小惑星に超接近!飛び続けるはやぶさ2、この夏「神」一重のミッションへ 新リーダーに聞く新たな挑戦と勝算、そして地球を救いかけた話
今年7月にも、太陽の周りを回る小惑星「トリフネ」に近づき撮影する。成功にはミッションを担うチーム内で「神」一重と称されるほどの繊細な誘導技術が必要だ。 5年後には高速回転する小惑星への着地も目指す。宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所でミッションを率いる三枡裕也チーム長に意気込みを聞いた。(共同通信=鶴原なつみ) ▽ぎりぎりまで近づき、高速で通り過ぎる 2019年、はやぶさ2がカプセルを携えて地球を目指す中、JAXAでは新たな計画が本格化していた。 帰還する2020年までが機器の「寿命」だが、燃料は余っており、はやぶさ初号機のように大気圏に突入して失われてしまうのは惜しい。 2つの未知の小惑星に向かい、技術や知見を得るのが最善という判断に至った。 今年7月5日に予定されるのは、トリフネという直径約500メートルの小惑星の探査だ。秒速5キロで近づき、写真を撮り、0・1秒で通り過ぎる。
はやぶさ2は小惑星の近くにとどまって観測するのに適した探査機のため、望遠鏡などは搭載されていない。ぎりぎりの1キロメートルの距離まで近づくのが現在の目標だ。 地上から遠隔で誘導しつつ、はやぶさ2自身が小惑星の画像を取得。自力で軌道のずれを修正しながら、高速で近づいていく。 チーム長の三枡さんは「成功は未知数。チーム内では神業という意味を込めて『神』一重方式と呼んでいる」と気を引き締める。 ▽さらなる目標は想定より小さく、高速 トリフネの観測後は太陽を1周半周り、2027年12月、2028年6月と2度地球に近づき、重力を利用して地球の外側にある軌道に移動する。 2031年7月には、小惑星「1998KY26」にたどり着く。この小惑星は1998年に地球に接近しているところを発見された。当時の観測では、直径30メートルで、10分で1回転すると考えられていた。 ところが、2024年に再び地球に接近した際に国際チームが超大型望遠鏡で観測した結果、直径11メートルとさらに小さく、5分で1回転とさらに高速で回る可能性があることが分かった。 三枡さんは「これだけ小さい天体に到達できた探査機はおらず、世界初の試みになるはずだ。かなり難しいが、チャレンジしがいがある」と強調する。
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はやぶさ2で探査した「リュウグウ」は直径約900メートル、約7時間半で1回転していたため、ゆっくり速度を合わせて着地することができた。今回はより小さく、高速で回るため難度は上がる。 また、重力が小さく、物体を置いても遠心力で浮き上がってしまう環境が壁になる。リュウグウのときのようにまず光るボールを目印として投下し、位置を把握しながら降り立つ技が使えない。 小惑星の地形に応じて上手に誘導する機能をはやぶさ2に追加するなど、さまざまな手法を検討している。 ▽捨て身の地球防衛にも役立つ可能性 今回のミッションは、小惑星の衝突から地球を守る「プラネタリーディフェンス」にも役立つ。宇宙空間には無数の小惑星や彗星が漂い、過去にも地球に衝突している。数十メートルの天体でも激突すれば甚大な被害を招きかねない。 1908年には現在のロシア上空で50~60メートルの小惑星が爆発。東京都の面積に匹敵する約2千平方キロにわたって木がなぎ倒される「ツングースカ大爆発」が起きている。 2024年には、約8年後に地球に衝突する可能性がある直径40~90メートルの小惑星が発見され、一気に「地球防衛」に注目が集まった。その後、重大な脅威にはならないと判断されたが、はやぶさ2がミッションを中断し、危険な小惑星にぶつかって軌道を変える作戦が一時検討されたという。
「降って湧いたような話だった。個人的には、はやぶさ2の旅は続けさせたくて、ぶつけたくないな…と話していた」と三枡さんは苦笑しつつ振り返る。本当に地球に衝突するなら向かわざるを得ず、心配していたという。 今回、捨て身の体当たりは回避されたが、トリフネをかすめるように飛ぶには、正確に位置を把握し、近づく技術が必要になる。いずれ本当に探査機が体当たりをしなければならない事態が起こったときに有用だという。 「地球防衛に対する世間の関心も高まっている中で挑戦できる」と三枡さんも誇らしげだ。 ▽寿命を超えた長い旅、最後は… 1998KY26にたどり着くのは2031年と、設計寿命を10年以上超える長旅になる。機器はすでに劣化してきており、いつ不具合が出てもおかしくない。電圧が上昇しすぎないよう慎重に調整しながら見守っている。 ミッションを無事に終えられたら、三枡さんはどのような最期をイメージしているのだろうか。