米小売売上高は幅広く増加、消費者心理の悪化で先行きは不透明
7月の米小売売上高は幅広い分野で増加し、6月分も上方修正された。ただ労働市場の軟化や消費者心理の悪化を受けて、エコノミストらは先行きに慎重な姿勢を見せている。
キーポイント- 米小売売上高は前月比0.5%増
- 市場予想の中央値は0.6%増
- 前月は0.9%増(速報値0.6%増から上方修正)
- データはインフレ調整を加えていない
自動車を除いたベースで0.3%増加した。
13の業種のうち、9業種で増加した。特に増えたのは自動車販売で、3月以来の大きな伸び。オンラインを含む無店舗小売りと総合小売店も増加。アマゾン・ドット・コムによる大型セール「プライムデー」の期間延長やウォルマートが実施した1週間にわたるセール「ディール」、ターゲットによる同様の販促キャンペーンが後押しした可能性が高い。
今回の統計は、個人消費が持ち直し、年後半が順調な滑り出しとなったことを示唆する。ここ数カ月は、関税を中心とするトランプ米大統領の政策を巡る不確実性が消費者心理を冷やし、多くの消費者が様子見姿勢を取っていた。労働市場は減速傾向にあるものの、通商政策の明確化や株式相場の回復を受けて一部消費者は購買力に対する自信を深めている。
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ただ15日、米ミシガン大学が発表した8月の消費者マインド指数(速報値)は予想外に低下。ウェルズ・ファーゴのエコノミスト、シャノン・シーリー・グライン氏は、特に他分野での慎重姿勢や裁量支出の減少を踏まえると、小売売上高統計の好調さが今後も続くかは疑問だと指摘。
「関税を巡る不確実性が続いていることや最近の雇用データを考慮すると、年後半は消費トレンドが軟化する可能性が高い」と同氏は述べた。
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米連邦準備制度理事会(FRB)当局者は、金融政策を判断する上での重要な指標として個人消費の動向を注視している。 個人消費は、米経済活動の3分の2を占める。
国内総生産(GDP)の算出に使用される飲食店と自動車ディーラー、建設資材店、ガソリンスタンドを除いたコア売上高(コントロールグループ)は、7月に0.5%増加。また6月分は上方修正された。
家具やスポーツ用品、自動車など堅調な伸びを示した。一部の項目では価格の上昇も見られた。小売売上高統計はインフレ調整を行わないため、売上高増加には価格上昇の影響が反映される可能性もある。
小売売上高統計で唯一のサービス分野である飲食店は、2月以降で最大の減少となった。TDセキュリティーズの米国担当チーフマクロストラテジスト、オスカー・ムニョス氏はこの減少について、7-9月(第3四半期)におけるサービス分野の裁量支出を占う上で良い兆候ではないと指摘する。
同氏は、「サービス支出全体は米消費者の状況を測る上で最も重要な分野だ」とし、「7月の小売売上高はおおむね良好だったが、これだけでは米消費者全体の健全性はまだ分からない」と述べた。
小売売上高は主に財の購入を反映しており、これは個人消費全体の約3分の1を占める。7月の個人消費支出(PCE)は29日に発表される予定だ。この統計では、財・サービスに関するインフレ調整後の支出が示される。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:Consumer Sentiment Signals Caution After Solid US Retail Sales(抜粋)