米下院共和党、10年で4兆ドル強の減税案公表-トランプ氏の公約優先
米下院歳入委員会は12日、州・地方税(SALT)控除の上限引き上げや、トランプ大統領が公約した税制措置の一部を盛り込んだ包括的税制法案のテキストを公表した。成立すれば共和党の看板政策となる見込みだ。超富裕層への増税は見送られた。
税制法案の公表は下院が月内の本会議採決に向けて動いていることを示している。13日には歳入委での審議開始が予定されている。法案は10年間で4兆ドル(約594兆円)余りの減税と、少なくとも1兆5000億ドルの歳出削減を掲げる。
この削減規模では減税をカバーすることができず、財政赤字が膨らむ公算が大きいが、共和党は関税が赤字穴埋めの主要な財源の一つになると指摘している。
トランプ政権1期目の2017年の税制改革で導入した個人の最高税率37%を恒久化する内容となっている。共和党内では、超富裕層への増税を巡り数週間にわたり議論が続いていたが、最終的に盛り込まれなかった。
トランプ氏は先週、ジョンソン下院議長に対し、年間課税所得250万ドル以上の個人を対象に新たな税率区分を設けて39.6%の税率を課すよう促していた。
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トランプ氏が「大きく美しい一つの法案」と呼ぶこの税制法案は、同氏の立法課題の中核を成す。政権1期目に導入され、年末で期限切れを迎える多数の減税措置を延長する。ただ、共和党は下院で辛うじて過半数議席を占めており、法案可決には党内のほぼ全員の支持が必要となる。
法案には、連邦債務の法定上限を4兆ドル引き上げる措置も盛り込まれた。これは、上院が目指す5兆ドルを下回る。議員らは債務上限引き上げに関する次の採決を26年の中間選挙以降に先送りしたいと考えている。
法案には、28年までのチップと残業代への課税撤廃も盛り込まれた。下院歳入委のスミス委員長は、トランプ氏の公約であるこれらの課税撤廃の実現に取り組むと述べていた。さらに、米国製乗用車の購入者に限り、自動車ローン金利を控除対象とするほか、高齢者向けの社会保障給付について通常の標準的控除に4000ドルを上積みする。
調整が最も難航している課題の一つがSALT控除の上限引き上げだ。法案は個人と夫婦合算申告者の控除上限を現行の1万ドルから3万ドルに引き上げ、対象は個人が年収20万ドルまで、夫婦合算申告者が40万ドルまでとしている。しかし高税率州を地盤とする一部議員は夫婦合算申告者の控除上限を最大12万4000ドルまで引き上げるよう求めており、議論は決着していない。
一方で、増税の対象となるのは私立大学だ。大学基金の投資収益への税率は現行の1.4%から最大21%にまで引き上げられる可能性がある。
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ジョンソン議長は12日、下院が税制法案を5月26日のメモリアルデー(戦没将兵追悼記念日)までに可決できる見通しだと記者団に語った。可決後は上院に送られ、そこで大幅な修正が加えられる可能性がある。
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原題:GOP Tax Bill Prioritizes Trump Campaign Vows, Increases SALT (1)、House Tax Bill Calls for $30,000 SALT, Omits Millionaire Tax (1)(抜粋)