スペースXの超大宇宙機スターシップが爆発した原因、月と火星が「さらに遠く」なる可能性(Forbes JAPAN)
現地時間(CST)の6月19日23時1分、スペースXの超大型宇宙輸送機「スターシップ」が地上でのエンジン燃焼試験中に爆発炎上した。事故が発生したのはテキサス州にあるスペースXの開発拠点「スターベース」その凄まじい爆発の瞬間はNASA Space Flightなどによってライブ配信された。スペースXによると全スタッフの無事が確認され、周辺住民への危険もないという。 【画像】スペースXの超大宇宙機「スターシップ」の構造 事故原因の詳細は現時点では未公表だが、イーロン・マスク氏は事故から数時間後、次のようにポストした。 「ペイロード・ベイ内に設置された窒素COPVに不具合が生じたようだ、ただし、(その内部圧力は)保証圧力以下だった」 爆発の瞬間、スターシップに何が起こったのか? マスク氏のコメントとスターシップの構造からその原因を推察してみたい。 ■「静的燃焼試験」での大爆発 スターシップは上段の「スターシップ」と下段の「スーパーヘビー」から構成される。上下段の総称も「スターシップ」とされるが、この記事では主に上段を指すこととしたい。 スターシップはロケットの第2段であると同時に宇宙船としての機能も備え、100~150トンのペイロード(荷物)を搭載することができる。その全長は50.3m。下段のスーパーヘビーを統合した状態では全長121m(現V2仕様)となる。 6月30日(日本時間、以下同)には通算10回目の飛行テストが行われる予定だったが、事故発生時にはその予備試験としてスターシップ単体でのエンジン動作テストが行われていた。この試験は「静的燃焼試験」、または「スタティック・ファイア・テスト」と呼ばれている。 この試験では、推進剤をタンクに充填し、機体を試験台に固定したままの状態でエンジンを点火する。推進剤とは燃料とそれを燃やすための酸化剤の総称だが、スターシップの場合は燃料に液化メタン、酸化剤として液体酸素を使用している。この試験によってエンジンの燃焼や推力、燃料系の流れ、その他システムの動作などが確認されるが、6月19日に行われた試験では推進剤を充填している最中、突然スターシップは爆発した。 ■爆発の原因は「窒素COPV」 NASA Space Flightが公開した動画を見ると、スターシップの上部からガスが噴出し、そこから崩壊したことがわかる。マスク氏がポストした「ペイロード・ベイ」とはこの部分を指す。また、マスク氏の「窒素COPVに不具合が生じたようだ」とのコメントは、テレメトリ(遠隔)データから確認されたもののようだ。