NY市長選、劣勢アダムズ氏に復活の機運-予想外のマムダニ氏躍進で
アンドルー・クオモ氏の敗北がエリック・アダムズ氏への追い風になっている。
つい最近まで、ニューヨーク市のアダムズ市長は再選の見通しが極めて厳しかった。汚職容疑で起訴された後、支持率は過去最低を記録。その後トランプ政権が起訴を取り下げたことで、民主党員からの支持はさらに落ち込み、ホワイトハウスとの関係性に疑念の目が向けられていた。
しかし、今回民主党での出馬をあきらめて無所属で再選を狙うアダムズ氏はここにきて、中道寄りの有権者にとって以前ほど敬遠すべき存在ではなくなりつつある。民主社会主義を掲げるゾーラン・マムダニ州議会議員(33)が予想外の躍進を見せたためだ。マムダニ氏は24日行われた民主党予備選でクオモ前ニューヨーク州知事を破り、事実上の民主党候補に躍り出た。
こうした状況を受けてクオモ氏の支持者は、アダムズ氏に乗り換えるべきか検討していると、事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。クオモ氏の支持者は、その多くが富裕層や企業に対する増税を掲げるマムダニ氏のポピュリスト的な政策に反対している。これら支持者はまた、無所属での出馬を検討したクオモ氏に対し、票割れを避けるため選挙戦から撤退するよう促しているという。関係者らは協議が非公開だとして匿名を条件に語った。
アダムズ氏は25日、新たな選挙スローガン「実行力。決して諦めない」を発表。同日夜には献金者や顧問、支持者らとの会合で選挙戦略を練ったと、この会合について知る複数の関係者が明らかにした。
不動産会社ニューマーク・グループの名誉会長でクオモ氏の政治行動委員会(PAC)に寄付したジェフ・グラル氏は「われわれには2つの選択肢がある。マムダニ氏を支持して彼の良い面を理解しようと努めるか、それともエリック(アダムズ氏)の復活を試みるかだ」と発言。自身としては、「間違いなく」マムダニ氏よりもアダムズ氏を支持すると語った。
クオモ氏陣営と同陣営を支援するPACはビル・アックマン氏やダン・ローブ氏、スティーブン・ロス氏、元ニューヨーク市長のマイケル・ブルームバーグ氏といった資産家の支持を受け、合計3000万ドル(約43億2000万円)超の資金を集めていた。ブルームバーグ氏はブルームバーグ・ニュースの親会社ブルームバーグ・エル・ピーの創設者で筆頭株主。
民主党主流派に長く属するクオモ氏は、2021年に複数のセクハラ疑惑の渦中に知事を辞任したものの、混戦となった今回の予備選では急速に有力候補として浮上した。クオモ氏はセクハラ疑惑について否定している。
クオモ陣営が巨額の献金を集めた一方、アダムズ陣営からは献金者が離れていった。2021年の選挙でアダムズ氏を支持した民主党幹部や労働組合は、相次いで同氏の陣営から姿を消した。
しかし予測市場ではアダムズ氏の情勢が回復しており、再選を目指す上で若干ではあるが活動の余地が広がっている。
ニューマークのグラル氏は「エリックは特に最近、良い仕事をしている。優秀な警察本部長を周囲に置き、第一副市長も高く評価されている人物だ」と指摘。「もちろん、彼は過ちを犯したが、市政の方向性は正しいと思う」と語った。
また不動産会社RXRアクイジションの最高経営(CEO)でクオモ陣営への献金者でもあるスコット・レクラー氏も、候補者の絞り込みが必要だと指摘する。
「本選挙ではアダムズ氏、クオモ氏、そして共和党候補が票を分け合ってしまい、結果としてマムダニ氏が戦わずして市長の座を手にするリスクがある」とレクラー氏。「候補者を1人に絞るのが理想だ」と語った。
クオモ氏は自身の選挙戦への対応について、優先順位付き投票による予備選の最終結果が判明するまで判断を保留する意向を示している。
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原題:Mamdani Shock Gives NYC Mayor Adams a Shot at Making a Comeback(抜粋)