米経済活動は鈍化、関税措置で価格上昇圧力=地区連銀報告
[4日 ロイター] - 米連邦準備理事会(FRB)が4日に公表した地区連銀経済報告(ベージュブック)では、経済活動が鈍化し、関税引き上げによるコストや価格に対する上昇圧力が強まっているとの認識が示された。
「全般的に見通しは引き続きやや悲観的で不透明であり、前回報告から変わらない。今後はコストや価格の上昇ペースが加速するとの見方も多い」と指摘した。
FRBは2024年12月以来、政策金利を4.25─4.50%に据え置いている。米政権の貿易政策などが物価や労働市場に与える影響を見極めるため、今後数カ月は現在の金利水準が維持されるとの観測が強い。
月次統計ではこれまでのところ、影響は明らかではなく、FRB当局者はよりタイムリーなデータを重視していると述べている。そうしたデータからは、米政権の関税措置が一様ではないにしても広範に影響が出ていることが示されている。
今年1月の時点では12地区全てで経済が拡大したが、今回は3地区だけにとどまり、半数が縮小を報告。ほとんどの地区が雇用は「横ばい」と報告した。
A bar chart showing the number of Fed districts reporting economic growth fell, and the number reporting contraction grew, since January.報告書は、調査対象となった事業体は概して、これまで緩やかであった物価上昇が加速すると予想しており、予想されるコスト上昇を「強い、著しい、または相当なもの」とする企業も少なくなかった。
経済活動が緩やかながら鈍化した地域の一つであるニューヨークの連銀は「多くの事業体が、価格が上昇した商品はもう仕入れられないと報告している」とし「仕入れ国によって急速に変化するコストに基づいて花の品種を調整している」とする花屋の報告を例として盛り込んだ。
報告書によると、関税は不確実性とともに引き続き懸念材料で、特に物価に影響を与えるだけでなく成長への期待にも影響を与えている。
Bar chart showing rising number of references to uncertainty and tariffs in the Federal Reserve Beige Book.経済活動の鈍化が報告されたサンフランシスコの連銀は「事業体は価格見積書や契約書に、別枠として関税や不測の事態に関する項目を盛り込むこともあった」と報告した。「ある事業体によると、関税が撤廃された後も、それを見越した値上げが撤回されなかった」としている。
クリーブランド地区連銀は個人消費が横ばいになっていると報告、貿易政策の不確実性から需要を予測するのは難しいと指摘した。「自動車ディーラーの多くは、関税引き上げを控えて購入が増加していると報告し、あるディーラーは6月上旬から関税関連の値上げが顧客の需要を直撃すると予想した」としたほか「小売業者は、消費者の裁量支出は全般的に後退していると報告したが、より大きな裁量支出からより控えめな支出に切り替える動きから利益を得た小売業者もある」としている。
4月の米個人消費支出(PCE)価格指数は前年同月比2.1%上昇と、伸びが鈍化。FRBが目標とする2%をわずかに上回っている。
エコノミストらは6日発表の5月の非農業部門雇用者数は13万人増と予想。4月の17万7000人増からは伸びが鈍化するものの、労働市場が健全とみなされる約10万人増を上回る水準となる。市場関係者は物価と労働市場のいずれも悪化すると予想しており、ベージュブックでも一定程度の悪化を示唆している。米供給管理協会(ISM)が4日発表した5月の非製造業総合指数は縮小と拡大の分岐点となる50を下回り、1年ぶりの低水準となり、原材料価格が上昇したことを示すなど、他の調査データでも悪化が示されている。
景気減速とインフレ加速という二つの課題に直面すれば、FRBは難しい対応を迫られそうだ。
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