外国人労働者の日本語能力「N5」は英検3級相当、N4は準2級 帯同家族は要件なし 「移民」と日本人
国内の外国人比率が総人口の3%に迫り、外国人の日本語能力が「共生」のためのキーワードになりつつある。現状では、日本語能力を求めない在留資格もある。出入国在留管理庁の資料をもとに、在留資格に求められる日本語能力「N5」から「N1」までと、日本の実用英語技能検定(英検)を比べてみた。
ドイツは国費で言語教育
中長期的な外国人の受け入れ政策をめぐっては、鈴木馨祐・前法相の勉強会が8月、「外国人10%時代」を想定し「論点整理」を公表。入管庁のプロジェクトチームが調査や検討を進めており、外国人の集住地域で生活と治安面で課題が生じると指摘した。
「共生社会の実現」について検討する際、日本語能力の必要性と、日本文化や慣習への理解促進が課題となり得るとして、入国前に日本語試験の合格や日本語講習を課すことを「国費により行うかも含めて検討することが考えられる」としている。
また、ドイツではドイツ語が堪能でない外国人に対し、連邦政府が行うドイツ語教育やドイツ社会に関する知識の提供など、社会統合プログラムへの参加が義務づけられていることを紹介している。
バス運転手らは「英検2級」
現状では、在留資格に応じて日本語能力の要件を定めているほか、日本語能力を求めない在留資格もある。
人手不足が深刻な業界で外国人労働者を受け入れる「特定技能1号」の場合に求められているのは、日本語能力試験の5段階で2番目に易しいN4相当以上。入国前に同試験に合格した証明書などがなければ、在留資格は得られない。
日本語能力のN4を、外国語学習などの「欧州言語共通参照枠(CEFR)」を介して英検と対照すると、英検では準2級(高校中級程度)から2級(高校卒業程度)に相当する。ただし、バス・タクシー運転手と鉄道乗員はN3相当が求められ、英検では2級にあたる。
在留外国人統計によると、「1号」は今年6月末時点で全国に約33万人おり、半数近い約14万6千人がベトナム人、2番目はインドネシア人の約6万9千人となっている。
「1号」からの移行により、家族帯同も可能となる特定技能2号はN3相当。1号と同様、最多のベトナム人約2200人を含む約3千人だが、今後増加が予想されている。「家族滞在」の在留資格は就労できず、日本語能力は問われない。
また、技能実習に代わり令和9年度から始まる新制度「育成就労」では、最も易しい「N5」の取得を義務づける予定で、これは英検3級に相当するという。
日本語不要の「社会内社会」
一方、難民認定申請中で、強制送還の手続き中の仮放免者らや、「特定活動(難民認定等手続中)」の在留資格を与えられた外国人については、日本語能力は必要とされない。埼玉県川口市に集住するトルコ国籍のクルド人ら約2100人のうち約1400人が、これに該当する。
この結果、クルド人同士で固まって生活し、日本語を学ぶ機会が限られているとの指摘が出ている。同様の状況はベトナム人らの技能実習生の間でもみられ、同国人同士で寮生活し、同じ職場で働き、日本語を学ぶ必要性を感じないことから、「社会内社会」が形成されているという。
主な在留資格の日本語能力要件
◆就労系ほか
【技術・人文知識・国際業務】法的な日本語要件はないが、実際には仕事内容に応じた日本語能力が求められる
【経営・管理】日本語要件はなかったが、今年10月から本人か雇用者にN2相当が必要に
【特定技能1号】N4相当。ただし、バス・タクシー運転手と鉄道乗員はN3相当
【特定技能2号】1号から移行。漁業・外食業ではN3相当
【家族滞在】日本語要件なし
【技能実習】日本語要件はないが、入国前後に最低2カ月、320時間の日本語、生活一般、法令などの講習義務づけ。介護職はN4相当が必要
【育成就労】(令和9年度開始予定)N5相当
◆身分系
【永住者】【日本人の配偶者等】【永住者の配偶者等】【定住者】日本語要件なし
※定住者のうち日系2、3世の成年や定住者の配偶者らは、在留期間が5年の在留資格はN2相当が必要
【日系4世】18~30歳はN5相当、31~35歳はN3相当
◆その他
【短期滞在】日本語要件なし
【特定活動(難民認定等手続中)】日本語要件なし
※出入国在留管理庁への取材から