【日本市況】日経平均800円超安、米関税や円高懸念－長期金利は上昇
７日の日本市場では株式が大幅反落。800円以上下げた日経平均株価は終値で半年ぶりに３万7000円を割り込んだ。米国の関税政策に対する懸念が続く中、日本銀行の追加利上げ観測の高まりで売りが加速した。為替は円が１ドル＝147円台半ばに上昇。債券市場では長期金利が連日で16年ぶりの高水準を更新した。
米政権は対カナダ・メキシコ関税の一部準拠製品について、４月２日まで延期する。政策が定まらない不確実性を嫌気したリスク回避の動きが特に株式市場で顕著となり、人工知能（ＡＩ）関連やゲームを含むエンターテインメント関連などこれまで好パフォーマンスだった銘柄への売り圧力が主要株価指数を押し下げた。
ペッパーストーングループの調査部長であるクリス・ウェストン氏は、トランプ米大統領の政策アジェンダが混乱しており、まだパニックの兆候は見られないが、ファンドや短期筋は株式の持ち高を削減しているとの見方を示した。
日本時間今夜の米雇用統計（２月）の発表を前に、市場では日本株が大きく調整した2024年８月当時の環境に重なるとの警戒感も出ている。リブラ・インベストメンツの佐久間康郎代表取締役は、市場は米景気の後退シナリオを織り込み始めており、欧州発の金利上昇を含め、市場にとって悪循環が起きていると話した。
連合は６日、25年の春季労使交渉（春闘）で労働組合が要求した賃上げ率は平均6.09％と発表。６％を上回るのは32年ぶり。日銀の追加利上げ観測が強まり、長期金利の指標となる10年物国債利回りは連日で16年ぶり高水準を更新した。
国内株式・為替・債券相場の動き- 東証株価指数（ＴＯＰＩＸ）の終値は前日比1.6％安の2708.59
- 日経平均株価は2.2％安の３万6887円17銭
- 円相場は対ドルでニューヨーク終値比0.4％高の147円44銭－午後３時57分現在
- 長期国債先物３月物の終値は前日比14銭高の138円62銭
- 新発10年債利回りは0.5ベーシスポイント（ｂｐ）高い1.52％、一時1.53％と09年６月以来の高水準
株式
東京株式相場は大幅反落。トランプ政権の関税政策や為替の円高、債券利回りの上昇で景気や企業業績の先行き不透明感が広がった。
フィリップ証券の佐々木一洋調査部長は「賃金上昇は日本経済にとって良いニュースだが、10年物国債利回りが1.5％に上昇したのは少し上がり過ぎ」と指摘。賃金が上昇し、企業の利益がいくら改善しても、金利がこれほど上昇すると「日本経済にとっては重荷」と述べた。
業種別では電機や精密機器など輸出関連、米金融株の下落が材料視された保険や銀行株中心に安い。東証33業種は25業種が下落、上昇は８。任天堂が急落し、ソニーグループも売られるなどエンターテインメント株の下げも顕著だった。日本株の相場環境が不安定になる中、世界的なファンドがパフォーマンスの高い一部銘柄から資金を引き揚げているとの見方が出ていた。
為替
東京外国為替市場の円相場は１ドル＝147円台半ばと、約５カ月ぶりの高値圏で推移。春闘の高い賃上げ要求を受け日銀の追加利上げ期待が高まり、円買いが優勢だった。米金利が時間外取引で低下したほか、トランプ政権の関税政策への懸念で日本株が大きく下げたことはリスク回避の円買いも誘った。
ＳＢＩリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長は、トランプ政権の関税政策を懸念したリスク回避の流れの中で「ドルは買いにくい」と指摘。米雇用統計が予想より強めの数字になっても、ドル高・円安には振れにくいとの見方を示した。
オーストラリア・ニュージーランド銀行外国為替・コモディティ営業部の町田広之ディレクターは「春闘の賃上げ要求の高さは海外勢にとってもショックだったようだ」とし、じわじわと円買いが強まっているとの認識だ。株価が大きく下げる中で「クロス円を通じた円高圧力もかかっている」と言う。
加藤勝信財務相は７日の閣議後会見で、為替相場について「昨年12月以降、一方的、また急激な動きも見られる」と発言。投機的な動向も含め為替市場の動向を憂慮しており、「行き過ぎた動きに対し適切な対応を取っていく」とけん制した。
債券
債券相場は超長期債や長期債が下落。長期金利は一時16年ぶりの高水準を更新した。春闘での高水準の賃上げ要求を受け日銀の追加利上げ観測が強まり、売りが優勢だった。半面、先物相場は限月交代に伴う買い戻しで上昇した。
三菱ＵＦＪモルガン・スタンレー証券の大塚崇広シニア債券ストラテジストは春闘の賃上げ要求が高かったほか、来週に第１回回答集計結果の発表があり、「日銀の利上げ観測が相場の地合い悪化につながっている」と分析。超長期債が弱いのは「欧米金利急騰の流れに加え、フラットナー（平たん化）の取引解消の売りも出ている」と見ていた。
一方、先物や２年債など中期債の一部は買われた。三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジストは、今後の国内財政不安はくすぶるものの、昨日の大幅下落で値ごろ感から買い戻しが入ったと言う。相場が不安定化し、投資家からの本格的な買いは期待しにくいが、「水準的な魅力からの買いが入りやすい状況だ」と語った。
新発国債利回り（午後３時時点）
２年債 ５年債 10年債 20年債 30年債 40年債 0.850％ 1.120％ 1.520％ 2.245％ 2.545％ 2.840％ 前日比 変わらず -0.5bp +0.5bp +4.5bp +5.0bp +2.0bpこの記事は一部にブルームバーグ・オートメーションを利用しています。
