「高市総裁」期待の不動産株買いに失速の兆し、日銀利上げ観測根強く
新政権下で日本銀行の利上げが後ずれすることを見込んだ株式市場の「不動産買い・銀行売り」に失速リスクが浮上してきた。自民党総裁選に立候補する高市早苗前経済安全保障担当相の勝利や政策実現の可能性について、市場で冷静に見極める雰囲気が広がりつつある。
石破茂首相が7日に辞意を表明して以降、市場は利上げに批判的な高市氏が後任に就く可能性を急速に織り込んできた。東京証券取引所では銀行業指数が0.3%下落する一方、不動産業指数は2.7%上昇した。利上げが遠のけば銀行収益にはマイナスとなる反面、不動産など有利子負債が多い業界では財務懸念が和らぐためだ。
ただ、ここにきて他の候補者が台頭し、利上げ継続の可能性がなお高いことを投資家に改めて思い起こさせた。高市氏と並び有力視される小泉進次郎農相は、金融政策に介入する姿勢は比較的薄いとみられている。日銀は19日の金融政策決定会合で金利を据え置く見通しで、市場の関心は植田和男総裁が会見で早ければ10月の利上げを示唆するかどうかに集まっている。
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三井住友DSアセットマネジメントの武内荘平シニアファンドマネジャーは、市場で積極財政への期待は弱まっていると話す。次期総裁の有力候補は高市氏と小泉氏だとした上で、旧安倍派議員が議席を失ったことが響き、高市氏は国会議員票で苦戦すると予想している。
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いわゆる「高市トレード」は前回2024年の総裁選時にも見られた。当時は高市氏が「金利を今上げるのはあほやと思う」と発言し、外国為替市場で円安が進んだが、決選投票で石破氏が勝利したことで円高・株安に転じた。
MCPアセット・マネジメントの大塚理恵子ストラテジストも、「高市トレードが続くとは思えない」と話す一人だ。現在自民党が衆参両院で少数与党となっていることから、日銀に利上げを遅らせ、財政を拡張するといった政策が国会や世論にスムーズに受け入れられるか、「去年とは状況が違う」と指摘する。
事情に詳しい複数の関係者によると、日銀は国内政治が不安定な中でも年内利上げの可能性を排除していない。スワップ市場では来年1月までの利上げがほぼ確実視されている。
23年4月の植田総裁の就任以降、銀行株は大幅に上昇しており、不動産を含む他業種への資金シフトが当面続く可能性はある。銀行業指数は足元までに2.4倍になり、東証の全33業種で上昇率はトップクラスだ。
18日に立候補の意向を表明した高市氏は19日に記者会見し、政策を発表する。同氏を含む5人の争いとなる構図が固まった総裁選の告示は22日、投開票は10月4日の予定だ。
インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジストは、足元の不動産株や金融株の動きは「行き過ぎ」だとし、高市氏が公約で日銀への圧力に言及しない場合は「巻き戻しのような動きが当然出てくる」と話した。
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