インドの対米スタンスに変化、通商協議で強硬姿勢も-米中合意が影響
インド当局は米国との貿易協議が順調に進んでいるとしている一方で、中国がトランプ米大統領に対して強硬姿勢を示したことを踏まえ、インドも対米交渉でより強気の姿勢を取り始めている兆しが見られる。
事情に詳しい関係者によると、インドと米国の貿易協議は円滑に進行し、最初の合意の一部は秋までにまとまる見通し。ただし、トランプ氏の関税が発動される見込みの7月前半までに、インドが暫定合意を取り付けられるかどうかは不透明だ。非公開情報だとして関係者は匿名を条件に語った。
インド商工省はコメント要請にすぐに応じなかった。
インドは12日、トランプ政権による鉄鋼・アルミニウム関税賦課に対抗し、報復関税を課すと警告。この動きは、17日から米国で予定されている貿易協議に向けた交渉戦術と見られ、インドが対米姿勢を変化させていることを示している。
モディ首相はこれまでホワイトハウスに配慮し、貿易や移民などの問題で譲歩を示唆していた。また、トランプ氏が貿易を交渉材料としてインドとパキスタンの停戦を取り付けたと繰り返し主張していることに対するインド政府の不満の高まりも背景にある。
ニューデリーのシンクタンク、社会開発評議会のビスワジット・ダール教授は、これまで米国は「インドに条件を押し付けてきた」と指摘した。インドが報復関税をちらつかせ始めたのは、「立ち上がり強く出る」意思があることを示す初めての兆しだという。
トランプ政権は米国が輸入する全ての鉄鋼・アルミニウムに対して25%の関税を課すと発表。これに対し、インド政府は4月、米国の関税を「セーフガード(緊急輸入制限)措置」あるいは貿易制限と見なし、米政府に協議を求めた。世界貿易機関(WTO)の通知で分かった。
別のWTO通知によれば、米国はこの要請を退け、今回の関税は国家安全保障上の懸念に基づくものであり、セーフガード措置には該当しないと反論している。
インドが今週、反撃に出た理由は明らかではない。ただ、この動きは、米国が中国製品に対する関税を大幅に引き下げることで合意した数時間後に起きた。この米中合意はトランプ氏に対して強硬姿勢を貫いた中国の習近平国家主席の戦略的勝利と受け止められている。
ダール氏は「米国が中国との合意に応じたということは、インドもより強く自己主張しなければならないということだ」とし、インドは「自らの力を示す必要がある」と語った。
インドのゴヤル商工相は17日から20日まで米国を訪れ通商協議を行うが、インドが強いスタンスを維持するかどうかが注目されている。政府関係者によると、インド政府が計画している米国製品への関税は今後の協議に盛り込まれる見込み。
トランプ氏は13日、「貿易を大いに活用して」インドとパキスタンの間の対立を解消したと再び主張。これは、ゴヤル氏の訪米にも影を落としそうだ。インド政府はこの数時間前、停戦協議に貿易の話題は含まれていなかったと明確にしている。
トランプ氏は「一線を越えた。後手に回ったままでは、米国と交渉はできない」とダール氏は話している。
原題:India Signals Tougher US Trade Stance as China’s Tactic Pays Off (抜粋)