展望2026:日銀利上げは1─2回、長期金利2.5%近辺に上昇へ

写真は円紙幣。2022年6月撮影。REUTERS/Florence Lo

[東京 24日 ロイター] - 2026年の円債市場は、日銀の利上げが継続するとの想定の下で円金利は上昇基調をたどり、イールドカーブはベアフラット化すると予想されている。日銀の追加利上げは半年に1回のペースで年内に1─2回実施され、足元2.0%で推移する長期金利については2.5%近辺までの上昇を見込む向きが多い。

市場関係者の見方は以下の通り。

◎日銀利上げは2回、長期金利は年前半に上昇・後半は米金利に追随しやや低下

<アセットマネジメントOne債券運用部 債券チーフ・インベストメント・オフィサー 清水岳友氏>

日銀は26年に25ベーシスポイント(bp)の利上げを半年に1回のペースで2回行い、年末時点の政策金利は1.25%に上昇することをメインシナリオとしている。ただ、1.25%はあくまで通過点であり、27年も利上げは継続するとの見方だ。ターミナルレート(利上げの到達点)は、最低でも1.5%と考えている。

長期金利は上昇方向で年間レンジは1.8─2.5%とみているが、オーバーシュートする局面では2.5%以上を付ける可能性もある。市場はこの先2回の利上げについてかなり織り込みが進んでいる状態だが、それが(政策が後手に回る)「ビハインド・ザ・カーブ」のような形になり、10年金利が2.6%や2.7%にオーバーシュートするということもあるかもしれない。

米国の金融政策に関しては、利下げはあと1回か多くて2回と考えており、10年金利はいったん足元の水準(4.2%)から上昇し、上半期に4.4─4.5%をうかがいに行くと思う。雇用が良くないことは織り込み済みで消費や成長は底堅い中、26年は中間選挙を見据えて共和党は早い時期に財政政策を打つと考えられる。このため米景気は上半期はいい感じで推移するが、選挙の前後から失速して年末頃には悪くなるとみていて、米10年金利も、4.5%近辺まで上昇した後は再び4%を目指すような低下が始まると考えている。

景気減速により米10年金利が低下する時に、円金利だけが上がり続けることはさすがに考えづらい。米景気悪化のタイミング次第だが、円金利も下半期には上昇基調が反転し、年末にかけて2.3%や2.2%に少し低下するイメージを持っている。

円債のイールドカーブについては、フラットニングを見込む。年内に2回の利上げ、またさらなる利上げもあり得ることを織り込みに行くならば、短い年限の売り圧力が強くなり超長期に行くほどに売り圧力が緩和される、ベアフラットの相場を予想する。

債券運用戦略では、全体的に「金利はショート(売り持ち)」方向、それにプラスして「フラットナー」、つまり短中期・長期ゾーンのショートに超長期ゾーンのロング、というポジションが有効と考えている。

新発10年国債利回り(長期金利)の年間予想レンジ:1.8%─2.5%

◎日銀の追加利上げは1─2回、超長期国債に妙味 内外投資家の買い期待できる

<アムンディ・ジャパン 債券運用部長 有江慎一郎氏>

日銀は1回か2回の追加利上げを行うと予想しており、政策金利は年内に1.25%まで引き上げられる可能性がある。1.25%がターミナルレートになるかどうかは、為替次第という面もあり現時点では定かではないが、少なくともそこでいったんは様子見になるとみている。

米国では、あと2回の利下げが実施され政策金利は3.0─3.25%になると予想する。ただ2回の利下げといっても打ち止めが視野に入る環境であるため、米長期金利自体は下がらないとみており、来年末時点の予想は4.5%と、むしろ現行水準(4.2%)から多少の上昇を見込む。

日本については、国内のマーケット参加者の大半が期間の長い金利上昇を経験したことがない中で金利が思いのほか大きく動くとの感覚を足元で持っており、長期金利が2.4%にワンタッチする可能性があるとみている。一方で、金利を低下させる方向の話は見当たらないが、正常な市場では年間0.8%程度のレンジで動くことが普通であるため、長期金利も一応1.6%までの低下をみておきたい。

イールドカーブについては、若干ベアなフラットニングを見込む。

国内投資家はそろそろ(円債を)買い始めていい水準だ。10年債で2%の利回りがあり、ベースのインカムはそこそこきちんと得られる水準になってきた。短期的には、先ほど述べた金利の上昇により一時的に評価がマイナスになることがあるかもしれないが、これだけキャリーがあればキャピタルロスもカバーでき、長い目で見れば安定した収益になると思っている。

海外投資家にとっても、欧州や米国から見れば日本円は為替ヘッジが(コストではなく)プレミアムが乗る通貨であり、2%の金利に1─2%のプレミアムが乗ればかなり高い期待リターン(期待収益率)になるので、日本の債券はかなり魅力的な水準にある。日本の(イールド)カーブはかなり立っているため、そこは使っていくべきだと思う。

現時点では、もう少し金利が上がりそうだということでまだ多少躊躇(ちゅうちょ)する向きもあるが、26年については徐々に買う動きが出てくることが期待される。

リスクに関していえば、高市政権は責任ある積極財政を掲げる中でも今のところは市場への一定の配慮を見せておりそれほど懸念はしていないが、例えば総選挙になるとなった際に大風呂敷を広げて大盤振る舞いするというような話になれば、マーケットは嫌気すると思う。

新発10年国債利回り(長期金利)の年間予想レンジ:1.6─2.4%

◎日銀の追加利上げ、早ければ7―9月期に イールドカーブは若干フラット化へ

<野村証券 エクゼクティブ金利ストラテジスト 岩下真理氏>

個人的見解では日銀は早ければ7─9月期に追加利上げを実施し、政策金利は1.0%に引き上げられると予想する。米国の利下げがいったん休止すると想定される中、ドル高/円安地合いが定着しやすく、その傾向がさらに加速する可能性もあり、為替相場が催促する形で日銀が利上げに踏み切るとみている。

26年度予算成立後の4―6月には解散・総選挙の可能性が意識されやすく、日銀はその間動きづらい。利上げは半年程度で1回のペースで、四半期に一回見直される展望リポートの公表に合わせたタイミングとなるだろう。

その後は経済・物価見通しがオントラックで、米経済も失速せず、高市政権による理解を得ることができれば、日銀は12月もしくは来年1月にさらなる追加利上げを実施する可能性は残る。

高市早苗首相が解散・総選挙に踏み切り、与党が過半数を持ち直せば、国民が政策を支持しているとの受け止めから27年度も積極的な財政政策を掲げ続ける可能性がある。財政出動による国債増発は10年ゾーン以下が対象になりやすく、イールドカーブは極端にスティープニングするのではなく、若干フラットニングしながらカーブ全体で金利水準が切り上がっていくとみている。

26年6月には、日銀の長期国債買い入れ減額計画の中間評価が予定されている。積極財政により国債発行額が増える一方で、日銀の国債買い入れの量が戻ってしまうと財政のマネタリゼーションと受け止められかねない。日銀・政府が間違ったメッセージを与えることにならないよう、毅然と機械的に国債買い入れの減額を進めていくべきだ。

リスクシナリオはAI(人工知能)バブル崩壊による世界的な景気減速で、そうなれば日銀の金融正常化の動きはいったん休止となり円金利にも低下圧力がかかる。一方、日銀の利上げに打ち止め感がみえず、その先の利上げを市場が確信する状況の中で積極財政が意識されれば、長期金利は2.5%に到達する可能性がある。

米国については、26年前半は物価が緩やかながら上昇基調になると見込んでおり、米連邦準備理事会(FRB)はいったん予防的利下げを休止し、その後、新FRB議長の元で中間選挙前の6月と9月に利下げが実施されると予想する。中間選挙を前にトランプ大統領は金融・財政・関税政策など柔軟に対応するとみており、米経済が失速するというイメージは描きづらい。米長期金利は3.5―4.5%の間で推移し、次の利下げを織り込む過程で4%を割り込んでくるとみている。

新発10年債利回り(長期金利)の年間予想レンジ:1.7─2.5%

(植竹知子、坂口茉莉子)

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