【為替】10/27-10/31の米ドル/円を予想する
10月13日週に153円から一時150円を割れるまでほぼ一本調子で米ドル安・円高となったのに対し、先週(10月20日週)は150円から153円まで一本調子の米ドル高・円安となりました(図表1参照)。
先週、米ドル高・円安が再燃したのは、高市新自民党総裁誕生で米ドル高・円安が急ピッチで進んだ連想が、今度は高市新内閣誕生を手掛かりに広がったことが理由だったのでしょう。また、10月24日の米9月CPI(消費者物価指数)発表がインフレ悪化につながり、FOMC(米連邦公開市場委員会)連続利下げに対する障害になることへの警戒も米ドル買いを誘った面があると考えられます。
ただし、CPIは予想より少し弱い結果となり、FOMC連続利下げの障害になる懸念は低下しました。これを受けて、米ドル/円はこの間の高値、153.2円の更新に至りませんでした。では、これにより、いわゆる「二番天井」確認で米ドル高・円安はほぼ終わったということになるのでしょうか。
「日本の長期金利上昇=円安」は一段落の可能性も=消費税減税シナリオは消えた
一時153円まで米ドル高・円安が再燃した動きは、基本的に日米金利差(米ドル優位・円劣位)変化による説明が困難なものでした。そうした金利差変化で説明の困難だった米ドル高・円安をある程度説明できそうなのは金利差ではなく日本の金利、とくに長期金利の上昇でした(図表2参照)。
「日本の長期金利上昇=円安」の背景には、少数与党が野党の消費税減税などを拒み切れず、日本の財政規律の維持が困難になることへの懸念、つまり「債券売り=円売り」があったのではないでしょうか。ただ、そうした「債券売り=円売り」は一段落しつつあるようにも感じられます。
鍵になっていたのは消費税減税ですが、これについて自民党と日本維新の会の連立合意では、「法制化を検討する」と説明されました。消費税減税を行うのなら、「法制化する」とすれば良いところ、「検討する」という言葉を追加したのは、検討はするものの、実際には減税を行わない可能性が高いと考えられます。以上のように見ると、「消費税減税への懸念→日本の長期金利上昇=円売り」という流れは一段落しつつあるのではないでしょうか。
「日銀サプライズ利上げ」観測が浮上=新総理施政方針演説がきっかけ
その上で、高市新総理が所信表明演説で日銀への言及がなかったことが、一部で10月の「日銀サプライズ利上げ」の思惑を浮上させているようです。推理小説などで使われる手法に、「本来あるべきものがないことは何らかの示唆である」というものがあります。こうしたことから、高市総理が施政方針演説で日銀に言及しなかったのは、「早期利上げOK」シグナルの可能性もあるとの見方が一部で浮上しました。
今のところ株高も続いているので、確かに早期利上げを行うチャンスとも言えるでしょう(図表3参照)。本当に10月に「日銀サプライズ利上げ」となれば、米ドル高・円安は急反転する可能性もあるのではないでしょうか。
今週(10月27日週)の注目点=日米首脳会談、金融政策発表など重要イベント目白押し
日米首脳会談でトランプ米大統領の円安批判はあるのか
今週は、前半にトランプ米大統領が来日し、高市総理との初の日米首脳会談が予定されています。また10月29日、30日には日米欧の金融政策発表も予定されているなど、注目イベントが相次ぎます。
まずは日米首脳会談について。高市新総理とトランプ米大統領は保守派同士で、外交や安全保障などの政策では親和性が高い関係との見方が一般的です。その一方で、経済政策においては、トランプ米大統領が貿易相手国の通貨安に過敏に反応するのに対し、高市総理がいわゆる「アベノミクス」を継承して円安に寛容と見られることから、高市政権発足後150円を超えた水準での米ドル高・円安が続いている中では、対立するリスクがあるのではないでしょうか。
過去の日米外交の歴史の中で、初の首脳会談で為替がメイン・イシューになったのは1993年の宮沢・クリントン会談でした。会談終了後の記者会見で、クリントン大統領は、「日米間の貿易不均衡是正に最も有効なのは円高」と発言し、円高への為替調整への期待をストレートに表現しました。
これは、当時のクリントン政権が、大統領選挙中のクリントン氏の「It's the economy, stupid!(問題は経済だろう、分からないのか!)」という台詞が示したように、ポスト冷戦で米経済の復活を目指すという大義名分がありました。それに比べると、今回の場合は基本的にはトランプ大統領個人の強い思い入れといった違いはありそうですが、それは為替に限ったことではないでしょう。その意味では、初の日米首脳会談で、円安批判が飛び出す可能性もあるのではないでしょうか。
FOMCは2回連続利下げ、日銀は利上げ見送りの予想が基本
金融政策発表は、10月29日が米国とカナダ、そして10月30日が日本とユーロ圏の予定となっています。このうち、米国の金融政策決定会合、FOMC(米連邦公開市場委員会)では9月に続き2会合連続の0.25%の利下げが予想されています。一方、日銀の金融政策決定会合では、高市新政権が誕生したばかりということもあり、利上げは見送られるとの見方が基本になっているようですが、上述のように一部では早期利上げ観測も浮上しているようです。
また、経済指標発表については、米政府の一部機能停止、「シャットダウン」が長期化する中で不規則な状況がなお続く可能性が高そうです。
今週(10月27日週)の米ドル/円は150~154円で予想
これまで述べてきたように、私は「日本の長期金利上昇=円安」の流れはひとまず終わりつつあるのではないかと考えています。一方で、「日銀サプライズ利上げ」などがあれば、大きく米ドル安・円高に戻る可能性もあるのではないでしょうか。以上を踏まえ、今週の米ドル/円は150~154円で予想します。