【こんな人】エース今井達也が思い描くベルーナドームの光景 久々の本拠地登板にたぎる思い発揮

サヨナラ勝利の盛り上がりにわくベンチ裏を、次々と西武の選手たちがにぎやかに歩いて行く。

今井達也投手(27)は肩からタオルをかけ、存在感なさげに歩いていた。感想を問われると「まぁ何とか0点で、無失点で粘って抑えられたので、そこは良かったです」と控えめだ。

逆転劇の手前まではスタジアムの主役だった。7回1死までノーヒットノーラン。6連続奪三振でスタートしたオリックス山下との投げ合いは、見応え十分な空間だった。

とはいえハイライトはやはり4回表になる。失策や四球で1死満塁になり、西口監督と言葉をかわした豊田投手チーフコーチがマウンドへ向かいかけた。

今井はそれをやや感情的に左手で制した。右手で持っていたロジンをマウンドへ投げつけた。豊田コーチがマウンドへ向かうが、今井は輪から外れた。

自身のコントロールで冷静さを取り戻すように。その場面を問いかけられると-。

「いや、自分自身、すごく立場というか、自負してやってるつもりなので。マウンドで掛けられる言葉もだいたい分かってるつもりなので。任せられてるのは自分でもしっかり分かってマウンドに上がっているので、そんなに心配しなくても」

構図としては首脳陣からの間合いを断ろうとした形になる。質問した記者が心配になるほどの言葉。

ただ今井は「僕はそう思ってます」と強く添えた。エースとして任せてほしかった、そういった感じだろうか。

「任せてほしかったというか、それくらいの気持ちで送り出してもらってると思うので。周りからエースと言ってもらえてる立場なので。そんなに心配しすぎなくてもって」

自身でひと息入れると、そこから連続奪三振。大歓声の中、事もなげにベンチへ戻っていった。

その姿に大歓声が届く。「本拠地と敵地では、ファンの方の数も、スタンドの(応援)タオルの数も全然違いますよね」と言って、続ける。

「本拠地で勝った方がやっぱり、ファンの方もうれしいと思いますし、知り合いも見に来てますし、地元も近いんで。そういう人たちのためにも本拠地で投げるというのが僕は好きですし、いつも以上に気持ちが入りましたね」

いつも以上に。

「僕自身、今年オールスター明けっていうか後半戦になってからベルーナドームで投げるのが初めてで、楽しみにしてたので」

長いシーズンももうすぐ終わる。開幕前、こんな目標を口にしていた。

「僕がファンの1人だったら、球が速かったり、三振いっぱい取れる投手が一番魅力的で。野球は点を取るゲームですけど、守備の時でも見てて楽しめる投手になりたいと思っています。1人でも『今井が投げる試合を見に行きたい』っていう人が増えるように」

今井達也にはエースにふさわしい誇り高き信念がある。【金子真仁】

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