購入量減でも「スイカ離れ」ではない? 夏の風物詩、変わる消費の形
店頭に並ぶ6分の1にカットされたスイカ=東京都練馬区のスーパー「アキダイ関町本店」で2025年6月24日午後4時57分、隈元悠太撮影
スイカの季節がやってきた。
かつては大玉1個を買ってきて豪快にカットしたり、小さく切ったものを大皿にたくさん並べたりするのが定番だったが、最近は食べる量が少なくなった家庭も多いようだ。
最近の「スイカ事情」を探った。
デザートの多様化
最初に押さえておきたいのは、果物全体の消費量が年々減っているという点だ。
総務省の家計調査によると、2人以上の世帯が年間に購入する生鮮果物は2001年が平均103・2キロだったのに対し、23年は64・6キロと6割程度に減った。
ただでさえデザートが多様化する中、果物は日持ちしないものが多く、皮をむくのが面倒といった理由もあって敬遠されやすい。
農林水産省の担当者は「お菓子やデザートがコンビニですぐに買える時代。果物が後回しにされるのは現代の消費スタイルを踏まえれば自然な流れとも言えます」と語る。
大玉は食べきれない
一方で、2人以上の世帯が年間に購入するスイカは01年の平均6・8キロから23年は2・9キロと半数以下になり、生鮮果物全体より減少幅が大きくなっている。
では、夏の間に全く食べない「スイカ離れ」が起きているのかというと、そうでもないという。
「『家族の人数が減って、大玉は食べきれないし冷蔵庫にも入らない』といった声をよく聞きます。最近は大玉を丸ごと買うより、カットスイカや小玉スイカを買うのが主流になっているのです」
そう語るのは、東京都中央卸売市場・大田市場で果物を扱う「東京青果」の担当者だ。
農水省の担当者も「スイカそのものが食べられなくなったというよりは、核家族化や単身世帯の増加といった社会構造の変化により、1世帯あたりの消費量が相対的に減少しているものと考えられます」と説明する。
最近はカットスイカが6割
東京都練馬区のスーパー「アキダイ関町本店」を訪ねると、確かにカットスイカや小玉スイカを手に取る客の姿が目立った。
買い物かごを手にした主婦(67)は「昔は子どもが4人いて、大玉スイカでも1回の食事で食べきりました。今は夫と2人だから、小玉を2回に分けて食べるくらいです」と話す。
店を運営する「アキダイ」の秋葉弘道社長も「少量を買い求める人はここ5年ほどでさらに増え、最近では販売量の6割がカットスイカ、3割が小玉、1割が大玉です」と内訳を明らかにする。
実際、民間調査会社「インテージ」によると、全国のスーパーで22年に販売されたカットスイカは推計275億5000万円で、13年の2・2倍に増えた。
秋葉社長は語る。「気温が高くなると食欲がなくなります。そんなときに食べるスイカはおいしい。消費の形が変わっても、スイカが夏の風物詩であることに変わりはないのではないでしょうか」【隈元悠太】