ウクライナ「安全の保証」に暗雲、ロシアが関与要求-認識のズレ露呈
和平実現に向けたウクライナの「安全の保証」を巡る協議が早くも難航している。
米国、ウクライナ、欧州諸国はホワイトハウスで18日に行われた首脳らによる拡大会合を受けて、安全の保証に関する詰めの協議に入った。15日に米アラスカ州で行われた米ロ首脳会談で、プーチン大統領が北大西洋条約機構(NATO)の集団的自衛権(第5条)に類似した安全の保証をウクライナに提供することを容認したと米国側が説明し、実現に向けて機運が高まっていた。
だが、ロシア側はトランプ米大統領との首脳会談で、プーチン氏がこれに同意したのか公式に確認していない。同国のラブロフ外相は20日の記者会見で、ウクライナへの安全の保証について「ロシアの意見が反映されるべきだ」と主張。ロシア抜きでは成立しないとした上で、中国が関与する可能性に言及した。
これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は、保証を提供する国に中国を加えることに即座に反発。「ウクライナを助けず、本当に助けが必要だった時に助けてくれなかった国の保証は必要ない」と一蹴した。
ラブロフ氏は21日にもロシア側の要求を改めて主張。ロシアは2022年の侵攻直後にイスタンブールで行われた協議で、ウクライナが提案した安全保証の構想を支持していたと述べた。同構想では、国連安全保障理事会の常任理事国である米国、ロシア、中国、英国、フランスの5カ国が保証国として関与する内容だとしている。
ロシアは当時、ウクライナが攻撃を受けた場合に、同国が支援を受けられないよう、ロシアや中国を含む保証国に事実上の拒否権を与えるような枠組みを目指していたため、ウクライナ側が拒否していた経緯がある。
ラブロフ氏はその上で、ロシアが関与しない一方的な取り組みは「当然ながら全く無意味な試み」と語った。
ラブロフ氏の発言について、欧州では交渉の引き延ばしを狙ったもので、プーチン氏が合意に応じる意思があるのかは疑わしいと受け止められている。複数の高官や外交関係者が匿名を条件に明らかにした。トランプ氏は戦争終結に向けた次の段階として、プーチン氏とゼレンスキー氏による直接会談の実現を目指している。
ゼレンスキー氏はプーチン氏との直接会談に応じる意向を改めて示したが、モスクワでの開催は否定。「欧州の中立国」での会談が望ましいと述べた。具体的にはスイス、オーストリア、トルコを候補地として挙げた。
これに対し、ラブロフ氏は21日、「最高レベルで協議すべき全ての問題が十分に対処された段階で、プーチン大統領はゼレンスキー氏との会談に応じる用意がある」と述べ、早期実施の可能性が低いことを示唆した。
ここにきて認識のズレが鮮明になっていることで、アラスカ州での米ロ首脳会談でプーチン氏が米側が主張している通り何らかの譲歩を行ったのか、それともウクライナへの安全の保証提供に関するプーチン氏の立場を米代表団が読み間違えたのかという疑問が生じる。
ウィトコフ中東担当特使の報道官はコメントを控えた。同氏は第5条に類似した安全の保証提供にロシアが合意したと初めて明らかにした人物で、プーチン氏の譲歩を「ゲームチェンジャー(情勢を一変させるもの)」だと評価していた。同氏の発言を受けて、米国は初めて戦争終結後のウクライナの安全の保証への関与を確約した。
ウクライナおよび欧州主要国の首脳がトランプ大統領とホワイトハウスで安全の保証について協議していた18日、ロシア外務省のザハロワ報道官は「われわれはNATO加盟国による軍事部隊をウクライナに派遣するいかなるシナリオも断固として拒否する立場を再表明する」と主張した。
原題:Doubts Grow on Ukraine Security Package as Russia Demands a Role(抜粋)