「オンラインカジノアプリ」が大流行しかねない アップルが修正求める「スマホ新法」

スマホのOSやアプリストアなどを手掛ける、大手プラットフォーマーに対して特定の禁止事項などを設ける「スマホ新法」が、2025年末に全面的に施行される。アップルが提出したパブリックコメントを入手した。 【もっと写真を見る】

 今年上半期で話題になった言葉と言えば「オンラインカジノ」ではないだろうか。芸能人がスポーツ選手がオンラインカジノで賭けをしていたことで摘発されたり、活動自粛に追い込まれた。    オンラインカジノによる違法賭博の規制を強化しようと、改正ギャンブル等依存症対策基本法が6月18日に参院本会議で賛成多数で可決、成立した。    与野党で手を取り「オンラインカジノから国民を守る」とスピード感のある協議が進んだようだ。    ただ、一方で、今後、日本国内で「オンラインカジノアプリ」が大流行しかねない法律が施行されようとしている。    スマホのOSやアプリストアなどを手掛ける、大手プラットフォーマーに対して特定の禁止事項などを設ける「スマホソフトウェア競争促進法(通称:スマホ新法)」が、2025年末に全面的に施行されるのだ。    実は6月13日までに改正案に対してのパブリックコメントが募集された。そんななか、公正取引委員会によるスマホ新法に懸念の意見を表明したのが、大手プラットフォーマーとして矢面に立たされている、アップルだ。今回、アップルが提出したパブリックコメントを入手した。   「スマホ新法」でAppStoreが開放へ    スマホ新法では、現在、アップル「AppStore」からしか入手できないiPhone向けのアプリを別のところからもダウンロードできるようにすべきとしている。複数のアプリストアができることで、手数料の値下げ競争が起き、安価にアプリを購入できると公正取引委員会は考えているようだ。    実はこのような法律はすでに欧州でも導入されている。しかし、実際、欧州では新しいアプリストアができたものの、ポルノ動画を視聴できるアプリが登場するなど、青少年にふさわしくないアプリが配信されてしまったのだ。    実は、アップルの「AppStore」では世界で500名を超える専門家が毎週、15万以上のアプリを審査。ポルノやギャンブルなどの有害な活動を助長する不正アプリを落とすように設計されている。実際、昨年だけでも安全性のリスクが懸念される11万6105件のアプリを世界で却下している。    もし、新しいアプリストアができた場合、アップルの管理が及ばず、日本のユーザーがポルノやギャンブルのアプリを入手できる環境ができてしまう恐れがある。    そのため、アップルは公正取引委員会に対して、新しいアプリストアがユーザーのプライバシーを守り、安全性があり、セキュリティリスクがないかを確実にするために基準を明確にすることを求めている。そうでなければ、アップルはiPhoneユーザーを守れないというわけだ。   場合によっては新機能提供を遅らせる措置も    スマホ新法ではもうひとつ「iOSの機能開放」をアップルに求めている。    Bluetoothでの接続やAirPlay、ミラーリングやメッセージ、CarPlayなどの機能を他のメーカーやアプリベンダーにもっと開放し、アップルと同等もしくはそれ以上に活用できるようにすべきというのだ。    これにより、これまでアップルとは関係のなかったメーカーやスタートアップに商機が訪れるという。    ただ、これに対してアップルは「適切な保護措置を講じずにユーザーの端末の一部へのアクセスをサードパーティに認めると悪意のあるものがユーザーの個人情報を盗んだり、暴露したりする可能性がある」と警鐘を鳴らす。    世界的にコロナウィルスが流行った際、アップルでは「感染者への追跡アプリ」を提供した事があった。仮にこのような機能がサードパーティに開放され、さらにFacebookなどのSNSと連係した場合、Facebookがユーザーのメッセージや音声通話をすべてチェックし、さらに個人情報と紐付け、街中を歩くと「女子大に通う20歳以下と出会えるアプリ」なんてものも作れてしまいかねない。    スマホ新法はスタートアップのためにルール作りをしているように見えるが、実際はアップルとしては、他の競合プラットフォーマーや大手のSNS事業者などが、iPhoneの機能にただ乗りして新たなサービスを提供しかねないとみているようだ。    アップルとしては、機能を開放することで、ユーザーの個人情報が悪用され、プライバシーが流出する可能性が出てきた場合には、日本市場で新機能の提供を遅らせるなどの措置をとることもあるようだ。    実際、アップルは欧州においては、規制があったため、Apple Intelligenceの導入を遅らせている。まさに欧州と同じことが日本でも起きかねないのだ。   公取委の指針案に不信感募らせるアップル    指針案では「望ましい」とか「望ましい取組」など曖昧な表現が目立っており、アップルでは「法的拘束力を有しないことが明確になっていない」として削除を求めている。    公取委としてはあえてぼやかした表現にすることで、アップルがルールを犯しやすいようなトラップをかけている感があり、アップルとしてはかなり不信感を募らせているようだ。    いずれにしてもスマホ新法は今年12月に施行される。ただ、施行されたことで、ユーザーのプライバシーが脅かされることのないよう、条文には曖昧な言葉は使わず、明確なルールに、いまから修正してもらいたいものだ。     筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)    スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)『未来IT図解 これからの5Gビジネス』(MdN)など、著書多数。   文● 石川温

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