内定率と就職先について学長が激白!仏教系大学がデータサイエンティスト育成に本腰を入れるワケ
北村 定員割れ問題ですね。データサイエンス学部も定員割れを起こしていますが、今年3月の第1回卒業生の就職は非常に好調でしたから、私は社会に受け入れられていると、将来を楽観的に見ています。
吉川さんが任期切れで大学を去ったのが22年3月で、データサイエンス学部の初年度末でした。いろいろ良い方向へ動き始めたところで学長が変わった。そこで昨年秋に「データサイエンス学部を含めた大学改革を進めたい」と、学長選に出馬しました
――北村さんが出馬されたのは意外でしたが、データサイエンスを経営改革の中心にしようと大学全体で賛意を得たのですか?
北村 そうですね。選挙公約を書き、立会演説もしました。私なりのやり方で、もう少し大学改革を進めさせてくださいとお願いしました。票数は小差だったんですが、過半数の先生たちが支持してくれたわけです。
――仏教系の大学で、新設学部を率いるデータサイエンティストが学長選の勝者になった。世界的に需要の大きいデータサイエンスト人材の養成が、大学の大きな役割になることへの期待があるのでしょうか?
北村 総合政策学部ブームや、「国際」「情報」「教養」が付いた学部の設立が続いたように、データサイエンス学部は文理融合、生成AI時代のトレンドになるでしょう。今は定員割れの状態ですが、なんとか定員を充足するように奮闘しているところです。
――データサイエンス学部の第1期卒業生の就職先は狙い通りでしたか?
北村 ええ、内定率は98%を超え、IT系や自治体など、ほぼ全員が就職しました。その他は、上智大学や明治大学などのデータサイエンス系大学院にも進学しています。
――現在、データサイエンス学部を設立した大学はいくつあるのですか?
北村 「データサイエンス系大学教育組織連絡会」の会員は、17大学へ増えています。
――多くのデータサイエンス学部は文系・理系問わず学べるカリキュラムになっているものの、生成AIの急速な普及により、文系学生にとってハードルが下がったと思います。「社会課題の解決」「ビジネスへの応用」がデータサイエンスの大きな目標ですものね?
北村 そうなんです。プログラムを書くのが大好きという学生はごく一部で、大半はプログラムをAIに書かせて、アイデアを集めて製品化、あるいはサービス化を考えるほうが面白いと考えているのではないかと。
数学の知識はあったほうがいいかもしれませんが、AI時代に必須の数学知識は限られていると思います。イーロン・マスクは、プログラムは書かないと思いますよ。
日本ではAIやデータサイエンスのトップレベル人材が圧倒的に足りず、完全に米国などに支配されている。まずは人材が増加し、裾野が広がれば、その中からトップレベル人材も出てくるでしょう。
――データサイエンスの進化のためには、数学や統計に習熟した人材から、AIを使いこなせる人材が求められるようになっているのですか?
北村 論理的で戦略的な思考が重要です。データサイエンスは、経済、経営、社会、心理など複数分野のデータと結びついています。幅広い興味を持つ学生が、データサイエンスを学びたがっていますね。
――立正大学のデータサイエンスで特色ある対象分野はありますか?
北村 スポーツのデータ活用を学べます。スポーツデータの分析、パフォーマンス分析、トレーニング科学などを専門とする教員がいます。これは有望なジャンルでしょう。JリーグやBリーグのチームが全国各地に根付いていますから。他の大学からも見学に来ています。
(注1)ただし、1950年代から60年代には石橋湛山(経済ジャーナリスト、衆議院議員)が学長だった時期がある。また、北村氏を招いた学長も経済学者の吉川洋氏だったから、経済学者としては3人目の学長ということになる。
(注2)当時の学長は経済学者の佐和隆光氏