アングル:金相場、3000ドルの大台が再び視野に 逃避買いで最高値更新

 1月31日、金は地政学的な先行き不透明感やトランプ米大統領の関税による世界的な成長鈍化への懸念から資金の安全な逃避先として買いを集めて過去最高値を更新し、1オンス=3000ドルの大台が再び視野に入った。インド・コルカタで2024年10月撮影(2025年 ロイター/Sahiba Chawdhary)

[31日 ロイター] - 金は地政学的な先行き不透明感やトランプ米大統領の関税による世界的な成長鈍化への懸念から資金の安全な逃避先として買いを集めて過去最高値を更新し、1オンス=3000ドルの大台が再び視野に入った。

金現物価格は30日、1オンス=2798.40ドルの史上最高値を記録。昨年は2010年以降で最も堅調な動きだったが、今年も好調なスタートを切った。

Gold record and dollar

ブルー・ライン・フューチャーズのチーフマーケットストラテジスト、フィリップ・ストライブル氏は「現政権が目指す政策や関税によって(経済の)成長がある程度鈍るのではないかとの懸念がある。高インフレ、低成長という状況ではスタグフレーションが経済の主要テーマになる。そうした環境では金(への投資)が非常にうまく機能する傾向がある」と話した。

トランプ氏の関税計画は、インフレ圧力を高め、貿易戦争を引き起こす可能性があるとの見方が広がっている。このため伝統的にインフレや地政学的リスクに対するヘッジ手段とされる金は安全資産としての需要が高まっている。

RJOフューチャーズのシニアマーケットストラテジスト、ボブ・ハーバーコーン氏は「金は第1・四半期中に2900ドルを目指すのではないか。この水準を突破すれば新たな価格帯が形成されるだろう」と予想。「最終的には年内に3000ドルを超えるかもしれない」と述べた。

<先物にプレミアム>

米国の関税計画を巡る懸念が広がる中、米市場で金はこの数ヶ月、先物が現物に対してプレミアムの乗った水準で取引されており、30日には両者の価格差が再び拡大した。

関税への懸念を映す形で昨年11月下旬以降、主にロンドン、スイス、その他の主要な金取引拠点から1290万オンスの金がニューヨーク商品取引所(COMEX)の指定倉庫に納入され、在庫は73.5%増の3040万オンスと2022年7月以来の水準に達した。

ロンドン地金市場協会(LBMA)は30日、「状況を監視し、CMEグループや米当局と連携を取っている」と発表。「ロンドン金市場の在庫および流動性は依然として高い水準にあり、1月初旬以降の1日当たりの取引量は平均4710万オンスだ」と説明した。

<金価格と米利上げ見通し>

金は昨年、米連邦準備理事会(FRB)の連続利下げ、安全資産としての需要、中央銀行の旺盛な買いを背景に、繰り返し史上最高値を更新した。

FRBは1月の連邦公開市場委員会(FOMC)で予想通り政策金利を据え置いた。据え置きは昨年9月に金融緩和に乗り出して以来初めて。

金は利回りを生まない資産であるため、低金利環境で価格が上昇しやすい。

Fed rate cut probabilities

一方、中銀による金の購入では、中国人民銀行(中央銀行)が主な牽引役となっており、人民銀は金相場が上昇しているにもかかわらず過去1年間にわたり金準備を積み増し続けている。アナリストは人民銀のこうした動きについて準備資産の多様化を図る幅広い戦略によるものだと見ている。

アナリストによると、人民銀の継続的な金購入が今後数カ月間にわたり金価格をさらに押し上げる可能性がある。

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