アマゾン、クラウドサービスの障害修正後も一部で影響続く

世界最大のクラウドプロバイダーであるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、約15時間にわたって発生した障害が復旧したと発表した。今回の障害では、インターネットがいかに1社のサービスに依存しているかが改めて浮き彫りになった。

  アマゾン・ドット・コム傘下のAWSは、同社のサービスヘルスダッシュボードの更新で、ニューヨーク時間午後6時(日本時間21日午前7時)ごろに全てのサービスが「通常の運用状態に戻った」と説明した。

  AWSのサービスは、インターネットの大部分を支え、クラウド市場の約3分の1を占める。ネット上のサービス障害をモニターする「ダウンディテクター」によると、個人間送金アプリ「ベンモ」や株式取引アプリを運営する米ロビンフッド・マーケッツ、アップルの音楽・映像サービス、ズーム・コミュニケーションズセールスフォースなどのソフトウエア企業、マクドナルドなどの外食大手、エピック・ゲームズなどのゲーム会社など、数百のサイトで影響が確認された。

  アマゾンのアマゾンの音声アシスタント「アレクサ」やホームセキュリティーシステム「リング」にも影響が及んだ。

  クラウド利用企業に助言を行うダックビルのチーフ・クラウド・エコノミスト、コリー・クイン氏は今回の障害について、2021年12月の大規模障害以来、最悪の事例となった可能性があると指摘。アマゾンへの依存を深めていることが問題かもしれないとの見方を示した。

  これに先立ち、AWSは20日、データベースネットワークの問題からほぼ回復したと発表したが、その数時間後に一部ユーザーは引き続きレンタルサーバーへの接続に支障が出ていると説明した。AWSのヘルスダッシュボードの更新によると、米東海岸地域の複数のAWSサービスでネットワーク接続の不具合が発生していた。  

  AWSによると、主要なデータベースサービスを管理するデジタルディレクトリに不具合が生じ、広く利用されているデータベースに依存するソフトウエアが必要な情報を取得できなくなり、関連サービスが次々に影響を受ける連鎖的な障害が発生したとみられる。同社はその後、問題を修正したが、一部のユーザーでは復旧過程でレスポンスの遅延やエラーの増加が続く可能性を説明していた。

  ダウンディテクターによると、ロンドン時間午前7時30分直後からユーザーの苦情が急増した。

  影響を受けた企業の多くは復旧を明らかにしている。ロビンフッドはサービス復旧を確認。暗号資産(仮想通貨)取引所大手コインベースは修正結果を監視中と説明した。AI企業パープレキシティと英歳入関税庁(HMRC)も、ウェブサイトに生じた不具合が解消されたと発表した。

  主要なテクノロジーシステムの不具合の多くは迅速に修正される。ただ、相互に接続されたテクノロジーシステムは1社で起きた問題であっても世界経済に大きな影響を及ぼしかねない。昨年は、サイバーセキュリティー企業クラウドストライク・ホールディングスのソフトウエア更新に欠陥があったことから、世界各地で航空便の欠航やシステム障害が発生し、大規模な損害が生じた。

原題:Amazon Says All Cloud Services Restored After 15-Hour Outage (1)(抜粋)

— 取材協力 Mark Bergen, Daniel Zuidijk and Christina Kyriasoglou

(AWSからの復旧に関する発表を追加して更新します)

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