四季から二季に 「異常気象がニューノーマル」気象学者が鳴らす警鐘

異常気象を専門とする三重大大学院の立花義裕教授=津市の三重大で2025年8月8日午後6時2分、田中韻撮影

 記録的猛暑や強烈な寒波、災害級の豪雨にドカ雪――。多発する異常気象は食料供給の不安定化や生態系の破壊、健康被害などを引き起こしている。40年以上にわたって気候問題を研究する三重大大学院の立花義裕教授は、二酸化炭素(CO2)をはじめとする温室効果ガスの排出量増加による温暖化が原因と指摘。「異常気象がニューノーマル(新たな常態)な世界になる」と警鐘を鳴らしている。必要な対策や予測される未来について聞いた。【聞き手・田中韻】

 ――気象災害が激化していることをどう見ていますか。

 ◆別次元の世界、アナザーワールドの入り口に来ていると考えています。

 2024年は世界の平均気温が観測史上最も高くなりました。国際社会は気温上昇を産業革命前の水準から1・5度以内にとどめる目標を掲げています。

 しかし、24年に初めて上回りました。国連のグテレス事務総長は最近の気候について「人類は地獄の門を開けてしまった」と述べました。その通りで一刻の猶予も許されない状況にあります。

日本は「四季」から「二季」に?

 ――日本にはどのような影響がありますか。

 ◆これからの夏は気温が40度を超えるのが当たり前となり、春と秋がなくなって「四季」から「二季」になってしまうでしょう。日本は世界で最も異常気象が発生する国です。日本人は気候変動に敏感でなければいけません。

 ――なぜ日本で異常気象が多く発生するのですか。

 ◆原因の一つが、偏西風の蛇行です。

 偏西風とは、日本やアメリカなど中緯度上空を西から東に向かって吹く風です。南北に波打つように流れるのですが、温暖化によって上空の気圧が変化し、流れる幅が大きくなって蛇行します。

 偏西風の北側に寒気が、南側に暖気がいつまでも流れ込み、暑いところは更に暑く、寒いところは更に寒くなる「ブロッキング現象」が起こります。日本の周辺はこの偏西風の蛇行の起点になりやすく、異常気象の発生源となっているのです。

 ――他には何が原因となっていますか。

 ◆温暖化による海面水温の急上昇も異常気象を招いています。

 日本近海の海面水温は世界でも高く、「海洋熱波」と呼ばれる異常な高温状態が続いています。水温はいったん上がると冷めにくく、高温によって大量に発生した水蒸気は雲のパワーを増強させて豪雨をもたらします。

 異常気象は、このようにさまざまな現象が互いに影響を与え、連鎖して起こるのですが、その背景にあるのが温暖化です。

関連記事: