マクロン仏大統領夫人の生活、ネットのいじめで「悪化した」 娘が裁判で証言

画像提供, Getty Images

画像説明, 裁判所に入る仏大統領の妻ブリジット・マクロン氏の娘ティファン・オジエール氏(28日、パリ)

フランス大統領の妻ブリジット・マクロン氏(72)の娘は28日、パリの裁判所で、ブリジット氏に対する性差別的なインターネット上のいじめが、同氏の健康と生活環境に悪影響を及ぼしたと証言した。

裁判で証人となったティファン・オジエール氏は、エマニュエル・マクロン大統領の義理の娘。この日、ブリジット氏の性別と性的指向に関する裏付けのない主張を拡散したとして起訴された10人の裁判で証言台に立った。

ブリジット氏は長年にわたり、出生時の性別は男だったとする陰謀論の標的となってきた。

オジエール氏は、「母が受けた被害を伝えるために、今日ここにいることが重要だ。母がこうした攻撃の標的になってから、どのような生活を送ってきたかを説明したかった」と述べた。

また、この陰謀論が広まり始めて以来、ブリジット氏の健康に変化と「悪化」が見られるようになったと語った。

オジエール氏は、「母は服装や姿勢の選び方に注意を払わなければならなくなった。(中略)自分のイメージがこうした理論の補強に使われることを、母は完全に理解している」と述べた。

さらに、「善意で、母を思いやっている人でさえも」、こうした主張を何らかの形で母に伝えてしまう日が続いたとも証言。

ブリジット氏は「それに慣れて生きることを学んだ」一方で、孫たちが学校でからかわれるなどの影響が出ていることに苦しんでいると、オジエール氏は述べ、こう言った。

「母は選挙で選ばれたわけではなく、誰にも何も求めていない。それでも攻撃を受けている」

検察は被告10人に対し、3~12カ月の執行猶予付き禁錮刑と、最大8000ユーロ(約140万円)の罰金を求めている。

画像提供, Getty Images

画像説明, ブリジット・マクロン氏と夫のエマニュエル・マクロン仏大統領

被告の年齢は41歳から65歳までにわたり、選挙で選ばれた公職者、ギャラリー経営者、教師などが含まれている。

オレリアン・ポワルソン=アトラン被告は、ブリジット氏がトランスジェンダー女性であると主張したほか、マクロン氏と24歳の年齢差があることについて、「国家が容認した小児性加害」だとソーシャルメディアの20万人のフォロワーに向けて発信したとして起訴された。

同被告は28日の法廷で、自分は「風刺作家」であり、「主流メディアとは異なる視点」を提示したかっただけだと述べた。

独立系ジャーナリストを名乗っているナターシャ・レイ被告と、インターネット占い師のアマンディーヌ・ロワ被告は、フランスにはファーストレディ(大統領の配偶者)は存在せず、ブリジット氏の兄が性別を変更してその名前を使い始めたと主張したことで、昨年すでに名誉毀損で有罪とされた。しかしその後、控訴審で無罪となった。

他の被告らも「表現の自由」を行使したと主張している。被告の1人は、ブリジット氏が妊娠していたことを証明するため、妊娠中の写真を公開するよう大統領夫妻に求めた。

夫妻側は、アメリカの右派インフルエンサー、キャンディス・オーウェンズ氏に対するアメリカでの訴訟で、こうした証拠を提示する意向をすでに示している。

オーウェンズ氏は、ブリジット氏は男性だという見解を繰り返し主張しており、2024年3月には「この主張に自分のキャリアの評判すべてを賭ける」と述べた。

マクロン夫妻の代理人を務めるトム・クレア弁護士は先に、BBCに対し、夫妻がアメリカの裁判所で、ブリジット氏が女性だと証明する写真および科学的証拠を提出する予定だと説明。「このような証拠を提示するため自分をさらす必要があるということに、非常に心を痛めている」と述べた。

ブリジット氏は、現在の夫と初めて出会った当時、彼の通っていた中学校で教師をしていた。

2007年の結婚時、エマニュエル・マクロン氏は29歳、ブリジット・マクロン氏は54歳だった。

関連記事: