高田日銀委員、前向き企業行動持続なら利上げ-足元はいったん休止
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- 目標実現「目前に迫りつつある局面」、物価にホームメード化の兆し
- 米関税が目標実現モメンタムに水差さないか注視、為替変動リスクも
日本銀行の高田創審議委員は3日、米関税政策などを巡る不確実性を踏まえ、金融政策運営は足元は様子見とした上で、前向きな企業行動が持続すれば利上げを続けていくとの見解を示した。三重県金融経済懇談会で講演した。
高田氏は金融政策運営について、堅調な設備投資や賃上げ、価格転嫁の継続など前向きな企業行動の持続性が確認されていけば、その都度「金融緩和度合いのさらなる調整を進めることが引き続き必要だ」と主張。米関税政策の影響で、足元は「利上げのいったん休止局面」にあるが、様子見後に緩和調整を続けていく状況とした。
人手不足を背景に企業の賃金・価格設定行動は積極化しており、2%の物価安定目標の実現が「目前に迫りつつある局面」とし、このシナリオは「4月に公表された相互関税後も大筋では変わらない」と言明。物価面も予想物価上昇率の着実な底上げとともに、国内のインフレ圧力によって「いよいよホームメード化する兆しが生じている」と語った。
日銀は6月17日の金融政策決定会合で、金融政策の現状維持を全員一致で決めた。植田和男総裁は記者会見で、米関税の影響が今年後半にも本格化し、基調的な物価上昇率に及ぶ可能性も指摘した。高田氏は政策委員9人の中で利上げに積極的なタカ派と見られており、今回の講演でも利上げに前向きな姿勢を維持した。
米関税の影響に関しては、不確実性の高まりが日本経済を下押しするとし、物価目標実現に向けた「モメンタムに水を差さないか注視したい」と指摘。米国経済の減速が見込まれる中、金融政策のスタンスの違いで「為替を中心とする金融市場に大きな変動が及ぶリスクへの注視も引き続き重要」との認識も示した。
国債買い入れ
6月会合では、国債買い入れの減額について、2026年3月までの現行計画の継続と、26年4月から27年3月までの新たな計画における減額ペースの縮小も決めた。26年4月以降は現行計画の毎四半期4000億円の減額幅を2000億円に半減する。
高田氏は、日銀の国債買い入れ減額によって事実上、市場における国債の量が増加するため、「今次局面は、過去と比べて有数の市中への大量国債供給局面とも考えられる」と説明。国債供給に伴う市場の不安定化の回避が必要と述べるとともに、市場機能度の改善に向けて当局間で十分に意見交換し、市場の安定に努めていく必要もあるとの認識を示した。
他の発言
- 過度な悲観に陥ることを排し、自由度を高めた柔軟な金融政策運営が求められる
- 企業や家計の行動が過度に悲観に振れないよう、緩和的な金融環境継続でサポート
- 米利下げの可能性は低下傾向にあり、夏場にかけてFRBの動向に注目