会話中で「あれ」「それ」が多い人は注意。医師が警告する認知症の意外な原因「糖毒脳」とは(ダイヤモンド・オンライン)

 会話の中で「あれ」「それ」といった言葉が増える。 この現象を、軽く考えていないだろうか。言いたいことはあるのに、言葉が出てこない。思い出せない部分を曖昧な表現で埋めてしまう。多くの人は「ちょっと疲れているだけ」「年齢のせいかも」と軽く受け止めがちだが、その変化は決して無視できるものではない。元オックスフォード大の医学研究者であり、「糖と脳」の関係を研究してきた下村健寿氏は、こうした状態の脳を「糖に毒された脳」を意味する「糖毒脳」と名づけ、認知症の前段階として警鐘を鳴らしている。下村氏の著書『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』から、日常の中に潜む認知機能低下のサインを読み解いていく。(構成/ダイヤモンド社・石井一穂) ● 「あれ」「それ」でごまかしてしまう……  打ち合わせの途中、話題が少し前のやりとりに移ったときだった。  「で、この前の……あれ、どうなりました?」  口に出しながら、自分でもわかっている。  思い出せないから、「あれ」でごまかしているだけだということに。  本当は言いたい対象がある。  たしか前回の打ち合わせで、相手に何かをお願いしていたはずだ。  送った資料の確認か、見積もりの依頼か、それとも別の案件か……。  頭の中にはぼんやりとしたイメージがあるのに、言葉だけが引っかからない。  相手は一瞬、考えるように目線を上げる。  「……あれ、というのは?」  やっぱり、そうなる。  当然だと思いながらも、胸の奥が少しざわつく。  「あ、えっと……ほら、あの……例の……」  言いながら、余計に焦る。  思い出そうとすればするほど、輪郭が遠のいていく感覚。  沈黙が、じわっと長くなる。  結局、手元のパソコンを開いてメールの履歴を確かめる。  「あ、すみません。先週お送りした新規企画の件です」  ようやく言葉にできた瞬間、空気が戻る。  でも同時に、少しだけ気まずさも残った。  こんなふうに、「あれ」や「それ」でごまかしてしまうことが、最近やけに増えた気がする。 ● 認知症へとつながる「糖毒脳」という状態  会話中に「あれ」や「それ」が増えた。  そんな人は、もしかしたら「糖毒脳」と呼ばれる状態になっているかもしれない。  「糖毒脳」とは、元オックスフォード大の医学研究者であり、医師としても活躍する「糖と脳」の専門家である下村健寿氏が、著書『糖毒脳』で提唱した言葉だ。  過剰な糖によって脳が毒された状態を、私は「糖毒脳」と呼んでいます。 ――『糖毒脳』より引用  下村氏は、「糖毒脳」の状態が進行すると、脳の認知機能が崩壊していくと指摘する。  糖を摂ると血糖値を下げるためにインスリンが分泌される。  しかし糖の過剰摂取が続くと、やがてインスリンが出づらくなったり、効き目が落ちたりしてしまう。  下村氏は、インスリンが脳にもたらす役割として、同書でこう述べている。  インスリンは脳内で「学習」や「記憶」を司る脳神経細胞同士の情報伝達をスムーズにしたり、アルツハイマー病の原因となる「アミロイドβ」などによる攻撃から脳神経細胞を守る役割も果たしている。 ――『糖毒脳』より引用  そのインスリン分泌に異常がおきるため、結果として糖の摂りすぎは認知症リスクを高めてしまうのだ。 会話中に「あれ」「それ」といった言葉でごまかすことが増えた。  この状態を放置していると、気づかないうちに脳の機能が少しずつ低下していってしまうかもしれない。  (本稿は、『糖毒脳――いつまでも「冴えた頭」でいるために知っておきたいこと』の内容を引用して作成した記事です) 下村健寿(しもむら・けんじゅ) 福島県立医科大学卒。同大副理事、医学部病態制御薬理医学講座主任教授。現役内科医でもある基礎医学研究者。日本糖尿病学会東北支部学術評議員。日本内科学会認定内科医。医学博士。群馬県前橋市出身。2004年、日本で働いていた大学医学部から、英国オックスフォード大学への就職を試み、執念の就職活動を実らせて成功。オックスフォード大学正式研究員として、世界を代表する生理学者フランセス・アッシュクロフト教授の薫陶を8年間受けた。その間、新生児糖尿病治療法の発見という世界的快挙に貢献。新生児糖尿病の最重症型であるDEND症候群の脳神経症状治療有効例を報告した論文は米国神経学会誌「Neurology」よりEditorial論文に選出された。貢献を認められて2006年と2010年にオックスフォード大学メリット賞を2度受賞。日本帰国後は、新生児糖尿病に加えて肥満・2型糖尿病などの生活習慣病について、インスリン分泌や脳機能の観点から研究している。

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