【日本市況】長期金利上昇、与党が参院選苦戦で財政懸念-株下げ渋り
14日の日本市場は長期金利が急上昇(債券相場は下落)した。参院選で与党が一段と苦戦していると伝えられ、財政拡大懸念が強まった。
新発20年国債利回りは2.625%まで上げて2000年以来の高水準を更新した。30年や40年も大幅に上昇した。20日投開票の参院選では自公で過半数を割り込む可能性があるとJNNが報道。選挙後に財政政策が拡大するとの思惑が広がり、債券が売られた。株式は下げ渋り、円は対ドルで方向感を欠く動き。
根強い財政懸念でドイツの長期金利、インフレ懸念から米国の長期金利の水準が切り上がっている影響も日本の長期金利は受けている。トランプ関税はリスクオフから金利低下に結び付きやすいが、日本では財政悪化懸念がより響いている。
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みずほ証券の松尾勇佑シニアマーケットエコノミストは14日付リポートで、与党の過半数割れの場合は首相交代や政権枠組みの拡大が検討される可能性が高まるとし、グローバルで財政リスクが意識されやすい状況下で超長期金利に対する押し上げ圧力となりやすいと指摘した。
14日の国内債券・株式・為替の動き-午後4時半過ぎ- 長期国債先物9月物の終値は前週末比51銭安の138円06銭
- 新発10年債利回りは7.5ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)高い1.575%-3月以来の高水準
- 新発20年債利回りは12.5bp高い2.625%
- 新発30年債利回りは13bp高い3.17%
- 新発40年債利回りは17bp高い3.495%
- 東証株価指数(TOPIX)は前週末比0.02%安の2822.81
- 日経平均株価は0.3%安の3万9459円62銭
- 円は対ドルでニューヨーク終値比0.1%高の147円32銭
債券
債券相場は大幅下落し、長期金利は急上昇した。米長期金利がインフレ懸念再燃への警戒から上昇したことを受けて売りが先行し、参院選を控え財政悪化への警戒感も売りにつながった。
アクサ・インベストメント・マネージャーズの木村龍太郎シニア債券ストラテジストは「米金利上昇や20日の参院選に向けた警戒感から売りが出ている」と指摘。「財政拡大への警戒やトランプ関税を巡る不透明感からリスクを落とす動きが国内市場でも効いているのではないか」と述べた。
参院選について、岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは「与党が過半数を取れないと政権の枠組みがどうなるかを含め選挙後も不透明感が残り、投資家は積極的に動きにくい」と言う。
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.775% 1.070% 1.570% 2.570% 3.145% 3.415% 前週末比 +1.5bp +4.0bp +7.0bp +7.0bp +10.5bp +9.0bp株式
株式は下げ渋って日経平均は続落、TOPIXはほぼ変わらずで取引を終えた。トランプ米大統領が欧州連合(EU)とメキシコに8月1日から30%の関税を課すと表明したことで、業績先行き不透明感から電気機器や情報・通信に売りが先行した。
為替相場が11日の東京市場終値比では円安で推移しており、自動車や機械は買われた。指数はともに上昇に転じる場面があった。トランプ氏が「14日にロシアについて重要な声明を出すつもりだ」と語ったことで、三菱重工業といった防衛関連株が売買を伴って値上がりした。
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丸三証券の高橋侑也アナリストは「詳細がまだ分からないが、 重大なことを発表するようで、防衛関連にポジティブに効いている可能性がある。中期的に防衛費増額の話もあり、買いやすい」と述べた。
日本銀行が物価見通しの上方修正を検討する見込みと報じられ、銀行株が下げを縮小する場面があり、TOPIXを支えた。T&Dアセットマネジメントの浪岡宏チーフ・ストラテジスト兼ファンドマネジャーは、選挙での与党苦戦で利上げが難しいとの見方から銀行株は下げていたが、報道を受けて買い戻されたと言う。
為替
円相場は対ドルでニューヨーク終値を挟んで上下に振れる動き。円は貿易摩擦への警戒感に加え、前週末に下落した反動もあり、ポジション調整から買いが先行。その後、参院選での与党過半数割れへの警戒などから売られる場面もあった。
外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「これまで円を買っているのは海外投機筋が中心」と指摘。国内では個人を含めた投資家が円を売り越していると推察され、東京市場でリスク回避の展開になると「円を買い戻すニーズの方が強い」との見方を示した。
日銀の物価見通し上方修正検討の報道を受け、円が買われる場面があった。
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