パウエル議長に難題、景気不安緩和と必要なら行動する用意の意思伝達
米連邦公開市場委員会(FOMC)の定例会合が18、19両日に開かれ、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長は投資家に対し、経済は引き続き堅調だと安心を呼び掛ける一方で、金融当局として必要に応じて行動する用意があると伝える難しい綱渡りを強いられる見通しだ。
パウエル議長は米経済の底堅さを強調しているものの、トランプ大統領が貿易戦争を急速にエスカレートさせて懸念が広がり、米株価はこの1カ月に急落した。景気見通しを巡る不安の高まりに債券利回りも低下し、消費者心理は悪化している。
みずほセキュリティーズのマクロ戦略責任者、ドミニク・コンスタム氏は「パウエル氏は、市場を注視しているという何らかのシグナルを発する必要がある」と指摘。パウエル議長は金融当局として株式市場をターゲットにしていない点を明確にする可能性があるが、当局者は最近の株価下落を無視できないとコンスタム氏は述べた。
Markets see at least two quarter-point reductions by the December meeting
Source: Bloomberg
今週のFOMC会合では、金利据え置きが広く予想されている。ただトレーダーは、6月を皮切りに年内3回の利下げが行われる可能性が高いと予想。一方、エコノミストは総じて2回の利下げを予想し、19日に公表される当局者の金利予測分布図(ドット・プロット)でも、年内2回の利下げ見通しが示されるとみられている。
当局者が引き続き年内2回のみの利下げを示唆する場合、労働市場が悪化すれば政策金利を調整する用意があると、パウエル議長が強調することが一層重要になると一部の投資家は話す。
マールボロ・インベストメント・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ジェームズ・エイシー氏は「連邦準備制度が事態を少し良くするか、少し悪くする可能性が考えられるが、市場心理悪化の主因はホワイトハウス発のため、市場を完全に落ち着かせることはできないのは明らかだ」と語った。
トランプ政権は米国の主要貿易相手国・地域に対する関税の脅しをエスカレートさせたりたびたび変更したりする一方で、リセッション(景気後退)リスクを巡る懸念の緩和にはあまり努めていない。トランプ氏は9日、米経済は「過渡期」にあると発言。ベッセント財務長官は米国と市場は「デトックス」を必要としているとの考えを示した。
市場の反応
米金融政策に最も敏感に反応する2年債利回りは1月半ばのピークから約0.6ポイント低下し、今月には3.83%と5カ月強ぶりの低水準となった。S&P500種株価指数は14日に反発したものの、前日には直近高値からの下落率が調整局面入りの目安である10%に達していた。また、恐怖指数として知られるシカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)は先週、昨年8月以来の高水準を記録した。
19日にはFOMC参加者による四半期経済予測が発表され、トランプ氏の政策が経済に及ぼす影響について当局者がどの程度と想定しているか、手掛かりが得られることになりそうだ。最新予測では、今年の経済成長率見通しがやや下方修正され、食品とエネルギーを除くコアインフレ率予想は上方修正されると見込まれている。
しかしパウエル議長は、重要な警告を発しないままで、景気低迷の兆候が見られたら直ちに行動すると投資家に保証することは控える公算が大きい。その警告とは、インフレ率が持続的に2%目標に向かっており、インフレ期待が引き続き安定しているという証拠を確認する必要があるというものだ。
ウェルズ・ファーゴのシニアエコノミスト、サラ・ハウス氏は「状況はなお持ちこたえており、インフレ高止まりと著しい景気減速のどちらにも政策は対応できる良い位置にあるというメッセージが聞かれるだろう」とコメント。最大限の雇用と物価安定という米金融当局の二つの責務に関し、「私が現在聞きたいのは、二つの責務の評価に関する一段と明確な説明だ」と語った。
原題:Powell Faces Balancing Act Between Markets and Wait-and-See Mode(抜粋)