イスラエル海軍、ガザ向け支援船団を拿捕 トゥーンベリ氏ら活動家を拘束
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イスラエル海軍は1日、パレスチナ・ガザ地区へ人道支援物資を運ぼうとしていた船団を拿捕(だほ)し、乗船していた活動家らを拘束した。拘束された中には、スウェーデンの気候活動家グレタ・トゥーンベリ氏も含まれている。
イスラエル外務省は、グローバル・スムード船団(GSF)に属する複数の船を「安全に停止させた」と発表。乗船者らをイスラエルの港へ移送しているとした。
海軍は、船団が「戦闘中の海域に接近している」と通告し、針路変更を求めていた。
GSFは2日早朝、まだ30隻が「ガザに向けて力強く航行中」で、目的地まで残り46カイリだと発表した。
GSFは、イスラエル軍による拿捕は「違法」で、「防衛行為ではなく、あからさまに必死な行動」だと非難。船団の一部が「意図的に海上で衝突された」と主張し、他の船も放水砲による攻撃を受けたと述べた。
「ガザが確実に飢え続け孤立し続ける状態を確保するため、占領者がどれほど極端な手段を取るのか、露呈させる行為だ」とGSFはソーシャルメディアに投稿。「人道支援の成功は自分たちの包囲の失敗を意味するため、彼らは平和的な民間ミッションを攻撃するのだ」と主張した。
イスラエル外務省は、船団が「ガザ沖の合法的な海上封鎖に違反している」と通告していたと主張しているが、船が封鎖区域に入っていたかは不明。
外務省はソーシャルメディアで拿捕時の映像を公開し、トゥーンベリ氏が船の甲板でイスラエル兵から水と上着を受け取る様子を示した。「ハマス・スムード船団の船はすでに何隻か、安全に停止させられ、乗っていた人たちはイスラエルの港へ無事に移送されている。グレタと友達たちは安全で健康だ」とも書いた。
船団のライブ映像によると、44隻すべてが拿捕されたわけではなく、一部は状況が未確認のままだという。
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イスラエル政府は、GSFによるガザへの人道支援輸送を「挑発行為」と位置づけている。
GSFによると、主力船のアルマ号のほか、スリウス号、アダラ号など複数の船が拿捕・乗船された。
GSFはこれに先立ち、イスラエル軍が「救難信号の発信や、違法な乗船のライブ映像を遮断するため、船舶の通信をわざと妨害した」とも主張している。
GSFは、拿捕時には船団はガザ沖から70カイリの地点にいたと説明。2日朝にはガザに到着すると期待していたという。
ギリシャ、イタリア、ドイツ、チュニジア、トルコでは、イスラエルによる拿捕に抗議する集会が開かれた。
イタリアの労働組合は、「船団と憲法的価値とガザを守るため」として、3日のゼネスト実施を呼びかけた。
トルコ外務省は拿捕を「テロ行為」と非難し、「この攻撃の責任者」を追及すべきだと主張した。
コロンビアのグスタボ・ペトロ大統領は、国内に残るイスラエルの外交官全員を国外追放し、拿捕を「ネタニヤフによる国際犯罪」と非難した。
ペトロ大統領はさらに、2020年から続いていたイスラエルとの自由貿易協定を破棄し、船団に乗っていたコロンビア人2人の解放を求めた。
アイルランドのサイモン・ハリス副首相は、拿捕の情報は「心配」だと述べ、イスラエルに国際法を順守するよう求めた。拘束された中には、シン・フェイン党のクリス・アンドリューズ上院議員を含め、アイルランド人が少なくとも7人含まれている。
ハリス副首相は「アイルランドは国際法の順守を求めており、船団の全員がしっかりと国際法を守った形で扱われると期待する」と述べた。
フランスのジャン=ノエル・バロ外相は、「拿捕作戦が可能な限り安全な条件下で行われるよう」フランスは対応したと声明を発表。
イタリアのアントニオ・タヤーニ外相は、船団の500人に対してイスラエル軍が暴力的行為は使わないと、イスラエルのギドン・サール外相から保証を得ていたと述べた。船団にはフランスやイタリアの政治家も乗っていた。
イスラエルは、今年6月と7月にも活動家による海上からのガザ支援を阻止している。イスラエル政府は船団を「自撮りヨット」と嘲笑しているが、トゥーンベリ氏はBBCに対し「宣伝のために命を危険にさらす人がいるとは思わない」と反論した。
複数の国際支援団体は、ガザに食料や医薬品の搬入しようとしているが、イスラエルが物資の流入を制限していると批判する。対するイスラエルは、物資がハマスの手に渡るのを防ぐためだと主張している。
イスラエルとアメリカは、代わりとなる支援システム「ガザ人道基金(GHF)」を後押ししているが、国連はGHFが非倫理的だとして協力を拒否している。
イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相はこれを、「まったくのうそだ」と否定している。
ガザでは、ハマスがアメリカの新しい停戦案への対応を検討する間、イスラエルがガザ市への攻撃を強化している。
イスラエルのイスラエル・カッツ国防相は、ガザ市に残る数十万人のパレスチナ人に対し南部に避難するよう最終通告し、「攻撃中に残る者はテロリストおよびテロ支援者と見なす」と述べた。
国際赤十字委員会(ICRC)は、「国際人道法の下では、ガザ市にとどまるか離れるかを問わず、民間人は保護されなくてはならない」と声明を発表した。