米短期金融市場の逼迫続く、FRBに流動性対応圧力-SOFR高止まり

資金調達コストの高止まりを背景に米短期金融市場の逼迫(ひっぱく)が11月も続く可能性があり、米連邦準備制度は来月に予定するポートフォリオ縮小停止を待たずに流動性を増強する必要に迫られる可能性がある。ウォール街のアナリストはこうみている。

  10月31日の担保付翌日物調達金利(SOFR)は18ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇し、日時ベースで米利上げ局面を除き2020年3月以来最大の変動を記録した。市場が不安定な展開となった10月を締めくくる形となった。

  主に銀行間取引で利用されているSOFRは月末要因が和らいだ11月3日に低下したものの、依然としてフェデラルファンド(FF)金利など連邦準備制度が誘導目標を設定する金利を上回っている。翌日物レポ市場の他の短期金利も、FRBが設定する金利水準を上回って推移している。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)の米金利戦略責任者、マーク・カバナ氏は「連邦準備制度には時間的な余裕がなく、対応を急いでいるように見受けられる。12月1日は当局者が唯一、妥協できる日程だったのだろう。市場から早晩、対応を迫られると考えられる」と述べた。

  パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる金融当局は10月29日、米国債保有の縮小を12月1日で終了すると発表した。これは「量的引き締め(QT)」として3年間続けてきた取り組みを終えるもので、ここ数週間の資金逼迫を受けた対応だ。

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  夏以降の相次ぐ国債発行で短期金融市場から資金が流出する一方、連邦準備制度が保有資産圧縮を続けていたため、市場の流動性が低下している。

  BofAは当初、連邦準備制度が10月末でQTを終了し、直ちにバランスシート拡大に向け資産購入に転じると見込んでいた。そうした措置が講じられなかったことは、連邦準備制度内に「さまざまな見解」があることを示しているとカバナ氏は指摘した。

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  同行ストラテジストは、連邦準備制度が準備預金を過度に減らし、市場のゆがみを防ぐ上で最低限必要な「十分(ample)な」水準を下回っていると指摘する。最新データによると、準備預金残高は2兆8000億ドル(約430兆円)と、20年9月以来の低水準に落ち込んでいる。

  10月31日にはSOFRが準備預金の付利(IORB)を32bp上回り、20年以来最大のスプレッドとなったが、11月3日には4.13%に低下した。ただ依然としてIORB(現在3.9%)や実効FF金利を上回っている。連邦公開市場委員会(FOMC)は10月29日、FF金利の誘導目標を0.25ポイント引き下げ、3.75-4%にすると発表している。

   レポ取引に連動する別の指標である「トライパーティー一般担保レート(TGCR)」も4%を上回っており、10月以降は金融当局が設定する金利を超えている。 

  SMBC日興セキュリティーズ・アメリカの金利ストラテジスト、ジョセフ・アベイト氏は4日のリポートで、TGCR市場の実際の圧力は公表レートが示唆する水準より高い可能性があるとし、米財務省短期証券(Tビル)の購入など連邦準備制度は「より積極的な」対応が必要になるとの見方を示した。

原題:Money-Market Stress Persists Ahead of Fed’s Portfolio Pivot (1)(抜粋)

— 取材協力 Enda Curran

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