【日本市況】TOPIX6日続伸、米自動車関税の負担軽減好感-円安
30日の日本市場では東証株価指数(TOPIX)が6営業日続伸。トランプ米大統領が自動車業界への関税負担を軽減する大統領令に署名し、買い安心感が広がった。円は1ドル=142円台後半に下落、債券は先物が小幅に上昇した。
トランプ大統領は29日、大統領令で「同一品目に対して複数の関税が適用される場合、関税の累積的な影響(すなわち重複)を避けるべきだと判断した」と説明した。別の布告によると、5月3日から賦課予定の自動車部品に対する25%の関税についても変更が加えられた。米国内で完成車を生産・販売する自動車メーカーは、車両価値の最大3.75%に相当する控除を申請可能とされた。
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また、ベッセント米財務長官は29日の記者会見で、貿易交渉を巡りインドとの取引成立が近づき、日本とも実質的な協議を進めていると述べた。米国が2日に上乗せ関税を発表した後、関税が世界経済に与える影響が警戒されて株式が大きく売られるなど世界の金融市場はリスクオフの様相を呈していたが、米政権が軌道修正に動き不安が和らいでいる。
T&Dアセットマネジメントの酒井祐輔シニア・トレーダーは、トランプ関税の修正で「マーケットの懸念度合いは赤信号から赤信号点滅に変わった」と指摘、いったん進んでもいいと話した。
国内株式・為替・債券相場の動き-午後3時30分時点- 東証株価指数(TOPIX)の終値は前営業日比0.6%高の2667.29
- 日経平均株価は0.6%高の3万6045円38銭
- 円相場は対ドルでニューヨーク終値比0.2%安の142円59銭
- 長期国債先物6月物の終値は前営業日比2銭高の140円65銭
- 新発10年債利回りは横ばいの1.31%-午後3時時点
株式
株式は小幅続伸。トランプ大統領が4月初めに発表した関税による下落分を取り戻し、TOPIXと日経平均は2025年初の月間上昇を記録した。
最近の急落で割安になった銀行や保険、医薬品株が買われ、電機も上昇。半導体子会社の株式上場を前提としたスピンオフ(分離・独立)を検討していることが明らかになったソニーグループがTOPIXの上昇に最も寄与した。一方、商船三井の業績見通しが市場予想を大きく下回ったため、米関税が海運業界に与える影響が懸念され、TOPIXの業種別指数で海運が下落率1位となった。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大西耕平上席投資戦略研究員は、トランプ政権への警戒感が薄れて4月中盤から薄商いの中での買い戻しが相場を支えたと指摘。ただ、不透明感は続くためここから上がる説明が難しいとの見方を示した。月間下落率が大きかった銀行株は、日本銀行の金融政策正常化の方向性が変わるとは考えにくく、金融政策決定会合後に買い戻しの動きが出る可能性があると話した。
為替
円相場は1ドル=142円台後半で推移。米景気後退懸念を背景としたドル売りの流れが一服したほか、月末で輸入企業など国内実需勢の円売り・ドル買いが入ったとの見方があった。
関西みらい銀行の石田武ストラテジストは、月末で連休前のため需給的な要因があると指摘。また、米上乗せ関税が90日間停止された後にさらなるネガティブな材料が出ておらず、ドルは下値が確認されたとして買い戻しが入りやすくなってくるとみる。
あおぞら銀行の諸我晃チーフマーケットストラテジストは、ドルは午前10時前の仲値に向けて買いが入ったもようだが上昇は一時的だったとし、経済統計の悪化による米金利低下を受けて「ドルが売られる地合いが続いている」と述べた。
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債券
債券は中期債や先物が小幅上昇。米国の長期金利が3週間ぶりの水準まで低下したことを受けて買いが優勢だった。ただ、日銀決定会合や2回目の日米関税交渉を前に買い手は慎重で、先物は下落に転じる場面があった。
SBI証券の道家映二チーフ債券ストラテジストは、春以降の米国経済は下向きとみているほか、米国債の発行減額もあり得るとして「米長期金利はまだ低下余地がある」と言う。一方、日銀会合の結果発表をあすに控えて「積極的にポジションを取る雰囲気は乏しい」と指摘した。
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三菱UFJモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは、日銀会合は現状維持が見込まれる一方、利上げ継続姿勢は変わらないとみられ、「植田和男総裁の会見トーンを確認したい」と述べた。2日の米上乗せ関税発表以降、超長期債相場が弱く「10年債にも波及している面がある」との見方を示した。
新発国債利回り(午後3時時点)
2年債 5年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.670% 0.880% 1.310% 2.195% 2.700% 不成立 前営業日比 -1.0bp -1.0bp 横ばい -1.0bp +0.5bp -この記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。