「ニンテンドーカタログチケット」販売終了で噂される代替商品は、値上げ&数年後スタートが基本線か(リアルサウンド)

 任天堂は7月10日、「2本でお得 ニンテンドーカタログチケット」(以下、「ニンテンドーカタログチケット」)の販売を、2026年1月30日23時59分をもって終了するとアナウンスした。 【画像】2026年に任天堂が発売予定のシリーズ最新作『トモダチコレクション わくわく生活』  対象ソフトをお得に手に入れられるキャンペーンとして、Nintendo Switchユーザーに広く利用されてきた同チケット。本稿では、販売終了の背景を踏まえ、今後登場の可能性が囁かれる代替キャンペーンの概要を予測する。 ■任天堂と株式会社ポケモンが発売するソフトをお得に手に入れられる「ニンテンドーカタログチケット」  「ニンテンドーカタログチケット」は、任天堂がNintendo Switch向けの有料オンラインサービス「Nintendo Switch Online」の加入者限定で展開する商品だ。購入者は、同社または株式会社ポケモンが発売するタイトル群のなかから2本を選択し、そのダウンロード版と引き換えることができる。  価格は税込9,980円。対象となるソフトは税込5,400円から税込8,778円までの範囲となっているため、もっとも安いもの2本を選択した場合で1,000円ほど、もっとも高いもの2本を選択した場合で7,000円ほど、お得にソフトを手に入れられる。特に任天堂のファーストパーティータイトルを好むフリークたちに広く愛されてきたキャンペーンだ。  一方で、Nintendo Switch 2のタイトルは、任天堂や株式会社ポケモンから発売されたものでも対象外となっており、対象ソフトにおいてNintendo Switch 2 Editionが展開されていたとしても、Nintendo Switch版としか引き換えができない。Nintendo Switch 2版をプレイしたい場合には、別途アップグレードパスの購入が必要となる。  任天堂によると、同チケットの販売終了後も対象ソフトの追加を予定しており、有効期限である1年以内は引き換えが可能であるとのこと。ラインアップのなかに購入を予定しているタイトルがある方には、早めの利用をおすすめしたい。 ■「ニンテンドーカタログチケット」販売終了の背景は?  愛用してきたユーザーには、まさに寝耳に水の知らせとなった「ニンテンドーカタログチケット」の販売終了。SNS上には、フリークたちの残念がる声が相次いだ。おそらく終売の背景には、ハードの移行があると考えられる。先にも述べたとおり、同チケットはNintendo Switch 2のソフトに対応していない。今後、同機でのタイトル展開が増えていくことを考えると、どこかのタイミングで転換期が訪れていたことは間違いないだろう。  また、任天堂がNintendo Switch 2の販売価格を最大限抑えたことによる影響もあったのかもしれない。ゲーム業界では古くから、ハードの販売によるプラットフォーマーの利益は限定的であると言われてきた。仮にNintendo Switch 2もこうした例に漏れないとすれば、任天堂はソフトの販売から、同機の流通をめぐる利益を得なければならない。もともとNintendo Switch 2向けのソフトは「ニンテンドーカタログチケット」の対象となっていないが、同社全体の利益という意味では、Nintendo Switch向けタイトルの販売もその範疇となる。目減りした数字の補填元に、同チケットの対象ソフトが選ばれた面もあるのではないか。  「ニンテンドーカタログチケット」をめぐっては、Nintendo Switch 2 Editionが用意されている一部タイトルにおいて、「チケットでNintendo Switch版を購入し、その後アップグレードを行う」という、抜け道的な利用も散見されていた。本稿で言及した一連の背景を踏まえると、任天堂にとって今回の販売終了は、苦肉の策であったと考えることもできそうだ。 ■噂される代替キャンペーンの価格&開始時期を業界動向から予測  今回の発表を受け、ネット上では「ニンテンドーカタログチケットが販売終了となるのは、その機能を代替する新たな商品が近々に発表されるからに違いない」という憶測もひろがっていた。しかしながら、そのような商品が仮に今後展開されるとしても、その時期については、しばらく先となるのではないか。なぜなら、「ニンテンドーカタログチケット」は、Nintendo Switchのローンチから約2年後の2019年5月に販売が開始されているからだ。つまり、同チケットの展開は本来、新ハードの普及期ではなく、ローンチ直後の特需がやや落ち着くであろうころを狙ったものだったというわけだ。  Nintendo Switchがロングセラーとなったことで、結果的に「ローンチ直後の特需が落ち着くタイミング」とはズレてしまったが、任天堂は明確な意思を持って、この時期に「ニンテンドーカタログチケット」の販売を開始した可能性が高い。このことは「ローンチ直後における利益の補填を背景に販売終了になる」という先述の見方とも矛盾がない。  また、仮に類似する商品が展開されるとして、その価格については、現行の税込9,980円からの値上げが基本線となるだろう。ゲーム業界では、開発費の高騰などから新作ソフトの価格が上昇の一途をたどっている。参考までに、Nintendo SwitchとNintendo Switch 2、それぞれのローンチタイトルである『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』と『マリオカート ワールド』を比べると、前者が税込7,678円、後者が税込8,980円と、1,500円近い差が生まれている。  一見すると、この価格差はわずかであるようにも感じられるが、当時の業界トレンドと比較して、より画期的なゲーム体験を盛り込んでいた『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』には、相対的に大きな開発費が投じられたと見込まれる。『マリオカート ワールド』にとってのシリーズ前作にあたる、『マリオカート8』(こちらはWii Uでの展開だが)や『マリオカート8 デラックス』が、発売時に税込6,500円ほどで展開されたことからも、両者の違いは明らかだろう。もちろん『マリオカート ワールド』では、オープンワールド化などによって膨らんだ開発費を価格に転嫁した可能性もあるが、それでも各ローンチタイトルのあいだには、実数以上の差が内包されていることになる。  「ニンテンドーカタログチケット」の現行の価格は、すでに新作ソフト1本分に肉薄しつつある現状だ。今後類似する商品が展開されるとして、同様の価格ではあまりにも不採算となる可能性が高い。サービスの内容を変えない前提で現実的な落としどころを探るのであれば、税込1万2,000円ほどが妥当なのではないか。このような価格設定には既存ユーザーからの反発も少なからずあるだろうが、それでもユーザーの購買体験に寄り添った、任天堂らしいキャンペーンであることを忘れてはならない。  「ニンテンドーカタログチケット」の販売終了は、まだ見ぬ新キャンペーン登場への伏線なのだろうか。これまでさまざまな形でファンの期待を上回ってきた任天堂であるだけに、良い意味で大方の予想を裏切るようなサプライズが用意されているのかもしれない。

結木千尋

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