AIは10代の脳を再構築している…オックスフォード大学の研究で明らかに(海外)(BUSINESS INSIDER JAPAN)
イギリスの10代の多くは、授業でAIへの依存を深めている一方で、AIが提供する情報の真偽を見極めるのが難しいと感じている。AIの活用によって学習速度は上がっているものの、思考の深みが失われつつあることが、オックスフォード大学の研究者による調査で示された。その調査では、回答者の10人中6人はAIが他の能力に悪影響を及ぼしていると答え、4人に1人は学習が「簡単になりすぎた」と答えている。 AI(人工知能)は、若い世代の「学び方」だけでなく、「考え方」そのものも変えつつある。オックスフォード大学の研究者がそう指摘している。 【全画像をみる】AIは10代の脳を再構築している…オックスフォード大学の研究で明らかに 2025年8月にイギリスの13〜18歳の生徒2000人を対象に実施された調査の報告書が、オックスフォード大学出版局から発表された。それによると、回答者の10人中8人が学校の課題でAIツールを使用しており、ほぼ同数が宿題でもAIを利用していることが分かった。 多くの生徒は、これらのツールによって「より速く考えられる」「難しい問題を解けるようになった」と感じていると答えた。しかし専門家は、こうした思考の流暢さには代償が伴う可能性があると懸念している。 報告書の共著者で、欧州教育神経科学ハブ(Educational Neuroscience Hub Europe)の責任者を務めるエリカ・ガレア(Erika Galea)は、「現代の生徒たちは、機械とともに考え始めている。思考を処理する流暢さや速度は身につけつつあるが、一方で、立ち止まって考え、自ら問いを立て、独自の考え方を育むことで得られる『深み』を失うこともある」と述べている。 「これから直面する真の課題は、技術を習得することではなく、『人工的認知』やAIの時代において、人間の思考の深みを守ることにある」 「AIネイティブ世代」、いわゆるアルゴリズムとともに学び、育ってきた10代の間では、新たな思考様式が現れており、それが、オックスフォード大学の研究者が言う「人工的認知(synthetic cognition)」に反映されている。 調査によると、生徒の9割以上はAIによって少なくとも1つの学習スキルを伸ばせたと答えた一方で、10人中6人はAIが他の能力に悪影響を及ぼしていると答えており、4人に1人は学習が「簡単になりすぎた」と感じ、10人に1人は創造力が制限され、批判的思考の必要性をあまり感じなくなったと答えた。 ある13歳の男子生徒は、「もはやAIに依存している」と語り、教師たちも同様の懸念を抱いている。 調査によると、生徒の3人に1人は、教師が授業でAIを使う際に自信なさそうにしていると感じており、51%はAIを適切に使用するために、学校からきちんとした指導を受けたいと考えている。 教育制度はAIとともに学ぶ形へと進化させる必要があるが、生徒にAIのように考えさせてはいけないと、研究者らは主張している。
Thibault Spirlet