Google Pixel 10のワイヤレス充電は注意が必要なことも!? iPhone向けMagSafeとかいろいろ試して分かったこと

Google Pixelsnap 充電器(スタンド付き)。Googleストアでの直販価格は1万1,220円

 Googleが8月28日に発売した最新スマートフォン「Pixel 10」シリーズは、Qi2準拠のワイヤレス充電機能を備える新機能「Pixelsnap」を搭載している。それに併せて、Pixelsnap対応アクセサリとして、Qi2 25W準拠のワイヤレス充電器「Pixelsnap 充電器」も発売された。

 Pixelsnap 充電器の使い勝手は実際のところどうなのか?Pixel 10シリーズでPixelsnap充電器を利用し、マグネットの塩梅やワイヤレス充電を行なった場合の充電速度などをチェックしてみた。購入に迷っているなら参考になるはずだ。

 Googleが販売しているPixelsnap対応充電器は、充電器単体の「Pixelsnap 充電器」と、専用スタンドが付属する「Pixelsnap 充電器(スタンド付き)」の2製品。価格は前者が6,380円、後者は1万1,220円。今回は後者を入手した。

Pixelsnap 充電器のスタンド付き。Pixelsnap 充電器を装着する専用スタンドが付属している

 Pixelsnap 充電器は、Qi2 25W準拠のワイヤレス充電器だ。Pixel 10およびPixel 10 Pro、Pixel 10 Pro Foldで利用する場合には最大15W、Pixel 10 Pro XLで利用する場合には最大25Wでのワイヤレス充電が可能。

Pixelsnap 充電器は直径56mm、厚さ54mmの薄い円柱状で、側面からは長さ1mのUSB Type-Cケーブルが延びている

 充電器部分のサイズは、直径56mm、厚さ54mmの薄い円柱状で、側面からは長さ1mのUSB Type-Cケーブルが延びている。重さはケーブル込みで54.5g。見た目は一般的なQi/Qi2準拠ワイヤレス充電器とほぼ同じだ。

PixelsnapはQi2で定義されているMPPをサポート。Pixelsnap 充電器はPixel 10シリーズと磁気で固定され、常に正しい位置で安定したワイヤレス充電が可能

 PixelsnapはQi2で定義されている電子機器と充電器を磁気で固定する「Magnetic Power Profile(MPP)」をサポート。そのため、Pixelsnap 充電器はPixel 10シリーズと磁気で固定され、常に充電器が正しい位置にある状態でワイヤレス充電が可能となる。

Pixelsnap 充電器用の専用スタンド

 専用スタンドは、Pixelsnap 充電器を固定する穴が開けられており、そこにPixelsnap 充電器を装着して利用する。この専用スタンドはかなり重く、実測の重量は347gもある。これは、MPPでPixel 10シリーズを装着し安定して利用できることを想定してのものだろう。実際、最も重量の重いPixel 10 Pro XLを装着しても、まったく不安定さがない。

スタンド前面のへこみにPixelsnap 充電器を装着して利用する
Pixelsnap 充電器をスタンドに装着した状態
充電器をスタンドに装着した場合には、USB Type-Cケーブルは平面から引き出す形となる
スタンドだけで重量は実測で374gとかなり重い
スタンドの重量によって、Pixel 10シリーズを装着しても安定して利用できる

 ちなみにPixelsnap 充電器のMPPの磁力はかなり強力で、専用スタンドに装着した状態でPixel 10シリーズを持ち上げると、スタンドごと楽々持ち上げられる。Pixelsnapには充電器も含めて500gほどのスタンドを問題なく保持できる磁力が備わっている形で、スタンドに装着したPixel 10シリーズがズレたり簡単に外れる心配はない。知らない間に外れて充電できていなかったというトラブルは皆無なはずだ。

Pixelsnap 充電器のMPPの磁力は強力で、Pixel 10シリーズを安定してスタンドに保持できる
スタンドに装着したPixel 10シリーズを持ち上げると、スタンドを保持したまま余裕で持ち上げられる

 ただ、これだとPixel 10シリーズを外す時にスタンド側を押さえる必要がありそうだが、以下の動画のようにPixel 10シリーズの下部から手前に引き剥がすようにすれば、片手で簡単に取り外せる。

スタンドからPixel 10シリーズを取り外す様子

 なお、Pixelsnap 充電器にはUSB PD対応の電源が付属しないため、利用時には別途USB PD充電器を用意する必要がある。それも、15Wでワイヤレス充電を行なう場合には出力20W以上、25Wでワイヤレス充電を行なう場合には出力35W以上のUSB PD充電器が必要となるので、この点には注意したい。

 では、実際の充電の様子をチェックしていこう。まずは最大15Wでの充電が可能なPixel 10とPixel 10 Proから見ていく。

 なお、今回の検証では、充電のためにベルキンの最大50W出力対応USB PD充電器「Belkin Cubic Charger 50W」を利用した。また、検証ではPixel 10とPixel 10 Proのバッテリ残量0%から100%まで充電する場合にかかる時間を計測した。

充電にはベルキンの出力最大50W対応USB PD充電器「Belkin Cubic Charger 50W」を利用

 結果は、以下にまとめた通りだ。

【表1】Pixelsnap 充電器を利用したワイヤレス充電の推移 30分 1時間 1時間30分 充電完了 Pixel 10 27% 51% 74% 2時間15分 Pixel 10 Pro 31% 63% 91% 1時間55分

 結果を見ると、残量0%からフル充電までにPixel 10は2時間15分、Pixel 10 Proは1時間55分と、Pixel 10 Proのほうが20分早く充電が完了した。同じサイクルの充電を何度か行なってみたが、充電完了までにかかる時間はほぼ同じ傾向だった。

 搭載バッテリ容量は、Pixel 10が4,970mAh、Pixel 10 Proが4,870mAhと、Pixel 10のほうが大容量ということで、Pixel 10のほうが充電に時間がかかった可能性もある。とはいえ、そこまで問題視するほどの違いでもないだろう。

 ところで、USB PD充電器とPixelsnap 充電器の間に、USBテスター「FNIRSI FNB58」を接続して、充電中の電力も計測してみた。なお、このUSBテスターで計測した電力は、Pixelsnap 充電器のUSBケーブルを流れる電力を計測したもので、ワイヤレス充電の電力そのものを示すわけではない。

供給電力は、USB PD充電器とPixelsnap 充電器の間に、USBテスター「FNIRSI FNB58」を接続して計測した

 以下がその結果だが、Pixel 10、Pixel 10 Proともに充電時の供給電力が17~19W前後で推移し、最後のほうは徐々に電力が低下していることが分かる。最大充電電力の15Wを超えているのは、ワイヤレス充電時の電力損失を含んでいるからと思われるが、損失を考慮してもほぼ15W前後で充電できていると考えていいだろう。

 そして、最後のほうで電力が低下しているのは、充電容量が90%に達した以降で、90%以降は充電速度を落としてゆっくりフル充電まで持っていく形となっているからだ

 続いて、サードパーティ製Qi2 25W対応ワイヤレス充電器を利用して充電した場合でも計測してみた。

ベルキンのQi2 25W対応ワイヤレス充電器「UltraCharge 2-in-1 Foldable Magnetic Charger」。こちらでもワイヤレス充電の推移をチェックした

 まずは、Qi2 25W対応ワイヤレス充電器として、ベルキンの「UltraCharge 2-in-1 Foldable Magnetic Charger」を用意した。

 結果は以下の通りで、Pixelsnap 充電器を利用した場合と大きく変わらない時間で充電が完了した。こちらでは充電中の電力推移は計測しなかったが、充電時間がほぼ同じだったということから、電力推移もほぼ同等と考えていいだろう。

【表2】Belkin UltraCharger 2-in-1 Foldable Magnetic Chargerを利用したワイヤレス充電の推移 30分 1時間 1時間30分 充電完了 Pixel 10 29% 58% 81% 2時間9分 Pixel 10 Pro 32% 64% 90% 1時間54分
AppleがiPhone用に販売しているワイヤレス充電「MagSafe Charger (1M) MX6X3AM/A」でも計測してみた

 次は、AppleがiPhone用に販売しているワイヤレス充電「MagSafe Charger (1M) MX6X3AM/A」を利用した場合だ。

 そもそもQi2はMagSafeをベースとして規格化されたこともあり、Qi2とMagSafeには互換性がある。また、今回用意したMagSafe Chargerは対応するiPhoneで最大25Wでのワイヤレス充電が可能ということで、Pixel 10シリーズで利用した場合にどういった挙動を示すのかチェックしてみたいという意図もあった。

 結果は以下の通りで、こちらもPixelsnap 充電器を利用した場合と大きく変わらない時間で充電が完了した。互換性があることを考えると当然の結果であり、おそらくMagSafe対応のサードパーティ製ワイヤレス充電器でも同様の結果になるだろう。これまでiPhoneシリーズを使っていてMagSafe Chargerを持っている人は、Pixel 10シリーズでもそのまま利用できる点はありがたいはずだ。

【表3】Apple MagSafe Charger MX6X3AM/Aを利用したワイヤレス充電の推移 30分 1時間 1時間30分 充電完了 Pixel 10 30% 58% 85% 2時間1分 Pixel 10 Pro 33% 66% 92% 2時間6分

 続いて、Pixel 10 Pro XLの結果を見ていこう。Pixel 10 Pro XLだけ別にしたのは、Pixel 10 Pro XLのみQi2 25W対応で、最大25Wでのより高速なワイヤレス充電が可能となっているからだ。

 充電の条件は先のPixel 10/10 Proと同じで、バッテリ残量0から100%になるまでの充電時間を計測した。

充電器は、先ほどと同じように「Pixelsnap 充電器」、ベルキンの「UltraCharge 2-in-1 Foldable Magnetic Charger」、Appleの「MagSafe Charger」の3種類を利用し、USB PD充電器も同じBelkin Cubic Charger 50Wを利用した。

 結果は以下にまとめた通りで、充電時間はPixelsnap 充電器を利用時が2時間6分、UltraCharge 2-in-1 Foldable Magnetic Charger利用時が2時間6分、MagSafe Charger利用時が2時間3分と、いずれもほぼ同等の時間がかかった。

【表4】Pixel 10 Pro XLのワイヤレス充電の推移 30分 1時間 1時間30分 充電完了 Pixelsnap 充電器 29% 58% 83% 2時間17分 Belkin Qi2 25W充電器 27% 54% 80% 2時間6分 MagSafe Charger 27% 56% 83% 2時間3分

 これは、Pixel 10やPixel 10 Proと比べて大きく変わらない形だ。もちろんPixel 10/10 Proよりも搭載バッテリ容量が多いこともあるが、25Wで充電できることを考えると、もっと速く充電できてもいいのではないか、という印象だ。

 そこで、先ほどと同じようにPixelsnap 充電器で充電中に供給される電力をテスターで計測してみたところ、最大で19.3W程度、平均すると17~18Wほどしか供給されていなかった。容量90%まではほぼ一定の電力で充電でき、90%を超えると電力が低下してゆっくり充電される点は、Pixel 10/10 Proとほぼ同じだった。

Pixel 10 Pro XLの充電中の電力推移。最大でも19.3W程度で、平均17~18Wほどで推移しており、25Wでの充電は行なえていないと考えられる

 これは結果として掲載した時だけでなく、複数回(10回以上)試しても大きく挙動が変わることはなかった。

 以上から、少なくとも筆者が試した限りでは、Pixelsnap 充電器やQi2 25W対応充電器を利用したとしても、実際の充電電力はせいぜい15W前後で、25Wでの充電は行なえていない、と結論付けるしかなさそうだ。

 さすがにこれはちょっとおかしいということで、Googleに検証データを示しながら問い合わせているところだが、現状まだ調査中ということで、明確な返答は得られていない。

 Googleからは、「充電中に充電器および端末が一定の温度を超えると充電速度が遅くなるよう設定されている」とも言われたので、充電中の温度をチェックしてみたが、Pixelsnap 充電器は42℃ほどに達していることを確認。触れないほど熱くはない印象だ。

充電中の温度を計測してみると、Pixelsnap 充電器部分が42℃を超えていたが、特別熱いという印象ではなかった

 また、Pixel 10 Pro XL本体になるべく熱がこもらないように、ディスプレイ面をデスクに接するように置いて充電しても、充電速度に変化は見られなかった。そしてなにより、充電開始直後は熱くなっておらず、そこでは大きく電力が上がっても良さそうだが、充電開始直後から電力が上がっていないことを考えると、熱の影響とは考えにくい。

 というわけで、今回はPixel 10 Pro XLで最大25Wでのワイヤレス充電が可能と確認できなかったが、今後Googleの返答があれば、あらためてテストを行ないたい。

 最後に、Pixel 10シリーズにケースを装着した場合にワイヤレス充電の速度がどう変わるかチェックしてみた。今回利用したケースは、Pixelsnap対応の純正ケース「Google Pixelsnapケース」だ。

純正アクセサリのPixelsnapケースを装着した状態での充電速度もチェックした

 結果は下にまとめた通りで、Pixel 10は3時間6分、Pixel 10 Proは2時間43分、Pixel 10 Pro XLは3時間5分と、いずれもケース非装着時と比べてかなり充電速度が遅くなった。これは、ケースを装着することで、Pixelsnap 充電器とPixel 10シリーズ本体の距離がケース分だけ離れてしまい、充電効率が低下するためと考えられる。少々残念ではあるが、ある意味当然の結果でもある。

【表5】Pixelsnapケース装着時のワイヤレス充電の推移 30分 1時間 1時間30分 2時間 2時間30分 充電完了 Pixel 10 21% 40% 54% 68% 84% 3時間6分 Pixel 10 Pro 23% 42% 63% 81% 2時間43分 Pixel 10 Pro XL 19% 38% 53% 69% 86% 3時間5分

 最大効率でワイヤレス充電するには、ケース非装着でPixelsnap 充電器を装着すべきだ。とはいえ、1時間程度遅くなるだけなので、寝ている間に充電が完了すればいいということであれば、ケースを装着したままの充電でも特に気にならないだろう。

Googleによると、Pixelシリーズ用アクセサリ「Pixel Stand」と「Pixel Stand(2nd Gen)」は、Pixel 10シリーズでの利用を推奨しないとのこと

 ところで、Pixelシリーズ用アクセサリとして販売されている「Pixel Stand」および「Pixel Stand(2nd Gen)」を利用した場合はどうか。今回は、Pixel Stand 2nd Genを利用してみたが、1時間経過しても24%ほどしか充電されず、とにかく充電速度が遅かった。

 実は、事前にGoogleに確認していたのだが、Pixel StandはQi 1.xへの対応に留まることや、MPPもサポートしていないこともあって充電が不安定になる可能性があるため、Pixel 10シリーズでの利用は推奨しない、と回答を得ていた。実際に試してみても、充電速度が非常に遅かったことも合わせて、Pixel 10シリーズを充電できないわけではないが、基本的には使わないほうが良さそうだ。

 今回見てきたように、Pixel 10 Pro XLでは本来可能な25Wでのワイヤレス充電が確認できなかったという点が残念ではあったが、PixelsnapがMPPをサポートすることで、対応ワイヤレス充電器を磁気で装着し、安定してワイヤレス充電が可能という点は、非常に便利に感じる。

 また、Qi2/Qi2 25WとAppleのMagSafeに互換性があることで、MagSafe充電器も利用可能なため、これまでiPhoneを利用していた人が充電器をそのまま流用できるという意味で、乗り換え時にもありがたいと言える。

 さらに、充電器に限らず、マグネットで装着するスタンドなどのMagSafe対応周辺機器も問題なく利用できる。豊富なMagSafe対応周辺機器をPixel 10シリーズでも活用できるという点も、大きな魅力となるはずだ。そのため、Pixel 10シリーズを入手したなら、Pixelsnap対応周辺機器やMagSafe対応周辺機器を利用して、利便性を高めてもらいたい。

 なお、Pixel 10 Pro XLについては、続報が入り次第、またあらためて取り上げたい。

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