韓国、大統領代行予定の財政相が直前に辞任-政治危機が再び深刻化
韓国で大統領権限を代行する予定だった崔相穆経済副首相兼企画財政相が、その直前に辞任した。代行を務めるようになるまで2時間を切っていた中での衝撃的な辞任で、同国の政治危機は再び深まった。
韓国では1日、これまで大統領権限を代行してきた韓悳洙首相が辞任。崔氏は韓氏からこの役割を引き継ぐことになっていた。
だが、最大野党「共に民主党」は崔氏に対する弾劾訴追案を国会に提出、この手続きが進む中で崔氏の辞任が受理されたと国会議長が明らかにした。
崔氏は企画財政省を通じ、「国内外の経済状況が深刻な中で、責務を果たし続けることができなくなった。国民に申し訳なく思う」と辞任について説明した。
崔氏の辞任は、政治危機が続く韓国で新たな展開だ。韓首相の辞任を受け、大統領権限の代行は2日午前0時に崔氏に移ることになっていた。韓氏は6月3日に予定される大統領選挙への出馬準備のため辞任したとみられている。
韓国では昨年12月、尹錫悦前大統領が「非常戒厳」を宣布して以来、政治の混乱が続いている。この措置が失敗に終わった尹氏は国会の弾劾を経て4月に失職し、大統領権限の代行は今や李周浩・社会副首相兼教育相に回る。
崔氏辞任を受け、韓国株の動きに連動する米国の上場投資信託(ETF)として最大のiシェアーズMSCI韓国ETF(ティッカー:EWY)は上げを消し、一時1%安に沈んだ。ウォンは対ドルで下げを拡大し、1%安の1438.65ウォンまで売られた。
政府の最高責任者の頻繁な交代は、米国との交渉で韓国を弱い立場に追い込む恐れもある。韓国経済は1-3月(第1四半期)に縮小し、1日発表された統計で4月の対米輸出が既に前年比6.8%減少したことが明らかになっただけに、交渉の重要性は増している。
韓国政府はこれまでに、大統領選挙前の対米交渉妥結を見込まず、「急がずに」交渉を続けていく姿勢を打ち出している。産業通商資源副大臣は、政治的な不確実性による難しさを強調し、大統領選挙前の交渉完了は「理論的に不可能」と述べていた。
混乱に輪をかけるように、この日は次期大統領選で優位に立つ野党大統領候補の李在明氏に対し、最高裁が2審判決の無罪を破棄し、高裁に差し戻した。同氏は公職選挙法違反に問われている。高裁が選挙前に懲役刑または100万ウォン(約10万円)を超える罰金を科す判決を言い渡す場合、李氏は事実上、立候補資格を失う。
関連記事:韓国最高裁、野党大統領候補の無罪判決を破棄-首相と財政相辞任 (4)
原題:South Korea’s Finance Minister Quits as Political Crisis Deepens(抜粋)