとして活用されるほど大成長。記録したデータは、なんと研究者たちの本格的な研究にも使われているんです。
使い方は簡単。アカウントを作ったら、庭や公園で見つけたものをスマホで撮って投稿するだけ。
すると、世界中のユーザーが「それはアオスジアゲハですね」とか、「これは在来種の〇〇です」と教えてくれます。
もっとサクッと知りたい人は、姉妹アプリの「Seek by iNaturalist」がお勧め。スマホのカメラを生き物にかざすだけで、AIが種類を教えてくれます。「これ、見たことあるけど名前知らなかった!」という体験がきっと待ってます。
観察してみよう
iNaturalistのアプリを入れたら設定するんですが、ここでちょっと気をつけて欲しいことがあります。
生き物を発見した場所も表示されてしまうということは、ユーザーの行動範囲がわかってしまうということです。
なので、ユーザーネームは本名じゃないほうがいいし、プロフィール画像も本人の写真じゃないほうがいいでしょう。家の庭やベランダといった個人の特定につながる場所での撮影も、気をつけたほうがいいと思います。
設定が終わって、安全性を確保したら、いよいよ観察開始です。
最初は動きの早い虫や鳥を撮るのが難しくて、がっかりするかもしれません。
でも、焦らなくて大丈夫。諦めずに観察し続けることが大事です。
観察のコツもいくつかあります。
ピントが合った明るい写真を撮る
日差しが強すぎるときは影をつける
フラッシュは一部の虫が逃げるので注意
できれば複数の角度から撮るとベター
また、撮影時には「花の香り」「見つけた場所の特徴」「個体数」などのメモ(=フィールドノート)も残しておくと、識別しやすくなり、研究にも役立ちます。
観察データを共有しよう
あなたが投稿した写真や記録は、世界中の科学者たちが使えるオープンな研究データになります。
例えば、「ニューヨークのチョウは減っているの? 」「この外来種はどこまで広がったの? 」といったリアルな疑問の答えを導くのに役立つんです。
投稿されたデータには、非営利目的なら使用可能なライセンス(クリエイティブコモンズ)が付きます。研究者たちは、GBIF(世界生物多様性情報機構)などのデータベースを通じて、あなたの観察を科学に活用します。
もし使われたくない場合は、ライセンス設定を変えることもできますよ。
新種発見の可能性も!
コロラド州立大学のギリアン・バウザー氏によると、モンタナ州で行われたガ(蛾)の観察プロジェクトでは、約4,000種もの新種が見つかったそうです。
つまり、あなたの観察が新しい発見につながるかもしれないんです。
まだ名前すらついていない生物は、何百万種もいるみたい。もしかすると、偶然見つけた生き物が新種かもしれません。夏休みの自由研究に子どもと一緒に新種探しなんて楽しいかも。
「楽しいこと」が科学の役に立つ時代
フロリダ大学の生態学者、コーリー・キャラハン氏は次のように語っています。
「iNaturalistは、まず楽しむためのアプリです。
何を共有してるのかを知るだけでも、十分に価値があります」
難しい知識はいりません。必要なのは好奇心とスマホだけ。
「20年前までは、生態系を調べたければ自分で現地に行ってデータを取るしかなかった。
でも、スマホが普及した今では、鳥好きの人や、ただ庭に来た虫が気になる人まで、みんなが観察者になれるのです」